第33話 仏の顔も30分まで
松山先生を讃える全校集会が終わり、昼休みを迎える。生徒達にとって昼休みとは、情報処理に次ぐ安息の時間である。ランチを食べたり、談笑したり、昼寝をしたり、各々が安らかな時間を過ごしている。
そんな安息の時間、1人で生徒会室に佇む女子生徒がいた。彼女はランチもしていなければ、スマートフォンを眺めているわけでもない。彼女は何もすることなく、ただ待っていた。先ほど校内放送で呼び出しをした、松山孝則がやって来るのを・・・。
Chapter3
― 人殺しなんて、死ねばいい。―
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校内放送をしてから10分。松山先生はまだ来ない。正直5分もしないうちに来るものだと思っていたけれども、まさか10分経っても来ないとは・・・。まぁ仕方ないわ。昼休みにいきなり呼び出されたんですし。まぁあと1分くらいすれば来るでしょ・・・。
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まずい・・・校内放送で生徒会室に呼ばれたはずなんだが・・・。いま俺はそれどころじゃあない・・・。なぜなら・・・。教職員たちに胴上げをされているからだ!!
クレイジーデッドが壊滅したのが俺のおかげみたいな風潮があるせいで、これまで何も出来ず彼らに恐れながら狭い肩身で生きてきた教職員たちにとって、俺はこの上ない救世主であるようだ。だけどなぁ、俺にはその辺の記憶がないから、無駄に褒められてもあまり嬉しくないんだよなぁ。その上中年男性ばかり。
あぁ、かれこれ10分も胴上げされている。・・・いい加減下ろしてくれぇぇぇぇぇ!!
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校内放送をしてから20分。松山先生はまだ来ない。おかしい・・・。これは絶対におかしい。呼び出しから20分経っても来ないって、もはや校内放送をしたのかすら不安になるわ。それにしてもお腹がすいた。
てっきりすぐに来て話をして、それから食べようとおもっていたのだけれど・・・。しかし今から食べて、その最中に来てしまったらなんだか恥ずかしいじゃない。
耐えるのよ・・・。いい加減来ることを信じて耐えるのよ・・・私!!!
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いやぁ、やっと中年教職員どもの胴上げから解放されたと思ったのに・・・。なぜ今度は生徒達から胴上げをされているんだ!!!しかも男子生徒のみ!
もういい、もういいから。君たちの賞賛の意は心から伝わったから。お前ら、20分くらい胴上げされているこっちの身にもなれ。吐くぞ。いい加減吐くぞ。20分の胴上げによって蓄積された酔いによって全てのパワーを放出させることになるぞ。ええんか。お前ら嫌やろそんなん。
「ああっ、松山先生が胴上げされてる!私たちもやりましょう!」
おや、女子たちも胴上げに参加してきたぞ。・・・まぁ、あと少しくらいならいいんじゃないかな。なんか呼び出されてた気がするけど。
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校内放送をしてから30分。松山はまだ来ない。なにやってんのアイツ。何で呼ばれたのに来ないの?バカなの?バカなのよね?
死んだ?もしかして死んだんか?あの僅かな時間を巧みに利用して死んだんか?
こちとらせっかくの昼休みに、1人で生徒会室で待ってるのよ!何も食べずに!何もせずに!貴重な昼休みの30分を何もせずに無駄にしているのよ!!
てか、30分あったら・・・30分あったら・・・。
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う~ん。長きにわたる胴上げが終わり、ようやく自由の身になった・・・のだが。今更呼び出されていた生徒会室に行くべきなのだろうか。もしかしたらしびれを切らして誰もいないかもしれない。
だが、完全にシカトするわけにもいくまい。行こう。そして謝ろう。この胴上げによってヨレヨレになった服を見れば、遅れるのも仕方ないと思っていただけるだろう。
1分経たないうちに生徒会室に着いた。そしてドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開いた。
「30分あったら深夜アニメ1話見れたじゃねぇかボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「・・・え?」
「・・・あ。」
我慢の限界を迎え生徒会室でキレた女子生徒。生徒会室の扉を開けたと同時にちょうどそれを目撃したミツル。2人の間に絶妙な沈黙が生まれる。女子生徒は極度の恥ずかしさから、ミツルは突然の衝撃からなにも口にすることができなかった。
「・・・オホン。」
沈黙に耐えきれず、女子生徒が咳払いをする。そして続ける。
「お待ちしておりました。生徒会長の『清波 麗華』です。」




