第48話 動き出す歯車
5月下旬。水上警察署のとある会議室にて、男2人が話し合いを繰り広げている。
「・・・で、研修の方はどんな感じかね。」
「かなり良い感じです。犯人の目星もついています。」
「ほう、こんなに短期間でかね?流石は私の見込んだ男だ!」
「私自身もここまでスムーズにいくとは思いませんでした。おっと、すみません。そろそろ用事があるので失礼させていただきます。」
「そうか、また捜査に向かうのかね?」
「捜査というか、なんというか、目星のついてる人間に会ってきます。」
「おぉそうかそうか!期待しているよ、御子柴くん!」
「えぇ。」
期待にあふれた表情の湯浅部長に対して、感情のこもっていない返事をした御子柴 正義は、会議室を後にした。
一方その頃、職員室でスマートフォンを見つめながら、小さく笑みを浮かべる男がいた。
「ついに・・・ついに来たか・・・!」
そう、その男の正体は、村雨学院高校のエリート教師「松山 孝則」になりすましている星野ミツルだった。
Chapter4
― ダークナイト・バンケット ―
「ケイ、行くぞ。」
御子柴は、デスクで寝ている「ケイ」を呼ぶ。
「ふぁっ、もう行くんすか・・・?」
ケイは苦い顔で御子柴に返事をした。
「まだ11時じゃないすか。もうちょっと寝かせてくださいよ~」
そう言ってケイは、再び眠りの体勢になる。
「バカかお前は。11時になってもまだ寝てる奴は、ニートか夜間に働く昼夜逆転型生活をしてらっしゃる方たちくらいだ。じゃあ、お前は何だ?警察官だろうが。」
「肩書きは警察官かもしれませんが、“隠密任務特化型”の俺は警察というよりスパイに近い人間でしょう。んで、まぁそれはある意味ニートみたいなモンなので、ミコシーの言う『11時になってもまだ寝てる奴』理論に基づいて、俺はまだ寝ていていんですよ。」
ケイは頑なに自分のデスクを離れない。まるで机の上にある見られたくない物を庇っているかのように。そんなケイに対し、御子柴は声を荒げる。
「前半はまぁ同意できんこともないが、後半は無理矢理にもほどがあるだろうが。なんだスパイがニートみたいなモンって。スパイに失礼だろうが。あと公の場で『ミコシー』って呼ぶなっつってんだろ!何度言ったら分かる!」
「え~、だって御子柴って呼ぶの固いんですもん。」
「いや、じゃあ『御子柴さん』とかでいいじゃねぇか。俺の方が先輩なんだし。」
「いや、俺の方が先輩なんすけど・・・」
「年齢的にだよ!!!!」
「たしかに5歳年上ですけども!」
「はぁ・・・。」
湯浅が、御子柴とケイの謎の口論を遠くから眺めながらため息をつく。
「湯浅部長、どうしかしたんですか?ため息なんてついて。」
通りかかった婦警の坂本 彩佳が問いかける。
「あ~・・・あの2人ですか。御子柴 正義と花園 圭。またもめてるんですね。ちょっと止めてきますか?」
彩佳は湯浅の視線の先を見て、察したように言った。
「いや、別にそれはいいんだけどね・・・」
「え、じゃあどうして・・・」
頭にハテナを浮かべる彩佳に、言葉を濁していた湯浅が渋い顔で言った。
「どうにもこうにも、私もタメ口で喋れる友達がほしい!!」
「・・・。」
それを聞いて急に真顔になった彩佳は、何も言わずにその場を立ち去った。




