第52話 頼みたいこと
「・・・どうぞ」
玄関のドアを4回叩くと、インターホンから小さな声が聞こえてくる。ミツルはその指示に従い、ドアを開ける。靴を綺麗に並べ、リビングへと向かう。リビングの扉を開けるとそこには、椅子に足を組んで待ち構えて座っている松山 孝則がいた。
「お久しぶりです。星野さん。」
ミツルの存在を確認すると、松山は軽く微笑んだ。
「いやぁ、元気になってよかったです。」
ミツルも軽く微笑むと、松山の淹れたコーヒーを口にして、話を切り出す。
「・・・それで、今日はどのような用事で?」
ミツルは自分が呼び出された理由を問う。
「簡単なことです。あなたが成りすましをしている間に学校で起こった出来事などを教えていただきたいと思いましてね。」
そう言われたミツルは、松山にこれまでの大まかな流れを説明した。
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「星野ミツル・・・?いや、違いますね。」
御子柴に追いつかれた不良たちは、御子柴の問いに答える。
「星野ミツルじゃなくて、松山ですね。下の名前はちょっと分からないっス。」
「松山ァ・・・?」
御子柴は目を細めた。そして改めて聞き返す。
「・・・じゃあ君たちは星野ミツルではなく松山という人間を集団で暴行したというのか?」
「・・・はい。」
御子柴は先ほどの不良たちが、星野ミツルを暴行した奴らであることに気がついた。しかし、星野ミツルだと思っていた人間は松山という人間だった。不良たちが間違っているのか、それともこれまでの自分たちの考えが間違っているのかだんだん分からなくなってきた。
「はぁ~~っ・・・」
御子柴は深いため息をつき、しゃがみ込む。しゃがみながら、これまでの経緯を細かく振り返る。
「あの~、そろそろ帰っていいっスかね?」
不良たちが御子柴に問いかける。
「うるせぇ黙ってろ。」
御子柴の返事に、不良たちは再び怯える。
「・・・あ。」
小さく呟いた御子柴は立ち上がり、不良たちを冷めた目で見つめる。
「あのさ、お前らに頼みたいことあるんだけど。」
「な、なんですか?」
御子柴は少し間を開けて、彼らに頼みを告げた。
「お前ら、その松山っていう奴をさらってこい。」




