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~翔視点~

「栞、もう閉館の時間だ。」

「……」

俺は「はぁ」と溜息をつく。いつもの帰り道、いつも通りに読書をしている俺の幼なじみは相変わらず周りが見えていない。だから少し強く肩を揺さぶる。

「栞、おい、おい、栞!」

「っ!何するの!?翔!」

ほら、また逆ギレする。睨んでも無駄なのに。

「お前は時間を見ろ、もう閉館だ。佐々木さんにまた迷惑を掛けるつもりか?」

「う~だって、もう少しだけ、お願い!」

「ダメだ。おばさんに迎いに来てもらうか?」

こうやっておばさんのことを言うとビクッとする。本当におばさんには昔から弱いよな。

「わかった。帰るから、母さんに連絡するのだけは止めて!!」

「じゃあ帰るぞ。」

お前、どれだけおばさんが怖いんだ?まぁ、本当はおばさんに迷惑を掛けたくないと思ってるんだろうな。

「またね、佐々木さん。明日は早めに来るから。」

「はいはい、翔くんはつれてくるのよ。」

あっ、今こいつ俺のことまた睨みやがった。

「こんなやつで良ければいつでもどう…っいた」

さすがにイラついた、お前は俺を何だと思ってるんだ!

「油売らずにさっさと帰る。佐々木さん、また明日もお願いしますね。」

俺は栞の腕を引っ張って図書館を出ていった。

はぁ、俺いつまでこいつと一緒にいるんだろう…


俺は家に帰り、いつものように一人で夕食を食べる。もちろん、家事は一人でこなせる。父子家庭で育ち、現在父親が単身赴任中だから一人なのは当たり前だ。そんな俺を気遣うのが栞と栞の母親である。栞は母子家庭だからかやたらと俺を心配する。

心配なのはお前の行動の方なのに、まず自分の心配をしろよ。

俺はあの家族に感謝している。俺を家族同然に接してくれるのだから。テレビを見ながら夕食を食べているとブーブーとスマホが鳴っていた。珍しく父親からの電話に少し驚く。けど、滅多に電話をしないのにどうしたのだろう?

「もしもし」

「まぁ!翔君?初めてまして。元気に過ごしてる?」

女性の声がする。あり得ない。

「人間違いではありませんか?」

「嘘はついたらダメよ。あなたは翔君で間違いないわ。だってわかるの。息子の声なんだから。」

は?今この人は何と言った?息子だと?俺の親は父だけなのに?

この疑問は女性の言葉で吹っ飛んだ。

「あぁ、私の自己紹介をしないわね。私はあなたのお父さんの再婚相手よ。つまり、あなたのお母さん。これからよろしくね。明日会いに行くから。」

「何を言っているんですか?父が再婚なんてあり得ません。」

「けれど、この携帯は間違いなくあなたのお父さんの携帯よ。」

確かに父の携帯ではあるが再婚は別だ。父は母のことを10年以上たった今も愛してるからそんなことは起こるわけがない。

「仮に再婚相手だとしても明日は会えません。」

「大丈夫、私があなたの所に行くわ。どうせ図書館でしょ。あの~栞ちゃんだっけ?あの子といるでしょう?」

「誰でしょう?僕は知りませんがどなたでしょう?」

まずい、栞のことまで知っている。こいつどこまで俺のことを知ってるんだ?

寒気がしてきた。

「良いの?そんな事言って?これ以上嘘をつくようならあの子どうなっても良いの?私はただあなたに結婚を認めて欲しいだけなの。あなたが認めてくれれば私は手荒な真似はしない。約束は守るから。」

そんな事言われたら俺は…

「わかりました。明日、図書館で会いましょう。」

「そう、良かった。どうせこうなると思…」

俺は女性の話しに割り込んで

「ただし、栞には見つからないようにしてください。」

「良いわよ。あなたの最愛の従姉妹に隠しごとはたくさんしてきたのでしょう?これ以上増えた所で関係ないわ。」

「お気遣い感謝します。」

「明日が楽しみね。じゃあまたね。」

やっと電話が切れた。

けれど眠れるわけがない。

栞、今どうしてるかな…?

そんな事が無性に気になってしまった。


「翔、寝不足?私一人で図書館行こうか?」

何を言ってるんだ?タイミングを考えろよ!

「バカ、お前一人で行かせるわけないだろ。だいたいお前の…あぁとにかく一人で行くのはダメだ。」

何でこんなこと話しているのかな。あと少しで図書館に着くのに。

だいたいお前の心配して寝不足なんだけど…


図書館に着くとスタスタとどっかに行く。あとは閉館する前に栞を探して帰らせればいい。

俺は図書館を出た。すると後ろからポンポンと肩を叩かれた。バッと振り返ると、

「どうも、私は佐々木 彩夏。あなたのお母さんになる予定です。ちなみにここで働いている佐々木さんの妹よ。」

だから俺達のことを知っていたのか…いや、だが従姉妹なのは知らない。俺は教えてないし、そもそも栞は俺が従兄弟というのを知らない。

「佐々木さん。なぜわざわざ僕に会いに来たんですか?僕に何を求めてますか?」

にたぁと佐々木の唇が動いた。

「私はあなたと一緒に住みたいと思ってるの。ただそれだけ。」

「たったそれだけのために俺のことを調べますか?」

「えぇ、だってそうすると簡単に話してくれるでしょう?こうやって、ね?」

…言い返せない。だって俺にとって栞は従姉妹以上の存在だから。

「私の所にあなたが来て?あくまでもあなたから私の所に来てちょうだい。」

「行かない、と言った場合は?」

「ふふ、栞ちゃんのお母さんは借金してるの知ってる?私が肩代わりしているの。」

何でそんな事を!俺達はそんなの知らない。

「嘘です。そんな事はあり得ません。」

「馬鹿ね、あり得るの。だって借金作らせたの私だから。」

「なっ!…犯罪ですよね。僕が今から通報するとは思わないですか?」

「しない。その前に栞ちゃんのお母さんが横領で捕まるから。」

この人の目が怖い。もう見たくない。けど、見るしかない。

「あの人は横領なんてしません。」

「けど、証拠があるのだから仕方ないでしょ。横領を消せるのも私だけ、あなたがあの家族を救うのか、救わないのかは自由よ。」

そんなの答えは一つしかないだろ。

「…わかりました。僕を佐々木さんと一緒に住まわせてください。」

「あはは、良いわよ。一週間待っててあげるから、準備をしなさい。約束よ。もし破ったら、どうなるのかわかるよね。」

「はい…、わかっています。勿論約束通りに…」

こんなことしか言えなかった。

「えぇ、わかっているならそれで良いわ。それじゃあまた遊びに来るから。」

俺の肩ポンポンと叩いて去っていった。どうすることも出来なかった。

「俺が大人だったら…」

そんな言い訳しか出てこなかった。


図書館の中に入ると栞がいた。

「あれ?栞?何でここにいるの?」

質問したらなんとも間抜けな声がした。

「…あぁ、翔!探したんだよ。あのね、おもしろい本を見つけたの!!一緒に見よ?」

あぁ、もうこうして話すことすらできないのか…

俺は栞の頭を軽く撫でた。

「翔?何か付いてた?」

「いや…何でもない。ただなんとなく」

この人の笑顔を見ていたい。

だって俺はお前が好きだから…

俺は笑って誤魔化すこの残り少ない当たり前を守るために

日常のために…

日常の中へはこれで完結です。初投稿作品なので至らない所はたくさんありますが、読んでくださりありがとうございます。

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