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『姉、襲来』

 というか、一日で読み切ろうって考えてたけど、普通に楽しくて読んじゃうわ。本が好きな人はそういう物ではないだろか。

 まあ、という訳で昼食の後に取りあえず行ってみる事にした。続きを早く読みたいしね。


 んで、行ったら先客がいた。

「恵~。やっほー」

 見知った顔の。

「なんでいるんだよ姉貴……」

「なにさ。私が居ちゃ邪魔だっての?」

 この少し年の離れた姉。身内に対してと言うか、俺に対してのみ看護師がこんなんでいいのかというくらいに態度と言葉遣いが悪い。


「いや、なに。そうじゃないけど看護師って暇なの?」

 いや、邪魔ではあるんだけど。


「アンタそりゃ一番言っちゃいけない事言ってるわよ! 仕事の一環でここに来てるの!」

 サボリじゃないのか。姉ならありうるかと思ったんだが。


「んー。仕事って?」

「まあ、正確には仕事ではないんだけどね。ちょっと頼まれごとしてて、本を借りに来たら愛しの我が弟の名前があったから来ないかなーってちょっと待ってたのよ」


「やっぱりサボリじゃ……」

「んー。よほど今年のお年玉が欲しくないみたいね」

「すみません! それは勘弁してくださいお姉さま!」

 いや。ホント。マジで。


「んなら、私の仕事手伝いなさい」

「ハイ。オネエサマ。ヨロコンデ」

「もっと心を込めて」

「この愚弟めになんなりとお申し付けくださいませ」

「よろしい」

 姉はそう言って満足げにほほ笑んだ。


「アンタ本読むの好きでしょ? 私サッパリだからさ。本選ぶの手伝ってほしくて」

 姉が読む……訳ないもんな。


「その話って東雲秋穂っていう人と関係ある?」

「そーそー。よく分かったじゃん」

 糞ほど本のチョイスがバラバラだったからね……。アレを姉が選んだと考えると納得がいく。


「まあね……。でもなんでその人が自分で借りないの?」

「まあ事情があるのよー」


「ふーん。なんかその人が好きな作家とかわかる?」

「えっとね。アンタの好きな有栖川なんちゃらの本は好きって言ってた」

 ほう……。


「んなら、似てる作風の中村航一さんの本にしてみよっか」

「有栖川なんちゃらの本にしないんだ」

「本好きだったら好きな作家の本はすでに読んでそうだから」

「ほー。そういうもんなのね」


 な、な、なかむら……あった!

「うーん。ここは……短編集にしよう」

 悩んだ結果短編集の『またね。手をつなごう』を選んだ。


「それにもなんか理由が?」

「短編集だったらまず手始めに読むきっかけになりやすいじゃん? 仮に好みじゃない作家さんだったとしてもダメージが少ないというか」


「そんな考えて選ぶんだ……」

「姉貴が適当に選びすぎなんだって……」

「んま、いいでしょう。次はアンタにその娘紹介するから」

「ヘッ」


「仕事の内容は毎日その娘の借りたい本を借りてきてあげる事。まあ、有り体に言えばパシリ。ついでに仲良くなって私の代わりに話し相手にでもなってくれればさらに言う事無し」

 なんというかそれは――退屈な毎日に変化が訪れる瞬間だった。



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