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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
2.結婚できないダンジョンマスターが恋に堕ちるまで
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4.ガス欠という名の障害


「ご主人様!」

「なんだ、ロッテか……」

「なんだ、じゃありませんよ!」

「なんだよ、俺は今忙しいんだよ。おい、引っ張るなって――」


 まだ日は明るい。

 何なら今日のうちに結婚相手を見つけて結婚式まで上げてしまおうというプランがあるのだ。

 こんなところで時間を食ってる暇はない。

 そう思ってロッテの手を振り払おうとするが、しかし思いのほかがっちりと掴まれていて振りほどくことができなかった。


「わかった、話を聞くから引っ張るなって」

「だからご主人様、大変なんですってば!」

「いや大変だけじゃわからんし」


 ロッテはあたりを見渡すと、人に聞かれるのを警戒するように俺の耳元へ顔を寄せてささやいた。


「ダンジョンが――壊れました」


◇◆◇◆◇ 


「おい、どういうことだ? ダンジョンが壊れたって」

「あれ?」


 あの後、俺とロッテは慌ててダンジョンへと舞い戻っていた。

 映像をロビーの壁に映し出してダンジョンの中を見てみるが、冒険者が全く居ない以外は何の変りもない。

 いつも通りモンスターが沸いてはダンジョンの中を歩き回っていた。


「でも、さっきまで仕掛けが一切動いてなかったんですよ? モンスターも全然いなかったですし」

「って言われてもな。動いてるし」

「ですね……」

「ふっ、これだから馬鹿は……」

「あん?」


 やれやれ、という感じで肩をすくめながらフィーネが会話に割り込んできた。

 馬鹿に馬鹿と言われるとは……。

 しかし、俺が何か言い返すよりも早く、フィーネがびしっと俺に指を突きつけてくる。


「原因は、あんたよ!」

「俺?」

「そう、大体このダンジョンの仕組みが何で動いてるか、考えたことあるの?」

「何って、魔力……あっ!?」

「そういうこと」

「どういうことなんです?」


 会話についていけてないのか、ロッテが疑問の声をあげる。

 それを見てドヤ顔を浮かべるフィーネだったが、すぐにそれは苦痛によって塗り替えられた。

 ――まあ、ロッテに肘打ちされただけだが。


「つまり、こういうことだろ? ダンジョンの仕組みは魔力で動いている。じゃあその魔力は一体どこから来ているのか」

「どこからって……なるほど!」

「そう、俺だ。つまり、俺が居ないとダンジョンの仕組みは止まってしまうってことなんだな……」

「そういうこと」


 納得した顔のロッテに、若干引きつった笑みを浮かべて頷くフィーネ。

 しかし、これは厄介だな……。

 要は俺がダンジョンにいないと仕組みが止まってしまうわけで、つまり俺はダンジョンから長期間離れられない――。


「ちなみに、どれくらいで仕組みが止まったか覚えてるか?」

「大体二日くらいでしょうか。三日目からは完全に止まってしまっていましたね」

「二日か……」


 てことは、一応丸一日くらいは開けても大丈夫だが、それ以上は危険ということか。

 二つ、問題がある。

 一つは街で女性と仲良くなっても、泊まったり旅行に行ったりできないということだ。

 もう一つは、もし今後誰かと結婚したときにダンジョンから離れられないということだ。

 まあ、収入源がダンジョンしかないので完全に離れるわけにはいかないが、かといって結婚したらダンジョンじゃなくてちゃんとした家でいちゃいちゃして過ごしたい。

 他にも問題はあるだろうが、大きいのはこの二つかな。

 しかしどうしたものか……。


「なんかこう、魔力を貯めとくとかできないのか?」

「できなくはないけど……そのためには魔力球が必要ね」

「魔力球?」

「ええ、魔力を貯めておくことができるんだけど、高いのよねー。わたしも昔欲しくて探したんだけど全然手が出なくて……」

「どれくらい高いんだ?」

「そうね、どれくらいの魔力まで耐えられるかの容量で値段は決まるんだけど……魔法使い一人分の容量でも、家が買えるくらいの値段にはなるわね」

「ましてや俺の魔力に耐えられるものってなると……」

「想像したくもないわね」


 下手すると国家予算くらい軽くいくんじゃないだろうか。

 まあ、とりあえず俺の持ち金だと到底厳しいということはわかった。

 勇者からせしめた金がいくらかは残っているので、それで買えればと思ったんだが……。

 

「まあ、とりあえず今日はここにいないとダメか……」

「じゃ、わたしたちは一回寝てくるわね」

「それでは、また」


 言って自分の部屋に戻っていくフィーネとロッテ。

 折角結婚相手を探せると思ったのに……。

 とはいえ、唯一の収入源であるダンジョンが動かなくなるのもマズい。

 なんかこう、どっかに落ちてないかな魔力球。

 そんなことを考えながらダンジョンの入口を見ていると――


「お困りのようね」


 いつの間に来たのか、聞いたことのある声に酒臭い吐息。


「何しに来たんだよ」

「ちょっと人を……ね。元気してた?」


 そう言って女――千歳は飲みかけの酒瓶をどんっと机の上に置いたのだった。


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