第27話 イエスと言えなくて
「クレイジーデッドをつぶしていただきたい。」
「え、神田くんはいいの?」
そうだそうだ。神田くんを家から出すのが先じゃあないのか?いや、別に不良グループと関わりたくないとかいうわけではなく・・・
「・・・松山先生、よく考えてみて下さいよ。たとえ神田天海を家から出しても、学校にはまだ『産業廃棄物』がいる。それでは、またいじめられて再び引きこもってしまう。結局負のループに突入してしまう。エンドレスエイトですか?モルディカイですか?極めてナンセンスだと思いませんか?」
産業廃棄物に失礼だと思うし、なんか上から目線で説教くさい口調がむかつく。
「いいですか先生。いま先生は神田天海を家から出すことよりも、いかにして『産業廃棄物』を『最終処分場送りにする』かを考えて下さい。」
クレイジーなのはお前だよ。てか、いい加減そのルビやめようか。ちょっと無理矢理過ぎるし癇に障るから。
「そんなこと言われても・・・」
そんなこと言われても、不良グループをつぶすなんて教師として筋が違うというか関わりたくないというか。
「お願いします松山先生!先生しかいないんです。私はこれまでにいろいろな先生にクレイジーデッドの壊滅を依頼してきた。しかしどいつもこいつも恐れをなしてイエスと答えてくれなかった。」
いや、壊滅させてなんて言われたら誰でもノーと答えるだろうよ。
「先生は広い心の持ち主だ。」
「いや、だから・・・」
「寛容なあなたなら、ぜひとも私の望みを・・・」
「いい加減にしろ清波君!!!」
萌えの漂う空間「メイド喫茶」にて、思わずミツルは叫んだ。強引気味な清波の頼みを断るためだ。清波の依頼にイエスと答えるなど到底ありえない話だ。疑いが晴れたあとの頼み事とはいえ、不良グループをつぶすなどという目立つ行動はしたくない。というかリスクしかない気がする。ハイリスクノーリターンという可能性がある。いじめは許せんが、ここは黙認せざるを得ないのが教師という偽善者の務めであろう。
「・・・結局あなたも、ほかの先生と同じなんですね。」
清波はテンションを下げてつぶやく。さっきまでの元気はどこに行ったのか。
「いや、すまない。少し取り乱してしまっ」
「あ~~~っあぁ~~~~~っっっっっ!!!萎えるわァ~~~~~ッッッッッ!!!!」
「え?」
清波が豹変した。先ほどまでの冷静さは失せ、突如テーブルの上に足を置き、だるそうな顔と声でイスに深く座り直した。
担任をメイド喫茶に連れてくるわ、変な依頼をしてくるわ、突如壊れるわ。もうついていけねぇよ。なんなん清波どういう頭してんの。毎日何食べたらそんな風になるの。花こう岩でも食ってんのか。清波の情緒の波は凄いことが判明したと同時に、びっくりして何を言うか忘れてしまった。
「んだよマジで。メイドに寛容だったからさぁ、なんかアニメに出てきそうな先生だと思ったのによぉ。こいつが担任だったらアニメみたいな学校生活を送れるんじゃねって期待したのによぉ。さっさとクレイジーデッドつぶしてくれると思ったのによぉ。つっまんねぇ。マジで3次元つまんねぇわ。もうこれ死のうかな。そうだ死のう。」
やばいよこの子怖いよ怖いよこの子。一人でぶつぶつ言ってるよ。この萌え豚やべぇよ。お前は一体何を期待しているのだ。アニメみたいな学校生活とか言っちゃって、現実見ろバカ。現実はお前の頭のように甘くないんだよ。それにしても、清波の闇はなかなかに深そうだ。これ以上こいつと関わるのは危ないと判断した。だからさっさと切り上げて帰らなければ・・・
「清波君、悪いんだけどそろそろ帰らないと・・・。ってあれ?」
気がつくと清波がテーブルからいなくなっている。いつの間にか消えてしまった。帰ったのかな。ならよかった・・・。
・・・。
よかったと言い切れるだろうか?なにか嫌な予感がする。まさかとは思うが、本当に死のうとしてないよね?なんかさっきの「死のう」発言はどことなく心から言っているように聞こえた。死なれては非常に困る。絶対疑われる。
・・・一応確認しておくか。
「あの~すみません。いま僕のツレが出て行きませんでしたか?」
レジの前にいるメイドさんに尋ねた。先ほど「いらっしゃいませ」と言ってしまって清波に注意されたメイドさんだから「ツレ」と言えば分かるだろう。
「先ほどのご主人様ですね!その方なら両手に縄を携えて『樹海に行って参ります!この戦いが終わったら結婚するんだグエ-ッ』と私に言って出て行かれました!」
清波ァァァァァァァァァァァァ!!!!!




