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ギルティ エリート  作者: 明日原 たくみ
Chapter2 嗚呼、素晴らしき(偽りの)高校教師生活
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第25話 高度な心理戦 feat.萌え

「あなたは『松山先生』ではありませんね?」



 ミツルは思わず水を吹き出す。この男、本当に担当直入に聞いてきやがった。突拍子もなく突然いきなり急にどうしてなんでなぜだ、なぜバレた。おおおお落ち着け、まだ慌てる時間じゃあばばばばばばばばば。



「な、何を言っているんだ清波くん。松山先生じゃないって・・・」

「いいんですよ。誤魔化さなくたって。それとも、押し切れるとお思いですか?」



 清波は真剣な眼差しでこちらを見ている。どうやら冗談を言っているようではなさそうだ。この清波、理由はわからないが、俺が松山先生でないことに確信を持っている。理由はわからないが。



「インフルエンザがすぐに治るわ、自己紹介で『エリート松山』って名乗るわ、エリートのくせに授業がしょうもないわ・・・。疑われる理由はたくさんあるんですがね・・・。」



 清波の口から疑われる理由しか出てこなかった。思い出した。就任早々「ダメ元」で様々な誤魔化しを繰り返してきていたのだ。そのたびに疑われないので、これはいけるんじゃないかという錯覚に陥っていたが、よくよく考えると疑われない方がおかしいレベルだったことに気づいた。慣れというのは恐ろしい。



 いや、反省している場合ではないぞ。こいつは「松山先生ではない」と確信してしまっている。どうする、まだ正体まではバレてはいないのかもしれないが、必ず詮索してくるはずだ。何しろコイツは(少なくとも周りのバカどもよりも)頭が回るようだからな。


 やがては正体に気づいてしまうかもしれない。どうする、これはなかなかのピンチ。なかなかのピンチの局面なはずなのに、場所がメイド喫茶なので緊迫感が80%減だ。


 なかなか考えが巡らない。考えようとしても「萌え~」だとか「はわわ~ん」みたいな大雑把な何かが思考回路を優しく破壊してしまっている。くそっ、今にして思えばメイド喫茶に連れてきたのも1つの作戦だったのか。「まさかメイド喫茶でこんな話を・・・」と油断させておいて動揺させるための作戦のように思える。この巧妙な罠。こいつを野放しにしておくのは、すなわち死を意味するだろう。どうにかして清波を処理しなければ・・・。



「だんまりとは・・・。まさか、本当に松山先生ではないのですか・・・?」



 清波が小さくつぶやいた言葉に、ミツルはかつてないほどの動揺を覚えた。まだ「確信していなかった」だと?そうか、この状況において俺が沈黙を貫くことが、イコール「自分が松山先生でない」ということを自白していることになってしまったのか。


 今度こそ奴に「確信」させてしまった。あああああ、非常に絶体絶命な状況にも関わらず緊張感がない。なぜならば、ここはメイド喫茶だからだ。全体的に「ふわ~っ」とした雰囲気に包まれているため、思考回路も「ふわ~っ」としてしまって、野原に花を摘みにいきたいとか考えてしまっている始末。とりあえずなにか、なにか言わないと!!



「メイドさんって、瀟洒(しょうしゃ)な感じがしてかわいいよね。」



 しまった!動揺しすぎて、かつメイド喫茶の雰囲気に毒されてメイドさんについてのよしなしごとを喋ってしまった!くそっ、思考回路どころか脊髄レベルまで浸食しているんではないかと疑うレベルだ。人はパニックになると負のコンボを発生させてしまうというのは本当のようだ。



「・・・松山先生。」



 清波の声が低くなった。まずい、もっと真剣なトーンになってしまった気がする。疑いの言葉をかけられた人間の発する台詞ではないのだから、何かしら疑いをもってくるに違いない。もうダメだ。いつの間にかここは俺にとっての冥土になってしまっていた。メイド喫茶だけに・・・。



「あなたをこの上なき聖人と見込んで、お願いがあります!」



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