第13話 松山孝則攻略作戦 下
奴はインフルエンザでありながら、思考回路はエリートさを保っており、かつ教員全員の名前を暗記している。この防衛線をいかにして掻い潜ればよいのか。
しかし、教員全員の名前を暗記しているからといって必ずしも顔まで覚えているとは限らない。できればこの理論を信じたい。これが通らなければあの部屋に入る事は不可能に近い。よし、これで行こう!さっきは全くの架空の人物を名乗ったが、今回は奴の暗記対象に入っている教員を名乗る!俺は荒川和博(モデルミの父親)だ!
再びメガネやマスクを装備し、先程とは声を変えて慎重に・・・
「・・・いや、あなたは荒川先生ではない。声質が違う・・・。お帰り下さい。」
瞬殺されてしまった。
なんでだァァァァ!?なんっだこいつ気持ち悪っ。なんで教員の名前とともに声質まで暗記してんだこいつ。教員の声質をスピードラーニングでもしてんのかこいつは。
もう無理だ。このエリートに勝てる気がしない。まだ顔も合わせていない段階でここまで苦戦を強いられているのだ。これは、白旗をあげるほかない。
諦めて身をくらませようと、その場を離れようとしたその時・・・
「・・・いや、待てよ。」
再びインターホンから聞こえてきた死にそうな声にミツルは足を止めた。
「今のアンタの声質、さっきのオカモトという人間と限りになく似ている。もしさっきのオカモトと今の荒川が同一人物であるとすれば、村雨学院高校の教員を騙る人物が短時間に二度も私に接触を試みてきたということになる。かつ私がインフルエンザであることを知っている。この二点から、アンタは村雨学院高校とのなんらかの接点があり、そして私が村雨学院高校の教員であることを知っている。その上で私に接触を試みるということは、アンタになんらかの事情があり、それを解決するために来た、と考えるのが自然だな。」
いやああぁぁぁぁぁ!!この人怖いぃぃ!インフルエンザのくせに、思考能力衰えなさすぎだろ!エリートを甘く見すぎていた。ここまでの考察力があるとは・・・
この場をどう凌ごうかと考えていると、松山先生は何かに感づいたように言った。
「・・・おいアンタ、ちょっとそのメガネとマスクを取ってもらえないか?」
この状況で、奴に逆らうのはマズイ。大人しく素顔を晒しら奴の命令に従う必要がある。圧倒的アドバンテージは向こうにあるのだから。
すぐさま、メガネとマスクを取る。すると、
「・・・なんてことだ。こ、これは、もしや」
松山先生が動揺している。死にかけながらも冷静を保っていただけに、この動揺にはミツルも嫌な予感を走らせた。もしや、もう報道で俺の顔が殺人犯として晒されていて、それに気づいてしまったのかもしれない。
逃げようとインターホンから離れようとした時、突然ドアが開いた。松山先生の部屋のドアだ。そして、中から出てきた男がミツルの肩を掴み、震えた声で言った。
「お、お前、殺人犯だな・・・」
その男は、ミツルと瓜二つの顔だった
ついに2人が出会う。




