第15話 となりの・・・
とくに警察に声をかけられたりすることもなく、ミツルは無事にミツルハウスに帰還した。犯人がミツルであるという手がかりは、まだ見つかっていないようで、ひとまず安心だ。
しかし、極力指紋などを残さないようにしたとはいえ、いずれ何らかの証拠が見つかるはずだ。松山先生のインフルエンザが治るのが先か、証拠が見つかるのが先か・・・
とりあえず、あまり目立つ行動は控えよう。そして、松山孝則であると胸を張ろう。
ピンポーン
インターホンが鳴り、少し動揺する。これはもしや、警察?
残念なことに、ミツルの住むアパートにはカメラモニターや玄関穴がないので、実際に玄関まで行き、扉を開けなければ扉の向こうにいるのが誰なのか確認することができないというクソ仕様になっているのである。
恐る恐る玄関に向かう。そして、ゆっくりと扉を開けた。
「は〜い、こんにちはぁ星野さん」
そこには、お隣の一人暮らしのババア(斉藤さん)がいた。よかった、警察じゃなくて。
「あぁ、こんにちは斉藤さん。どうかしましたか?」
「はい、これ回覧板。よろしくね〜」
なんということか。このババア、ポストに入れておけばいい回覧板を、わざわざインターホンで呼び出して手渡ししにきやがった。このババア、ただでさえインターホンに敏感に反応してしまう現状況でこんなくだらんことで呼び出しやがって。ふざけんなよ。
ミツルはこの時生まれて初めて、年寄りに対して人間の底すら無い憎悪を抱いた。
「あぁ、あと星野さん。この頃物騒だから気を付けてねぇ?今朝もこの辺で殺人事件おきたでしょう?怖いわねぇ。もうどこで殺されるか分かったもんじゃないわよねぇ?もうこの地球上に安息の地なんてないのかもしれないわねぇ!もういっそ宇宙にでも逃げるしかないんじゃないのォ!?うふふふふ!!宇宙といえば、星野さん知ってたぁ?宇宙服って一着十億円以上するらしいわよォ?高いわよねぇ!十億円といえば星野さん宝くじ買った?今回の一等は・・・」
このババア、とにかく話が長い。まぁ、この地球上に安息の地がないというのは、今のミツルにとってなかなか同意できる言葉だった。このババアも、まさか俺が人殺しだなんて思いもしてないんだろうなぁ。そんなことを考えながら、ミツルは渋々ババアとの雑談を続ける。雑談は30分ほど続いた。
―――――
「じゃ、回覧板よろしくね!」
たったの30分で、ここまで他人を嫌いになれるとは思いもしなかった。まぁ、警察が来るよりは数万倍マシなんだけれども。
長話につきあってたら腹が減ってしまった。キッチンの棚からカップ麺を取り出し、お湯を沸かし、入れる。よかった、あのババアが来たのが夜飯の前じゃなくて。危うく麺が伸びてしまうところだった。
ピンポーン
再びインターホンが鳴る。まさか、またあのババアか?またサツキとメイは実は死んでました論争の続きでもしにきたのか?たしかにさっきあやふやに終わってしまったけれども。
あのババアがまた来たと思うと非常にイライラしてきた。今から夜飯だというのに。もう今回ばかりはガツンと言ってやろう。あと数十秒で3分が経過するので、要点だけおさえて話をつけよう。急いで玄関へと向かう。
そして粗めに扉を開けるやいなや怒鳴り散らす。
「だから、トトロが見えるのは既に二人が死んでいるからじゃなくて、あの二人にしか見えてないというメルヘンチックな現象が起きているだけで・・・」
「あの〜すみません。」
ミツルの熱弁は突如打ち切られた。それは、となりのババアによってではなく、
「警察ですが。」
警察によって。
来やがった、今1番危険な「ヤツ」が!




