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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
2.結婚できないダンジョンマスターが恋に堕ちるまで
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19.やけくそという名の力技


「くっ!?」


 勢いよく振り下ろされた斧を、剣士が何とか受け流す。

 受け流された斧はその勢いと重さで石畳をえぐり、地面へと食い込んだ。

 そこへ――


「どいて! アイスボルト!」


 飛来した氷の魔弾が牛の頭をした男を氷漬けにする。

 さらに、後ろから勢いよく駆けてきたヒーラーが


「うぉぉぉぉ!」


 全体重を乗せてメイスを振り下ろす!

 ごしゃ。

 氷が砕ける音と共に、牛の頭と人の体が分かれ離れになって地面へと落ちていった。


「まさか、ミノタウロスまで出るなんて・・・・・・」

「珍しいのか?」


 魔法使いの声に、地面に転がった牛の頭を見ながらヒーラーが疑問の声を上げる。


「珍しいわよ! ・・・・・・まあ、このダンジョンじゃ何が出ても不思議じゃないかもだけど」


 怒ったように声を荒げる魔法使い。

 剣士はその言葉に軽く肩をすくめると、


「ま、何にせよゆっくり話してる暇はなさそうだ」


 今度は二体。

 前と後ろから、挟み撃ちだ。


「援護を頼む!」

「任せといて!」


 言って札を取り出す魔法使い。

 その言葉を背に受けて、剣士とヒーラーはそれぞれ目の前の敵へと間合いを詰めていく。


「アイス――きゃっ!?」

「どうしたっ!?――くっ!」


 後ろから聞こえてきた悲鳴に振り返ろうとした剣士だったが、迫る斧がそれを許さない。


「くそっ!」


 剣士は毒づきながらも振り落とされる斧をかわし、ミノタウロスの丸太のような足に一撃を加える!

 ――しかし、ミノタウロスは切られたことに気づかないかのように、再びその手にした斧を、今度は下から上へと剣士の顎を割るように斬りかかってきた。

 ・・・・・・結局、剣士が後ろを振り返ることができたのは、それから数分後のことだった。


◇◆◇◆◇


「おーい!」


 剣士とヒーラーの声が、誰も居ない通路に響く。

 二人は周囲の通路だけでなく、その床や壁にも注意して魔法使いを探していたが、しかし彼女を見つけることはできなかった。


「くそっ、早く、早く見つけないと・・・・・・!」


 言いながら壁を叩き、通路の奥へと駆け出そうとする剣士を、しかしヒーラーの手が遮った。


「落ち着けって」

「でもっ!」

「いいから」


 ヒーラーはそのごつい腕を剣士の首へと回すと、頭を並べて言葉を続けた。


「嬢ちゃんも一端の冒険者だ。ミノタウロスの一匹や二匹にやられるたまじゃないだろ?」

「それは・・・・・・そうですね」

「それに、だ」


 ヒーラーは通路の奥から手前までを指で刺しながら、


「俺が後ろ、お前さんが前に居て、どっちも姿を見てないんだから、その間で何かが起きたって考えるのが筋だろ?」

「確かに・・・・・・」

「ありうるのは、例えば落とし穴に落ちて、フタが既に戻ってる。あるいは――」


 ヒーラーの言葉が終わるよりも早く、四つん這いになって床を叩き始める剣士。

 ヒーラーも軽くため息をつきながら、床を足で踏みながら歩くが・・・・・・


「見つからねぇな」

「一体どこへ・・・・・・っ!」


 瞳に涙さえ浮かべながら、剣士は壁に額をこすりつける。

 その様子を見かねてか、ヒーラーは荷物から水の入った革袋を取り出して剣士に渡そうとするが――


「とりあえず水でも飲んで落ち着けや」

「落ち着いてられますか!」


 激高した剣士はその手を振り払い、落ちた革袋から流れ出した水が床を湿らしていく。


「お前な・・・・・・」

「水・・・・・・、そうだ!」


 剣士はポーチから掴めるだけの札を取り出すと、


「ウォーターボルト! ウォーターボルト! ウォーター・・・・・・」

「うおっ!?」


 狂ったように魔法を連打していく!

 放たれた水が床を、壁を濡らしていき・・・・・・


「あった!」


 燃え尽きた札が剣士の足元で小さな山を作り始めたころに、剣士が壁のある一点を見て叫んだ。

 そこには、目を凝らさないとよく見えない程度に、しかしくっきりと四角い溝が水によって浮かび上がっていたのだった。

 そして床には同じく、半円状の薄い溝。


「なるほどな、そういうことか」


 感心したように声を上げるヒーラー。

 剣士は床の溝の内側に入らないように気を付けながら、壁の四角い溝を力強く叩いた!

 すると壁が、床が音もなくすっと回転し――


「遅い!」


 札を握りしめ、目に薄っすらと涙を浮かべた魔法使いが剣士の胸へと飛び込んだのだった。


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