『七月十六日 別冊水族館戦争 渋谷恵』
八話までありますが、すべて短めに区切っています。
それはとても暑い日。蝉の声が鳴り響く様な季節の事だった。僕はいきなり倒れた。
それからすぐに僕は姉が働いている病院に入院をすることになった。急性肝炎という病名らしい。
医者によるとそこまでたいした病気ではないらしいが三ヶ月程は入院が必要とのことだ。
それでも中学二年生の僕にとっては三ヶ月入院が必要と言われると、それだけで僕にとってはたいしたことだった。
結果的にこの三ヶ月が僕にとって一番大切な思い出になる。一生忘れられない様な、そんな思い出に。
それでも酷かった痛みも落ち着いてきて点滴さえ済ませればあとは病棟内であれば好きなように過ごせる様になった。――なったはいいものの、病気が良くなってくるにつれ暇な時間がどうしても増えてくる。
どうにかして暇を潰そうと病院内をさ迷っているうちにある所を見つけた。病院の中に小さな図書室があったのだ。
図書室といっても幾つか本棚があって、借りる際には自分の名前と本のタイトルを記入するといった簡単なものだった。ちなみに張り紙によると空いている時間は十二時~十五時まで、借りるのは一人一冊ずつだそうだ。
その図書室で何か良い本は無いかと思って探してみると有栖川宏の『別冊 水族館戦争』があった。別冊の方はまだ読んだ事が無いためそれを借りる事にして、名簿に名前を記入しようとして僕は驚いた。
同じ名前がずらーと並んでいた。それもほぼ毎日。
『七月十日 クラゲの唄 東雲秋穂』、『七月十一日 几帳面家族 東雲秋穂』、『七月十三日 ハニータッカーと魔法の箒 東雲秋穂』、『七月十五日 流れ星が消えた後に 東雲秋穂』、『七月十六日 チーズ家の人々 東雲秋穂』――こうして見ると作者みたいに見えるな……。いやまあ、それにしてはタイトルに統一性が無さすぎるが……。
この人はどんな人なんだろう、そう思った。
できれば話してみたい……とも。借りた本を今日中に読み切って明日も借りに来よう。そうすれば会えるかもしれない。
まあ明日がダメでも明日がある。明日がダメでも明後日がある。なにしろ時間は沢山あるのだ。
『七月十六日 別冊水族館戦争 渋谷恵』




