~栞視点~
「…い、おい、栞!」
「っ!何するの!?翔!」
学校の帰りいつもこんな感じで私は幼なじみである翔を睨む。
翔が肩を強く揺さぶるのがいけないんだ。私はただ図書館で読書をしているだけなのに。
「お前は時間を見ろ、もう閉館だ。佐々木さんにまた迷惑掛けるつもりか?」
「う~だって、もう少しだけ、お願い!」
「ダメだ。おばさんに迎いに来てもらうか?」
ビクッとする。司書の佐々木さんに迷惑を掛けるより、翔に怒られるより、母さんが鬼の形相で来る方が1憶倍怖い。
「わかった。帰るから、母さんに連絡するのだけは止めて!!」
「じゃあ帰るぞ。」
私はそそくさと帰宅の準備をする。
「またね、佐々木さん。明日は早めに来るから。」
「はいはい、翔くんはつれてくるのよ。」
私は軽く翔を睨んで、
「こんなやつで良ければいつでもどう…っいた」
「油売らずにさっさと帰る。佐々木さん、また明日もお願いしますね。」
翔が胡散臭い爽やかな笑みを浮かべながら私の腕を掴んで引っ張った。
次の日、翔は少し眠そうにしていた。
「翔、寝不足?私一人で図書館行こうか?」
「バカ、お前一人で行かせるわけないだろ。だいたいお前の…あぁとにかく一人で行くのはダメだ。」
翔のケチ、1日ぐらい一人でも大丈夫なのに。そう考えると図書館に到着した。あとはいつも通りに読書だ。
「うん!この作品は良かった。ねぇ翔~。翔、翔?」
返事がない。翔が気が付かない訳がない。何かおかしい。
「翔、翔!翔どこ?ねぇ翔!お願い、返事して!!」
おかしい、おかしい、何で翔の声がしないの?翔がいない。ふと外を見ると知っている人影があった。
「翔だ。翔!、どこにい…、えっ誰あの人?」
私はとっさに隠れた。翔の声がギリギリ聞こえる位置に。
「はい…、わかっています。勿論約束通りに…」
翔は俯きながらそう言っていた。もう一人の人は女性で口元をにこやかしながら、
「えぇ、わかっているならそれで良いわ。それじゃあまた遊びに来るから。」
ポンポンと翔の肩を叩き去っていった。
「俺が大人だったら…」
翔が力強く拳を握っていた。それを見ることしか出来なかった。
あぁ、私は本当に無力だな…
「あれ?栞?何でここにいるの?」
「…あぁ、翔!探したんだよ。あのね、おもしろい本を見つけたの!!一緒に見よ?」
私はいつも通りにしていた。これで良いんだ…、これで今までと同じだ…
不意に翔が私の頭を軽く撫でた。
「翔?何か付いてた?」
「いや…何でもない、ただなんとなく」
翔は少し悲しそうに微笑んだ。それを私は見ないふりをした。
日常のために…
初投稿で、文字が少ないですね。次は翔視点です。ちなみに「翔」で「かける」と読みます。