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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter2 嗚呼、素晴らしき(偽りの)高校教師生活
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第29話 日没は近く

 時刻は午後6時半。夕日が微かに差している廊下を、ミツルは駆け抜ける。教師としてやってはいけないことだが、そんなこと言ってる場合ではない。救急車が緊急時に信号待ちをしないのと同じことだ。部分的にルールを破ることも許されるのだ、この日本では。



 4階の音楽室に近づくにつれ、人気(ひとけ)がなくなっている。時間が時間だから仕方がないのかもしれない。または、クレイジーデッドの拠点的な場所が音楽室であるから、一般人は近づかないようにしているのだろうか。そうこう思っているうちに、音楽室に着いた。



 ミツルはいま恐れている。不良が怖いのではない。不良と関わることにより、面倒な問題に巻き込まれたくないからだ。暴行事件などになってみろ、絶対に目立ってしまう。それだけは絶対に避けなければ。覚悟を決め、音楽室の扉を開く。



 中に入ると、そこには柄の悪そうな男子生徒5人ともう1人、清波がいた。清波はイスに縄で縛り付けられ、口にガムテープを貼られてしゃべれなくしている。ベタなことしてんなぁ。「んー!んー!」って聞こえる。待ってろ清波(カネ)。いま助けてやるからな。



「・・・来たか。」



 中央にいるリーダーっぽい生徒が言葉を発した。先ほど聞いた声だ。電話の相手はコイツか。



「お前ら。今すぐ清波を解放し、この場から去れ。そうすればお前らの愚行は見なかったことにしてやる。」



 言えた。噛まずに言えた。ここに向かう最中にあらかじめ考えておいた文章だ。発声練習の時どうしても「愚行」が滑舌良く言えなかったが、本番ではしっかり言えた。やればできるじゃねぇか。



「はーーーっっはっはっは!!!!」



 不良5人が結構なヴォリュームで笑い出す。あれ、どこかおかしかったか?愚行か?愚行がやっぱりダメだっったか?



「先生かっけーーーーー!」

「マジ尊敬するわぁーーーー!」

「ヒューヒュー!!」



 不良どもが口々に言う。・・・これは、賞賛の嵐ではないか。やっぱりおかしくなかったよな、かっこいいよな。教師の鑑レベルの台詞だよな。もしかして俺ってマジにエリートなんじゃね?



「やるなぁ先生。かっこいいよ、俺が女だったら惚れてるよ。」



 リーダーが冷静に気持ち悪いことを言う。やめろよ、そっちの気はねぇ。



「だがアンタ、誰に口聞いてるかわかってんのか?」



 うわー意識高ぇっ。意識高いよコイツ。だっせぇ、マジだっせぇ。「俺は教師より格上」だとか勘違いしちゃってる痛々しい奴だコイツぅ。こいつらもう確定だよ。クレイジーデッドだよこいつら。



「クレイジーデッドだろ?」

「へ~まだ俺たちを呼び捨てにする教師がいたんだぁ」



 あ~こそばゆい。痛すぎて逆にこっちか恥ずかしくなるレベルだわ。意識高い!意識高い系の不良グループだよぉ!!!!気持ち悪い。



「なんだ?お前らはいちいち「さん」づけでもしてほしいのか?」



 思考とは裏腹に冷静な対応を続ける。



「おいてめー、いい加減『お前』ってのをやめろや・・・。」



 リーダーさんの目が怖い。ここは逆らわない方が身のためか。



「では、何と呼べば良いのですか?」

「リーダー様と呼べ。」



 リーダー様www。俺だったらそっちのほうが絶対嫌だよwww。恥ずかしくて憤死するよオイ。ダメだ冷静にならないと。



「ええリーダー様よ。あなた方クレイジーデッドはなにゆえこのようなことをしておられるのですか。」



 無理矢理丁寧口調で喋る。腹立つなぁ。こんな青二才どもに丁寧口調とか。



「んなもん簡単だよ。気に入らねぇからだよ。」



 さすがクレイジーモンキー。行動の原動力が単細胞レベルだ。



「気に入らない?清波がか?」

「そうだよ。文句あんのか?」

()()()()、なんで気に入らないんだ?」



 やっべ、ついつい文句ないって言っちゃった。まぁそれが本心なんだけど。



「・・・お前は『SeReKa(セレカ)』って知ってるか?」

「あぁ知ってる。清波が所属してる同好会だな。」

「そうだ。そしてこいつらがバンドをやっているのも知っているな。」

「!?」



 お前ら結局バンドもやっとったんかい!!!



「いや、知らないな。」

「なんだ、知らんのか。まぁいい、それで俺たちもバンドやってんだよ。」



 いやそっちのほうがどうでもいいわ。勝手にやってろよ。華麗にロックな音色でも奏でとけや。



「それがどうしたっていうんだ。」

「あ?だからこいつらがバンドやってんのがムカつくんだよ。」

「は?」



 ・・・何を言い出すんだこいつは。



「SeReKaがバンドをやっていてはいけないのか?」

「たりめーだろ。こいつら粋がってて邪魔なんだよ。この学校でバンドやるのは俺たちだけでいいんだよ。」

「なぜだ。」

「そんなのにいちいち理由なんているのか?あ?」



 ダメだこいつら。論理がめちゃくちゃだ。ひどすぎる。自分が悪であると気づいていない根っからの悪だ。救いようがない。こいつらに対して、交渉をするだけ無駄なのか?いや、いけない。あくまでも穏便に・・・穏便にだ!!!



「・・・そもそもなぜ俺を呼んだ。」



 問題はそこだ。標的はSeReKaのはずだ。俺は関係ない。わざわざ呼ぶ必要性がない。



「おーおー、それだそれ。じゃあ本題に入るか。んじゃぁまぁ単刀直入に言うけどよぉ・・・」



 また単刀直入か。普通1日に2回も単刀直入される?双刀直入じゃねーかよ。ここでまた「お前、松山先生じゃねーだろ」とか言われたら大爆笑するよ。



「お前、清波と一緒に死ね。」


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