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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
1.結婚できないダンジョンマスターが勇者を倒すまで
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9.馬鹿という名の始まり

「……何してんの?」

「いや、何って言われてもな」


 ロッテはいつの間にか起き上がり、素知らぬ顔でベットの横に立っていた。

 ……素早い。

 こういうところとか、本当に女っぽいな。

 だが男だ。

 一方、俺は服の乱れを直しながらゆっくりと身を起こす。

 ……こいつがここにいるってことはもう一日たったのか。

 時計がないからわからないが、結構たっていたらしい。

 見ると部屋の窓からは朝日が差し込んでいる。

 フィーネは背中に背負った大きな荷物ーーまるで夜逃げみたいなーーを床に置くでもなく突っ立っていた。

 ……なんだろう、嫌な予感しかしない。

 ともあれ俺は気を取り直してフィーネに問いかけた。


「で、何が大変なんだ?」

「そう、大変なのよ!」

「いや、一ミリも情報が増えてないんだが」

「ダンジョン造って! すぐに! できる限り速やかに!」

「はぁ? ダンジョン? ダンジョンってモンスターが居たり宝があったりの、あのダンジョンか?」

「そうよ、他にダンジョンがあるわけないじゃない。馬鹿なの?」

「うわあ馬鹿に馬鹿って言われた、すげーむかつく」

「言ってる場合じゃないわよ、ほら! 早く!」

「いや、行かんし。大体お前、儲け話はどうしたんだよ」

「それが……」


 露骨に目をそらすフィーネ。

 ……失敗したか。

 単純な話だからどんな馬鹿でも大丈夫だと思っていたが……駄目だったのか。

 とにかく話を聞かないことにはどうにもならない。

 俺は笑顔を作るとこう言った。


「ほら、怒らないから言ってみろって」

「本当に?」

「ああ、俺が今まで嘘を言ったことがあったか?」

「そうね……。あの後、盗賊を引き渡した後に武器屋に行ったんだけど……ちょうど視察に来てた役人がいて」

「それで?」

「全部取られた」

「うぉい!?」

「ちょっと、怒らない約束でしょ!?」

「怒るわ!」


 そう、あの時こいつから言われた儲け話……。

 それは普通の武器を魔法で強化して売るというものだった。

 普通であれば強化魔法の効果は一日もしないで切れるらしい。

 が、フィーネ曰く俺の魔力なら一か月――いや、下手をすると半永続的に効果が持続するとか。

 しかも魔法の効果も普通と比べてかなり高い。

 そうやって作った剣を魔法剣として売り払う、というのが今回の儲け話だった。

 武器屋で売るだけだから失敗のしようがないと思って任せていたのだが……。


「だってしょうがないでしょ! 武器を売ろうとしたら役人がどこでそれを手に入れたって聞いてきて」

「それで?」

「盗賊が持ってたって」

「ほう」

「でも役人のやつ、お前に盗賊が倒せるわけがない、とか言うのよ!?」

「で、お前はなんて返したんだ?」

「たしかにそうですね、って」

「納得してんじゃねぇか!?」

「だってしょうがないじゃない!」


 言われて昨日のことを思い出す。

 魔法を使えばマッチ以下、剣は飾りの木刀のみ、運動神経もゼロ。

 そうか、こいつの無能っぷりは役人にまで知れわたってるのか……。

 

「うん、お前に期待した俺が馬鹿だった。ごめんな。」

「……なんかむかつくけどまあいいわ」

「で、その後どうなったんだ?」

「しばらく黙ってたんだけど、答えないと逮捕するって言われて、つい」

「つい?」

「盗賊たちは私が付いた時には倒れてた、この剣はダンジョンで拾ったって……」

「つい、じゃねぇぇぇ!? なんだよダンジョンって! どっから出てきた!」

「だって、お宝といったらダンジョンでしょ! ロマンでしょ! 男ならわかるでしょ!」

「わかるか! 大体こんなところにダンジョンが……あるのか? もしかして」

「はぁ? あるわけないでしょ?」


 こいつはぁぁぁぁ!?

 ……もういいや。こいつと関わるだけ時間の無駄だ。

 よく考えたら別にここに留まる必要もないし。

 ロッテは男だったし。

 さっさと町へ移動しよう。

 フィーネでもここまで来れたんだ。

 道なりに歩けばどっかつくだろ。

 俺は立ち上がるとドアをくぐり玄関のほうへ歩き出す。


「ちょっと! どこ行くのよ!」

「いや、よく考えたら俺関係ないし。とりあえず町にでも行こうかなと」

「待って、ねえお願いだから!」

「お願いされてもな、すみません。力になれなくて……」

「なんでそんな他人行儀なのよ! 困るの、逮捕されたら保釈金払えないの! 一生臭い飯なの!」

「そうですか、大変ですね」

「お願い、全財産上げるから、何でもするからぁぁぁぁ!?」


 ピタッ。

 何でも、という言葉に足が止まる。

 何でもの中に結婚は入るのだろうか。

 しかしこいつと結婚……。

 いや、結婚しなくても友達を紹介してもらうという手もあるんじゃないだろうか。

 いくら残念系冒険者とはいえ、友達の一人や二人はいるだろう。

 やっぱりできれば女と結婚したい……それもまともな。

 それに魔法を身につけるいい機会だろうとも思う。

 フィーネは一応魔法の知識はあるみたいだし、ダンジョン造りを口実にすればいくらでも教えてくれるだろう。

 ……ダメだったら逃げればいいし。


「しかたないな……」

「じゃあ!?」

「ああ、造ってやるよ、ダンジョン。で、いつまでに造ればいいんだ?」


 魔法を覚えるのも入れて、簡単なダンジョンだったら一か月……いや、二か月くらいか?

 頭の中でスケジュールを立てていくが、続くフィーネの一言でそれはもろくも崩れ去った。


「明日」

「できるか!?」

「そこをなんとか」

「いや無理だろ。ダンジョンどころか玄関も造れんわ!」

「できる! あんたならきっとできるわ! わたしはそう信じてる!」

「信じられても。……大体、なんで明日なんだよ」

「だってすぐに調査団を派遣するっていうんだもん、しょうがないじゃない……」


 せめて上手く誤魔化して一週間先にしてもらうとか……いや、こいつに期待するのはやめよう。

 しかし……一日でダンジョンか。

 城だったら歴史の教科書で見たことあるけど、ダンジョンは無理だろ……。

 ちゃんと構造を考えないといけないし、お宝だって準備しないといけない。

 どんなにシンプルなダンジョンだって一週間はかかるだろう。

 よし、逃げよう……。

 そう決心して歩き出そうとした俺の頭に、ふと閃きが走った。

 いや、いけるか……?

 まあ試してみる価値はあるだろう。

 ……逃げる準備だけはしとくけど。

 

 涙目でこっちを見上げているフィーナと、面白そうにこちらを見ているロッテ。

 俺は閃いたそれが実現できるか確認すべく、彼女たちに話し始めた。


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