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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
1.結婚できないダンジョンマスターが勇者を倒すまで
48/107

49.企みという名のお楽しみ


「これお願いします」

「分かりました……が、随分面白いことを考えますね」

「そうですか? よかったら貴女もぜひ……」

「いや、わたし結婚してるんで」

「そう、ですか……」

「あんたね……」


 必殺スマイルで誘いをかけた俺だったが、あっさりと流されて早速くじけそうになる。

 いや、まだこれからだ!

 気合を入れなおす俺を冷ややかな視線で見つめるフィーネ。

 

 店の安全を確保してから一週間経った今、俺は冒険者ギルドに来ていた。

 受付の人が書類を受け取ってしてカウンターの奥に引っ込んでいくのを見送りながら考える。

 俺もいつか言ってみたいなー、いや俺結婚してるんで。

 考えるうちに想像が膨らんでいく。

 可愛い女の子たちに腕を掴まれてお茶に誘われて……そこで決め台詞、いや俺結婚してるんで。

 嫁はそれでさらに俺に惚れ直し、絆をさらに深めちゃったりして……。


「あの……終わりましたよ?」

「ちょっと!」

「はっ!? ああ、ありがとうございます」


 フィーネに肘で小突かれて我に返る。

 やばい、完全に妄想の世界にトリップしてしまっていた。

 心なしか受付の人の目線も冷たい……。


「でも、気を付けてくださいね。怪我人とか出たら……」

「大丈夫ですって」

「でも……」

「ここに小さく、怪我や死亡は自己責任となります、って書いてあるんで」

「ならいいんですけど」


 いや、いいのかそれ。

 自分で言っておいて何だが、適当だなおい。


「まあ、冗談はともかく本当に気を付けてくださいね。ただでさえ中央に目をつけられてるんですから」

「気を付けますって」


 軽く手を振って俺はカウンターを後にした。

 幸いにというべきか、この冒険者ギルドの人たち――というか、役人全般何だろうか、は中央に対してあまりいい感情を持っていないようだった。

 本来であれば俺のダンジョンも中央に正確に報告されていれば、すぐさま立ち入り禁止になって中央の管理下に置かれるのだろうし。

 しかし、どう報告されているのかは知らないがその気配は一向になかった。

 ダンジョンのおかげで町への来訪者も増えてきているようだし、利用できる間は利用しようということだろう。


「でも、ちょっとやりすぎたか……?」

[何をいまさら、って感じだけどね」

 

 掲示板に貼られた紙を見ながら俺とフィーネは呟いた。

 そこには俺のダンジョンの特集コーナーが組まれており、掲示板の多くのスペースを占有していた。


『不思議なダンジョン、不思議な巻物!

 一説によると魔王の訓練場とも噂されるこのダンジョン。

 そのダンジョンに最近新しく出現した第三層、死者の園。

 不死者がうろつくその階層は……

 ……

 …

 しかし、驚くべきはその褒章品である。

 なんとこのフレッシュゴーレムを倒した冒険者たちによると、なんとも不思議な巻物がドロップした。

 その巻物に書かれた文字を読み上げると、なんと剣に切れ味向上の刻印が刻まれたとのこと。

 一時的に切れ味を向上させる呪文は珍しくないが、それを刻印として安定させるには少なくとも王宮魔術師10人分の魔力が必要とみられ……

 ……

 …


「あれってそんなに凄いものなんだな」

「ふふん、そうよ凄いのよ!」

「いや、自慢されても。つか分かってたなら止めろよ!」

「まさか本当にできるなんて思わないじゃない!」

「……まあ、今更だけどな」

「……そうねー」


 こいつの魔法だけは天才な部分と、俺の魔力があれば大抵のことはできちゃうんだよな……。

 二人ともこっちの世界の常識がないからどこまでがやりすぎなのかよーわからんし。

 まあ俺にはこいつと違って元の世界の常識は持ってるし、こっちの世界の常識も身に付けつつはあるが。


「で、それはそれとして。本当にやるの? これ」

「当たり前だろ?」


 事務処理が終わったのか、俺が預けた紙を受付の人が掲示板に張り出していく。

 その紙を訝し気な表情で眺めながらフィーネ。

 反対に自信満々の表情で俺は答えを返した。


「なんかろくでもないことにしかならない気がするんだけど……」

「ふっ、お前の残念な脳みそで理解できるとは思ってないさ」

「あんたね……」


 半眼で睨んでくるフィーネの背を押して、俺は冒険者ギルドの出口へと歩き出す。


「ほら、行くぞ!」

「行くって何処へ?」

「買い物に決まってんだろ?」

「やったー!」

「いや、お前ただの荷物持ちだからな」


 便乗して色々放り込むつもりだろう、満面の笑みを浮かべて駆け出すフィーネ。

 俺は軽くため息をつくと――しかしこれから起こることを想像して顔がにやけてくるのを止められなかったのだった。


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