18.平穏という名の落とし穴
「なんか、いかにも遺跡って感じね・・・・・・」
ゆっくりと、あたりを警戒しながら通路を進む剣士たち。
その視線の先には、いかにも遺跡といった感じの石造りの通路が広がっていた。
「なんか、かえって不気味だな」
「そうですね・・・・・・」
ヒーラーの言葉にうなずく剣士。
ちなみに小回りの利く剣士が先頭で、重鎧を纏ったヒーラーがしんがり。魔法使いはその二人に挟まれる形で真ん中を歩いている。
「にしてもゴブリンが弓を使うなんて・・・・・・」
「噂をすればなんとやら、ってか」
通路の先で蠢く複数の影。
剣士は一気に間合いを詰めると――
「ふっ!」
先頭の一体の首を刎ねる!
そしてその勢いのまま横をすり抜けると、ゴブリンの集団の後ろ側へと回りこんだ。
その後を追うように、
「ライトニングボルト!」
放たれた雷が前衛のゴブリンたちを打ち据える!
残されたゴブリンは慌てて矢をつがえるが、しかしその矢を放つよりも早く――剣士の一閃によって命を落としていたのだった。
「ふう」
「なんだ、もう終わりか?」
小走りで追い付いてきたヒーラーが残念そうな声を上げる。
視線が合い、口元を緩める剣士と魔法使い。
「ま、なんにせよこの階は楽勝そうだな」
「そうだといいんだけどね・・・・・・」
歩きながらのヒーラーの楽観的な言葉に、魔法使いは不安げな声を返した。
「まあ、緊張ばっかりしてても神経が持たな――」
「あれ? ちょっと!」
途中で切れた言葉に、慌てて後ろを振り返った魔法使い。
しかし、その視線の先には居るべきはずのヒーラーの姿は消えていた。
「どうした?」
「さっきまで居たのに・・・・・・」
言いながら魔法使いは札を構え、困惑した表情を浮かべながらも辺りを警戒する。
剣士も魔法使いと背を合わせ、あたりを見渡すが――
「おーい、ここだ。ここ」
ヒーラーの声は意外なところから聞こえてきた。
「・・・・・・何やってるの?」
「何って、見りゃわかるだろ」
声のした方――つまり、通路の床の更に下、平たく言えば落とし穴に落ちかけているヒーラーを見下ろして、魔法使いが気の抜けた問いかけを投げかけた。
ヒーラーは呻くようにその問いに答えると、縁に捕まる腕をぷるぷると震わせながら、
「いいから早く引き上げてくれ!」
「あ、ああ!」
剣士と魔法使いはヒーラーの腕をつかむと、思い切り体重をかけて床の上へと引き上げる!
ヒーラー自身、筋肉の塊でそれなりの重さだが、重鎧が更にその作業を難しいものへとしていた。
――数分後。
「・・・・・・死ぬかと思った」
「おかげでこっちも死にそうよ・・・・・・」
息も絶え絶えな様子で呻く魔法使い。
彼女が落とし穴を覗くと、滴って落ちた汗のしずくが、落とし穴の底で鈍く輝く槍の穂先に当たって砕けた。
「やっぱりこのダンジョン、一筋縄ではいかねぇな」
「ここからは一層気をつけて進もう!」
場の空気を明るくするためか、元気よく声をかける剣士。
しかし――
「その前に一休みしましょう・・・・・・」
「賛成」
疲れ切った魔法使いとヒーラーは床に座り込んで、カバンから水を取り出したのだった・・・・・・。
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