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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter4 ダークナイト・バンケット
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第51話 マジギレ邂逅

 時刻は午後2時。5限目の授業が始まって30分が経過するころ、ミツルは恐る恐る職員室に戻る。

 この学校の校門を通過してきた警察官を目撃してから1時間以上経つというのに、自分を追う者がやって来ないことに疑問を感じたからだ。校内を捜索しているにせよ、それならもっと騒然とした空気が校内に流れているはずだ。なにしろ殺人犯が学校にいるのだから。みんな目の色を変えて廊下を走りバタバタしているのが普通だ。なのに、校内は面白いくらいしんとしている。職員室の扉を開けたミツルは、最寄りの教員に尋ねた。



「あの、すみません。先ほど警察の方が来ていませんでしたか?」



 ミツルの問いに気づいたその教員は、「あぁ、あれね。」と何か思い出した表情を浮かべ、答えた。



「あぁ、なんか来たらしいね、2人。でも、なんか自らスパイだ、とか言ってたらしくて、怪しく思った警備員さんが追い返したんだって。まぁ、多分イタズラだろうね。あと、()()()()()()()()()()を連呼してたらしいね。」



“誰か知らない人の名前”というワードにミツルは目を光らせる。



「な、なんて名前なんですか?」


「え~っと、たしか・・・。なんだっけ、なんか格好いい名前だった気がするねぇ。」



 教員は即答せず、少し記憶の中に入り浸る。そして、思い出したと言わんばかりのリアクションを取り、その名前を告げた。



「思い出した!“ホシノミツル”だ!そいつが学校にいるだろう、って何回も訴えかけてきたらしいよ。」



 やっぱり、とミツルは心の中で漏らした。と、同時に深い安堵に包まれた。星野ミツルが殺人犯であると目星をつけてきたのだろうが、まだ俺が“松山 孝則(まつやま たかのり)”になりすましていることが奴らにバレてない、のだと。奴らは“()()()()()()()()()()()()()()()()()()”という憶測の下で動いていたのだと。



「ったく、物騒な世の中だねぇ。警察になりすまされたんじゃあ、本当の警察も信じられなくなるよねぇ。」



 と言いつつ、その教員はハハハと笑う。それにつられてミツルも軽く笑う。男性教員との短い会話を終えたミツルは、食べようとしていたコンビニ弁当をカバンにしまい、早退の支度に取りかかった。



―――――



「へっくしん!」



 門前払いを受け、署に戻る道中、ケイは人目もはばからず大きなくしゃみをした。



「ふぃ~、誰か噂してるんスかねぇ。まさか、星野ミツルだったりして。」



 小さく呟いたつもりだったケイの発言は、地獄耳の御子柴の耳にしっかりと届いていた。御子柴は立ち止まり、後ろにいるケイを睨みつける。憎悪に満ちたその目つきに、ケイはゾッとした。まるで自分が殺されるかのような恐怖を、一瞬だけだが感じた。



「あ、いやすみません、なんでもないッス!ほんとに・・・すみません!」



 ケイの必死の謝罪を受け、御子柴は前を向き歩き出す。



「ふぅ、あっぶねぇ。あの人いまマジで激怒(げきおこ)だよ。触らぬ(ゴッド)はノー祟りだからなぁ、しばらく無言モードでいくか。・・・ん?」



 警戒態勢に入ったばかりのケイの目の前に、不穏な存在がいることを確認した。その正体は不良生徒たち。昼間から学校も行かずにその辺をフラフラしてる悪ガキども。そいつらが、なにやらもめていた。



「おいテメェなにこっち見てんだよ!」

「あぁ!?テメェこそ見とるやろがい!!」

「そっちが見てるから見てるんやろがい!!」

「あぁ?やっぱり見てんじゃねぇかゴルァ!!」



 不良特有のガン飛ばし問題にさしかかっていた。なんともアホらしく、なんとも馬鹿げた時間の潰し方をしているなぁ、といつものケイならこう思うだろう。しかし、今は状況がヤバすぎる。般若状態(マジギレモード)の御子柴が、彼らに接触すれば、どうなるか安易に想像ができた。



「・・・どけ。」



 不良共が狭い路地で口論をしているせいで、行き止まりを食らってしまい、立ち止まった御子柴が彼らに言う。一般人なら怖くて退き下がるところを、御子柴は退かない。その御子柴の台詞に、不良たちが一斉に御子柴のほうを向く。



「おいお前なんてった?」



 不良の1人が言った。



「バカに2度言っても無駄だと思うが、念のためもう1度聞く。どけ。」



 恐れること無く、御子柴は彼らに毒を吐く。



「へっへっへ。なかなか度胸のある警察官(ポリ)じゃねーの。あんまり調子の乗ってっとぶっ殺すぞ!!」



 不良たちは一斉に御子柴に襲いかかる。その10秒後、地面に倒れ込む不良達の姿が、そこにはあった。



「は、はぇぇ・・・なんだあのポリ公・・・」


「つ、強ぇぇ・・・」



 軽く負傷し、戦意を喪失している彼らの顔は、自分たちの死を悟ったような顔だった。もしかしたら殺されていたかもしれないという恐怖を、彼らも感じたのだろうとケイは思った。



「あ~お前ら。このこと誰にも言うなよ。もちろん警察にもだ。もし、通報したことが俺の耳に入ったら、お前ら殺すから。」



 御子柴の言葉には妙に重みと現実味があって、一層彼らに恐怖の種を植え付けた。



「ホレ、行くぞケイ。」



 呼ばれたケイは、軽く返事をして再び歩き始める御子柴についていく。その刹那、ケイに電流が走る。1つの予想がケイの頭を駆け巡る。そして、その予想を御子柴に告げる。



「あの、ミコシー・・・じゃなくってみ、御子柴さん。あの不良、あの制服にちょっと見覚えがあったんですけど。もしかしたらさっきの写真に写ってる奴らかもしれないと思うんですが・・・」



 そのケイの言葉に御子柴は目の色を変える。「あぁ、そうか」と呟いた御子柴は、振り向いて賞賛するような目でケイを見た。般若状態(マジギレモード)だった時の目つきとは比べものにならないほど、優しい目だった。



「よくやった。よくやったぞケイ!」



 そう言うと、御子柴は先ほどの不良たちのもとへ走って行く。



「ひぇっ!あのポリ公またこっち来るぞ!!」


「や、やべぇ・・・殺される!!」



 不良たちは急いで逃げる。



「ち、違う!ちょっと話を聞きたいだけだ!!待ってくれ!!」



 御子柴が彼らに追いついたのは、その30秒後のことであった。


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