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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
2.結婚できないダンジョンマスターが恋に堕ちるまで
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34.ポータルという名のトンネル

ポータルを抜けると、そこは雪国だった――。

 目の前も白い!

 吐く息も白い!

 後ろを見ても白い!

 ついでに空も――は青かったが。


「寒っ!」

「ですね・・・・・・暖かいものでも作りますか?」

「いや、それはまだいいけど」


 背負った荷物を漁り始めたハルを制止する。

 つか、やたら荷物が大きいのはそのせいか・・・・・・。

 今までタイミングが合わなかったせいか、ハルの手料理は食べたことがない。というか、女の子の手料理もだが。

 フィーネと千歳にはそもそも期待してないし、ロッテは見た目は美味しそうなものを作るのだが――いまいち何か余分なものを入れられてそうで食べる勇気がない。

 一見、家庭的な料理を作りそうに見えるが、獣人の家庭料理ってどんなだろう・・・・・・。


「?」


 視線を感じたのか、こちらを見上げて小首をかしげるハル。

 猫だから、ネズミとか? いやいやさすがに・・・・・・。


「とにかく――出発だ!」

「はい!」


 俺とハル、そしていつものごとく召喚したゴーレムは遠くに見える氷山目指して歩き始めたのだった。


◇◆◇◆◇ 


「そういやここってどんな場所なんだ?」


 アイスドラゴン――今回の目標だ、が生息するという以外は何も知らない。というか興味なかったので調べていない。

 出発地点のポータル周辺はまだ地面に土が混じっていたが、徐々に足元が氷一色になりつつあった。

 一面真っ白なので距離感がよく分からないが、一方で所々地面に大きな穴が開き、その下の海を覗かせている場所もあるようだ。


「ここはスヴァールグ氷海ですね。人間領最北のバル村の更に北に位置します。氷山や陸地近くは大丈夫ですけど、海に近い氷の薄い場所は慎重に進まないと割れて海に落ちたりするので注意です」

「お、よく知ってるな」

「まあ、冒険者ギルドで働いてましたから・・・・・・」

「そういやそうだったな」


 会話が途切れ、ぎゅむ、ぎゅむっと雪交じりの氷を踏みしめる音が、しかし雪に吸われて消えていく。


「なあ、何でついてきたんだ?」

「お邪魔・・・・・・でしたか?」

「いや、そういうわけじゃなくて」


 足を止めたハルに合わせて俺も足を止めて、


「詳しくは知らんが、アイスドラゴンって強いんだろ?」

「まあ・・・・・・」

「それに道中だって魔物が出る」

「そうですね」

「怖くないのか? ロッテに脅されてとかだったら今からでも――」

「そうですね、怖くないと言ったら嘘になります。アイスドラゴンを倒せるのは勇者様くらいだと思いますし」

「だったら――」

「でも、トシさんは勇者より強いわけですから大丈夫です! それに、あの勇者様からも守ってくれましたし・・・・・・」


 あの変態に今でもちゃんと様をつけるあたり性格の良さが出てるよな、ハル。

 ハルを守るっていうのも確かにあったが、あの変態勇者が気にくわないというのが理由の八割くらいだった気がする。

 なんであんな奴がモテたのか、いまだに理解できないし。


「わたし、トシさんのこと信じてますから。それに、助けてもらったお礼もしてないですし、少しでもお役に立てればと思って」

「・・・・・・か。別にこんなことしなくても、ハルは十分役に立ってくれてるさ」

「そうですか?」

「ああ――」


 話しながら歩いていたからか、何かに足を取られ思わず前につんのめる。

 何だ――?

 足元を見ると、靴が2,3センチほど氷に沈み込んでいた。

 後ろを歩くゴーレムも同じ状況らしく、バキバキと音を立てながらこちらに近寄ってくる。


「これは――」

「うおっ!?」


 近くにあった氷の塊――俺の腰くらいまである、が突如、ぷるんっと震える。

 ――と、一気にその形を崩してこちらに流れこんでくる!


「ファイアボルト!!」


 咄嗟に引き抜いた札が呪文と共に燃え尽きる。

 放たれた炎は俺やハルの足元を溶かし、迫りくる水流を――成長させた。


「なんだぁ!?」


 とりあえず自由になった足を必死に動かしながら声を上げる俺。

 同じくハルも必死に足を動かしながら、


「あれは、アイススライムですっ!」

「スライム!?」

「生き物の熱を食べるとかで――」

「じゃあ――これでどうだ、アイスボルト!」


 呪文と共に放たれた複数の氷の弾が水流を打ち抜き――氷結させる!

 

「やった・・・・・・のか?」

「たぶん?」


 俺とハルは少し離れたうえでゴーレムに軽く突かせてみると、波は崩れて氷のかけらをあたりにまき散らした。

 ちょっと怖いけど――ゴーレムの背負う籠に氷のかけらをいくつか放り込む。

 何かもはや習慣と化してきているが、これもソーニャと結婚したら必要なくなるんだよな。

 俺、結婚したらまともな職について平穏にイチャラブな生活を送るんだ――。

 そのためにも――


「先に進むか」


 再び俺たちはアイスドラゴンが住むという氷山に向かって歩き始めたのだった。

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