第24話 ミツルの知らない平和な世界
「いらっしゃいませ、ご主人様!」
「『いらっしゃいませ』だと・・・?」
今の状況を整理しよう。夕暮れ時、廊下にて「清波 英知」に時間があるかと問われた。あいにく時間はあったし、自分のクラスの生徒なので、クラスについての理解を深めるために、彼について行った。するといきなり派手で萌え~な建物に連れてこられ、入り口にてメイドさんに出迎えられ、現在に至る。そう、ここはメイド喫茶。話があると言われて連れてこられたのがメイド喫茶。話をするには絶妙な舞台選択だ。
まぁそれは置いておこう。そんなことよりも、なぜか清波はどこか解せない表情をしている。メイドさんに「いらっしゃいませ」と言われたことが不服なのだろうか。別になにもおかしいとは思えないが。
「君・・・、いま『いらっしゃいませ』と言ったか?」
清波がメイドさんに対して真剣な口調で問いかける。メイドさんは「あっ」とつぶやき、何かに気づいたような表情になった。
「はわわ、申し訳ありません!おかえりなさいませご主人様!」
なるほど。清波はメイドさんに「おかえりなさいませ」ではなく「いらっしゃいませ」と言われたことに納得できなかったのか・・・。なんとも理解しがたく、平和な世界だ。
「君、メイド歴はどれくらいだ?」
俄然、清波は真剣な口調で問う。
「え~っと、まだ2日目です!」
「そうか・・・。だが、その初々しさも、また一興・・・!これから頑張るんだぞ。」
「はいっ、ありがとうございます!ご主人様!」
なんだこの茶番。この清波、担任の先生をメイド喫茶に連れてきておいて置いてけぼりを食らわせるとは、なかなかのチャレンジャー。また1つ2年4組について理解を深めた。清波 英知はヲタクだ。真面目な顔してるくせに、人は見かけによらんな。こいつをさっさと冥土に送ってやりたいものだ。
「ごゆっくりどうぞ!ご主人様!」
茶番を終え、メイド歴2日のメイドさんが席に案内してくれた。
「松山先生申し訳ありません。こんなところまでついてきていただいて。」
清波が謝る。ほんとだよ。ほんとなんというところに連れてきてくれてんだよお前は。反省しろ。
「いや、いいんだよ。初めてだからちょっとびっくりしてるけど….。で、話ってなんだい?」
本題はそこだ。自分のクラスの生徒が赴任早々の担任に何の話があるのだろうか。しかもメイド喫茶で。
「そうでしたね。では、担当直入に聞きます。あなたは『松山先生』ではありませんね?」




