25.罠という名のエグみ
「お、初のクリアか・・・・・・」
壁に映る映像を指の隙間から眺めつつ、俺は呟いた。
その中では、剣士がハルから買った――というか俺が作ったプロテクションの巻物によって跳ね返された球状ゴーレムを食らい、巨大ゴーレムが音を立てて崩れ落ちていった。
「もう少し弱くても良かったかな・・・・・・」
ちなみにこれで三組目。
最初の一組目はやはり跳ね返してダメージを与えられることに気づきはしたのだが、上手く跳ね返せずに手間取っている間に全滅。
二組目に至っては固まって陣形を敷いているところを一撃さて、あげく入口から逃げようとして潰されて終了。
剣士たちもクリアできたとは言っても、10人近くいた冒険者たちの大半は死んでいるわけで。
「いや、むしろもっと殺す気でいくか?」
なんかいい雰囲気になっている剣士と魔法使いを見て、考えを180度変える俺。
映像の中では、剣士が魔法使いを抱きかかえて回復薬だろう小瓶を飲ませていた。
意識を取り戻したのか、目を開ける魔法使い。
その様子を見て、剣士はぎゅっと魔法使いを抱きしめる。
そして報酬の巻物と倒れたままのヒーラー――呻いているので、生きてはいるっぽい、がぽつんと傍らに放置されているのだった。
「なんだかなぁ・・・・・・」
ヒーラーの結婚はいいぞ、という言葉が頭から離れない。
ちなみに、元の世界に居たときの既婚者の反応は7割くらいが結婚なんてろくなもんじゃない、という感じだった。残りの3割はのろけだ。
俺はその残りの3割になろうと、聞くたびに思っていた。
「俺も早く相手を見つけないとな・・・・・・」
そう呟きながら他の映像に目を向けると、ちょうど罠を踏んだ冒険者の首を壁から生えた剣がすっ飛ばすシーンだった。
誰だよ、こんな仕掛け作ったの・・・・・・。
思わずそう思うが、自分だ。
オンラインゲームとかだと罠に掛かってもダメージ食らうだけで死にはしないけど、実際はやっぱ死ぬよなー。
そう考えると、針に触れただけで弾け死んだり、階段くらいの段差から落ちて死ぬ奴やつの方がリアルなんだろうか。
「いや、割とどうでもいいけども」
前に作った不死の階層――ゾンビとかが出る、は吊り橋効果で愛が芽生えそうだが、今回の罠の階層は愛が芽生える前に死んでる気がする。
眺めててもロマンティックな展開にならず、やたらエグいシーンばかりが流れているし。
他に愛が芽生えそうなところというと・・・・・・。
「雪山、遭難、一枚の毛布・・・・・・」
まあ、雪山に行っても一人で登って降りて終わったけども。
ふと空しい過去を思い出して、胸に手を当てる。
「――んっ?」
胸に当てた手が何か硬いものに触れる。
これは――
「そうだ、思い出した!」
魔力球への補給の間の暇つぶしで始めたダンジョン造りに時間をかけ過ぎてしまったが、そもそも俺は町へ行こうとしていたんだっけか。
最初は薄く濁っていただけの魔力球も、今やボーリングの球のように真っ黒になっていた。
「うし、町へ行こう!」
俺は勢いよく立ち上がると、今だエグい映像が流れ続ける部屋を後にしたのだった。