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『次に会う時は』

「なあ。知ってたんだろ! 秋穂の事!」

 姉を見つけて問いただす。


「そりゃな。担当だからね。つかなんだ。秋穂ちゃんやっと言ったの」

 姉の落ち着いた声に余計に苛立ちが増す。


「どうして教えてくれなかったんだよ!」

 行き場の無い怒りや悲しみ、もどかしさが怒声になって表出される。


「病院ではそんな珍しい事じゃないよ。それに――」

 姉はあくまでも落ち着いていた。


「秋穂が言わないで欲しいって言ったんだ」

「でも――。それでもッ――」


「秋穂が恵は優しいからきっと気を遣うだろうって。だから言わないで欲しいって。そう言うんだから」

 なんだよ……。なんだよそれ。自分が死ぬって言うのにお前が気を使ってんじゃねーよ。馬鹿じゃねーの。


「私だって辛いんだよ……」

 姉はそう言いながらもそっと抱きしめて、昔母さんがしていた様に頭をそっと撫でてくれる。いつくしむ様にそっと。


「辛いときは泣いていいんだ。それだけ大切に思えたって事なんだから」

 涙と一緒に、よく分からない感情が。辛い気持ちが少しずつ吐き出されていく。

「そうして次合う時に。笑顔を見せてやればいいんだから」


 姉は粗雑で乱暴で――カッコいい。だからか意外と人望があって……。僕も姉の事は嫌いではない。




「よっす」

 遠慮もなくベットの端に座り、当然の様に適当な挨拶をする。


「なによ。退院したんじゃなかったの」

 少しだけ意外そうに言ってくる秋穂。


「秋穂が寂しがってると聞いてお見舞いに」

「なっ!? 詩織さんがアンタに言ったわけ!?」

「いや。そう思っただけだけど」

「な訳ないじゃん。どんだけ自意識過剰なのさ!」

 何日かぶりに見る秋穂の顔は以前よりも顔色が悪くなっていた。

けれどもそれでもいつもと変わらない様子で憎まれ口を叩いてくれるのが少しうれしかった。


「そんな事を言う奴には持ってきた本を貸さんぞ」

「すごい! 来てくれてうれしい! ありがとう! 泣きそう!」

 それを聞いた後の変わり身の早い事早い事。


 こんなやり取りが出来るのも短い間だけだった。




 そんな日がまた何度か続いた後、季節も移ろい、夏の暑さもなくなり、少し寒さが出始めて秋も終わりかけになった頃。


 秋穂の容体が悪化して手術をしなければならなくなったと姉から聞かされた。


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