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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter3 人殺しなんて、死ねばいい。
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第37話 歪み

「はい、というわけで今日の授業は昨日に引き続き『ごんぎつね』。しかし、少し趣向を変えたことをしようと思う。皆さんには今から4~5人のグループに分かれてもらい、ある議論をしてもらう。この物語における『兵十』と『ごん』の心情の移り変わりについてだ。どの場面でどのように心情が変化しているかを考えるんだ。

 

 しかしただ適当に考えればいいわけじゃあない。文章中からしっかりとした根拠を見つけて考えるんだ。30分経ったら1グループずつ発表してもらう。私を1番納得させたグループには、「餃子の銀将の割引券」を贈呈する!みんなしっかり考えてくれ!わかったか!?」



「はい!!!」



 小学生レベルの課題を出す教師。小学生のようにとっても元気な返事をする生徒達。もうここ小学校だろ、と錯覚してしまうようなこの空間は、ミツルが担任をする村雨学院高校2年4組の教室!なんと高校だった!!



 あえて生徒達だけで自由に議論する時間を設けることで、自分がちゃっかり麗華に対する弁解をしっかり考える時間を設けたのだ。こういうずる賢いことには頭が回る、それが松山もといミツル。


 ミツルは椅子に座りながら熟考する。かつてないほどの集中力で。ふと、生徒達のほうに目をむけると、ものすごい熱気にあふれている。「よっしゃ、銀将の割引券は俺たちのものだ!」とか、「放課後に銀将行くべ」だの。たかだか1フランチャイズチェーン店の割引券を懸けた議論にここまで熱くなれるものなのかと、なんとも微笑ましい気分になるミツルだった。




 そして、あっという間に放課後がやってきた。ミツルは胸を張って生徒会室へと向かう。彼は放課後までの時間を使って「究極の弁解」を生み出したのだ。一切の不信感なく、一切の違和感なく、一切の矛盾点のない完璧なシナリオを手に入れた。それは自分でもびっくりしてしまうくらい完璧な、それはそれは完璧なシナリオだった。この刃を持ってすれば、いくら麗華の鋭い刃と言えど太刀打ちできまい。彼は自信に満ちあふれた表情で、決戦の場へと向かう。





 一方、麗華はすでに生徒会室にいた。昼休みと同じように、再び待っている状態だ。こちらも熱い情熱を持って、松山先生が来るのを待っている。全ての生徒の上に立つ者として真実を解き明かしたいという、誠実な志を胸に抱きながら。


 松山先生が「喧嘩の仲裁をしただけの白」なのか「乱暴をした黒」なのか、今のところ判断し難い。本当は白であってほしいと心から願っているのだが、黒である可能性の高い根拠がたくさん挙がってしまっているせいで、彼を疑わざるを得ない。難しい境界に挟まれ、うつむきながら松山先生の到着を待つ。

 

 すると、生徒会室の扉がゆっくりと開いた。麗華は松山先生が来たとのだと気づき、顔を上げ、凜とした表情でミツルを迎える。



「お待ちしておりました、松山先せ・・・」



 言葉を途中で切った。気がついたからだ。扉を開き、目の前にやって来た男が松山先生でないことに。



「あ、あなたは・・・?」

「こんにちわ~。生・徒・会・長・さん。」



 その男が不敵な笑みを浮かべながら麗華に挨拶をすると、それに続いて数人の男が入ってきた。






「ふぅ…」



 生徒会長室の前に立つミツルは、静かに深呼吸をした。これから始まる戦いに向けて覚悟を決めているのだ。



「・・・よし、行くぞ。」



 覚悟は決まった。ミツルはドアノブを握る。そして3秒くらいの間を経て、思い切り扉を開いた。



「お待たせしました、清波生徒会長!」



 だが、堂々と言い放ったミツルの言葉への反応はなかった。理由は簡単。生徒会室に誰もいないからだ。



「・・・あれ、いないのか。」



 昼休みはとても長い間待っていたようだから、今回も早くに来て待っているのかと思ったのだが、見当違いだった。なんて考えていると、生徒会室の床に落ちている紙が、ふとミツルの視界に入った。床に落ちている紙に違和感をおぼえず、触れることなくスルーする人間が果たしているだろうか。いや、いない。ミツルもその圧倒的大多数のグループに属する人間であるが故、その紙を拾った。


 その紙の裏面には文字が書いてあった。ミツルは、そこに書かれた文字を見るやいなや、青ざめた。




『松山へ。生徒会長様の無事を願うならば、1人で第2倉庫へ来い。』




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