第26話 懺悔は布石の鎮魂歌(レクイエム)
「あなたをこの上なき聖人と見込んで、お願いがあります!」
「え・・・お願い?」
松山先生ではないという疑いをかけられていたにも関わらず、いきなりお願いがあると言われた。状況はよく分からないが、なんだかピンチを脱出したような感じがする。多分きっと。
「せ、清波くん。急にどうしたんだ?」
「世間一般の人は『メイドさん』に対してあまり良い印象を持っていない。どことなく痛々しい目で見ている。しかしあなたは違った。初めてのメイド喫茶にも関わらず、メイドさんに対してマイナスな目を向けず、かつ好意的な感想を述べたのはあなたが初めてだ。」
なんか急に語り出したよこの子。とち狂ってメイドさんをかわいい発言したことによって清波の謎のスイッチが入ってしまったとでもいうのか。
「そ、そうなのか・・・」
「えぇそうです。私には1つの信念がありまして。『性善説』っていうんですけど、『メイド好きの本性は基本的に善である。』なぜならば、メイドを許容できるということはそれだけの大らかな器を持った人間であるからです。『メイド好きに悪い奴はいない』というのが私の座右の銘なのです!」
どうやらこいつは頭がおかしいようだ。ルビもおかしいし。メイドに魂を売ってしまったのではないかと心配になってしまう。
先ほどまでクレバーな感じを醸しだしていたのに、急に稚拙な基地外風の論理を展開するバカに成り下がってしまっている気がする。俗に言う「萌え豚」。
「疑ってしまって申し訳ありません。最近人をあまり信じられなくなっていまして…。不審要素に敏感になりすぎていました。」
なんなんだ。こいつは情緒不安定なのか?多重人格なのか?さっきまであんなにヤベー奴くさかったのに、急に落ち着いた感じで謝罪をしている。非常に疲れる。そんなことよりも気になるのが。
「ところで、お願いってのは?」
そうだ、清波からこの上なき聖人と見込まれてお願いがあったのだ。一体何だ?メイド喫茶に来たはいいものの、財布を忘れたので、代金を払えってか?
「そうでした。実はですね、助けてもらいたい人がいるんです。」
思った以上にスケールが壮大だった。人質か。拉致された人質でも助けてこいってか?清波は話を続ける。
「松山先生はこの学校の『SeReKa』をご存じですか?」
いえ、ご存じないですね。なんですかその恥ずかしいsomethingは。
「いや、知らないな。」
「そうですか。では説明しますと、『SeReKa』とは私が所属している3人組の非公式同好会です。」
へぇ、そうなのですか。気が狂いそうになるほどどうでもいいです。まぁ1つ気になるとしたら・・・
「なんの同好会なの。」
「様々な研究をするための同好会です。メイド・アニメ・フィギュア・神話・呪術・黒魔術・錬金術・・・」
聞くんじゃなかった。結構触れてはいけないような気がした。名前が格好いいからバンドとかかと思ったのに。最後にいくにつれてだんだん禁忌感が増してきているのはなぜだ。
「それで、3人のうちの1人『神田 天海』が上級生からいじめを受けていまして、現在家に引きこもっているのです。」
なるほど。話が見えてきた。いじめで引きこもった同好会仲間のカンダ テンカイ君を助けてほしいということか。
「そうか・・・いじめか。」
人を殺した人間が言うのもなんだが、いじめとは悪だ。理由は単純明快。悪質かつ陰湿であるからだ。いじめをする人間はクズだ。そうやって弱い者を多数でいじめることしかできないゴミクズだ。・・・と人殺しが申しております。
「いじめているのは3年のグループ『クレイジーデッド』。校内で最も恐ろしい不良グループであると言われています。」
んんっぁああ~っダサい!いやぁダサい、実にダサい。なんでそういうイキり不良軍団は、そういうネーミングしかできないんだろう。もっとこう、あるだろう?クレイジーデッド?知ってる格好いい単語2つ並べました感が否めないんだが。まぁとにもかくにも、
「分かった。要するに神田 天海くんを説得して家から出せばいいんだね。」
ミツルは結論を言った。クレイジーデッド(笑)とか知らん。校内最強くせぇ不良グループは黙認しておくに限る。絡んだらろくなことにならない。これ以上面倒ごとにはなりたくないのでね。しかし、
「いえ、そうではなく・・・」
否定されてしまった。一瞬考えて、1つの嫌な考えに至った。まさか、ということは・・・
「クレイジーデッドをつぶしていただきたい。」
そっちかぁ~~~~~!!!




