表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter3 人殺しなんて、死ねばいい。
44/109

第43話 いざユートピア

「先生、大丈夫なんですか・・・?病院に行かなくて。」

「あぁ、大した傷じゃないさ。ほら、もうこんなに歩ける。」



 そう言ってミツルは倉庫の出口まで歩く。しかし、


「うわぁ」


 フラッとよろけて、地面に倒れてしまった。



「ほら言わんこっちゃない。」



 麗華が冷静につっこむ。重傷ではないにしろ、上手く歩けないのが現状だ。なんとも情けない。



「・・・ほら、つかまってください。」



 麗華が肩を貸してくれる体勢になった。男性教師が女子生徒に肩を貸してもらうなど、なんとも情けないが、今はそれに甘えることにした。



「さぁ病院行きますよ、病院。」

「いや、いいよ。大丈夫だよ。」

「まともに歩けない人が大丈夫なわけないじゃないですか。今度こそ本当に死んでしまいますよ。」

「いや、本当に大丈夫だから!唾つければ治るから!」

「・・・なんでそこまで病院を拒むんですか?」

「それは・・・」



 自分(松山孝則)の健康保険証がないから、だなんて口が裂けても言えない。



「先生・・・もしかして・・・?」



 麗華が何かに気づいたかのような顔をした。まさか、感づかれたか?



「病院が怖いんですか・・・?」



 バカだった。この子はなんともかわいいバカだった。



「子供じゃないんだから・・・。そういうわけじゃないんだけど、別に病院に行くまでもないかなっていうか・・・」

「・・・ていうか。」



 麗華がまた何かに気づいた。



「この近辺に病院ないんでした。」

「え、最寄りの病院でもどれくらい離れてるの?」

「5km」



 なんだこの状態異常耐性がなさ過ぎる地域は。最寄りで5kmとか地方か。まちづくり下手くそか。


 それにしても、女子高生が夜に男性教員1人に肩を貸しながら5km歩けるだろうか。いやできないねぇ!やっぱり病院は諦めるしかないな。



「あ、でもタクシーを使えばなんとか!」



 諦めない。麗華は決して諦めない。意地でも病院に連れて行く気だろう。まぁ、それが普通なのだけれど。



「俺、いま300円くらいしか持ってないよ・・・」

「じゃあ私が出しますから。えーと確か7000円くらい入ってたはず・・・」



 まずいなぁ、金まで払ってもらってはなんだか面子もクソもないじゃないか。麗華はおもむろに自分の財布の中身を確認する。しかし、麗華の表情は引きつった。



「34円・・・」


 麗華の口から出てきた衝撃の残額。ミツルの所持金より数倍も少ない。しかも2桁!ホワイトサンダー1個しか買えないよこの金額じゃあ。女子高生が持ってる金額じゃないよこれ。逆にどうしたらそれだけ残るんだよ。



「・・・334円で病院まで行けるでしょうか?」

「行けないよ。」



 麗華の無垢な質問に、残酷な回答をしてしまう。仕方ない行けるわけがないのだから仕方ない。



「・・・仕方ないですね。」



 そうそう、仕方ない仕方ない。そうと決まれば保健室に連れて行ってもらうより他に手は無い。さぁ行くぞ、いざモデルミの待つ保健室へ。



「私の家、来ます・・・?」



 そうだそうだ、それでいいんだ。さぁ行くぞ、いざモデルミの待つ保健し・・・ん?



「・・・今なんて?」



 思わず聞き返す。なんだか「私の家、来ます・・・?」って聞こえた気がしたからだ。おかしいな。耳までやられたか。俺の耳の部分についてるのは歪な形のドアノブだったりする?



「・・・いや、だから。その・・・あの・・・」



 麗華の口が重くなる。もしかして本当に「私の家、来ます・・・?」って言ったのか・・・?



「・・・私の家に来ますか!?お、応急処置しないとだし・・・.今日は家に誰もいないと思うし・・・」



 言ってた。この麗華言ってた。私の家来ますか言うてたよ私の家来ますかって。俺の耳はやられてない!いたって普通、平常運転。ドアノブじゃなかった!言質とったからね。

 しかし、この誘いにすぐにつられる訳にはいかない。あくまで教師らしい対応をとらなければ。



「・・・なんでそうなるの。」

「えっ!?その、なんていうか、あの、えーと・・・」


 麗華がかつてないほど戸惑っている。じわじわと顔が赤くなっていく麗華。色々な感情が渦巻く中、麗華は叫んだ。



「ええい!私の家に来るんですか来ないんですか!!??はやく答えてください!!!!」



 何故か急に怒鳴られてしまった。呆気にとられたミツルは小さくこう答えた。



「・・・あ、はい。行きます。」



 本当はとても行きたいはずなのに、立場的に、状況的に素直に喜べないミツルであった。



 ・・・まぁ何はともあれ。さぁ行くぞ、いざ麗華の家(ユートピア)へ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ