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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
1.結婚できないダンジョンマスターが勇者を倒すまで
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28.全滅という名の終わり……?

 魔法陣が消えた後に、黒い煙が残される。

 冒険者たちが見つめる中、それは現れた――。


「あれは……」

「なんだ、ありゃ……」


 煙が晴れた後には、数匹の小さい、赤く光るスライム。

 そして――筋肉ではちきれんばかりの体に、冒険者たちを睨みつける燃えるような瞳。

 しかしその体は五人の大人を縦に並べたよりも高く、その腕は大人の胴を二人分合わせたよりもはるかに太かった。

 巨人が手にした棍棒を地面に打ち付けると、巻き込まれたスライムが砕けて四散する。


「昔、本で読んだことがある。フレイムタイラント……サロメ火山の聖地の守護者……なんでこんなろころに!?」


 魔法使いが巨人を見ながら呟く。

 恐怖からか、疲労からか、その足は立っているのが不思議なくらいに震えていた。

 誰のものともわからない汗が床を湿らして色を変える。


「グァォォォォゥ!」


 巨人が棍棒を振り上げて咆哮する!

 その下では砕け散ったスライムが集まって元に戻ろうとしていた。


「ひっ!?」


 恐怖で息を飲む音が響く。

 ある冒険者は必死で扉を開けようと剣で斬りかかるが、しかし木でできているように見える扉は傷一つ付かなかった。


「どうなってんだよこれっ!?」


 冒険者たちが混乱する間にも、巨人は、スライムはゆっくりとその距離を縮めていく。

 絶望からか、一人の脚から力が抜けて膝が地面に――つく前に、その冒険者は吹っ飛んでいた!


「びびってんじゃねぇ!」


 殴り飛ばしたヒーラーが声を張り上げる。

 恐怖に染まっていた冒険者たちの表情が、今は驚きに塗り替わっていた。


「どっちみちあいつら倒すしかねぇだろうが! ……だったら、さっさと片付けてお宝で祝杯あげようや」

「……そうだな」


 ヒーラーの言葉に、剣士がぎこちないながらも笑顔を浮かべて剣を構える。

 それに釣られて、他の冒険者たちもモンスターたちに向かって各々の獲物を構えていく。


「俺があのデカブツを引き付ける。その間にスライムを叩き潰せ!」

「おう!」


 ヒーラーの声を背に、冒険者たちはスライムに向かって駆け出していった――。


◇◆◇◆◇


「おらっ!」


 剣士が掛け声と共に繰り出した一撃が、スライムを両断する!

 しかし――


「くそっ、剣が効かない――!?」


 分断されたスライムは、すぐにくっついて元の形に戻ってしまう。

 スライムはそのまま膨らんでいき炎を吐き出そうとする――が、それよりも早く


「これならどう、ライトニングボルト!」


 スライムの体を電撃が襲う!

 スライムはやはり砕け散り――しかし今度は元に戻ることはなく、地面に溶けていった。


「魔法よ! こいつら魔法が弱点よ!」

「わかった!」


 その声に応じて他の冒険者たちも、剣で、メイスでスライムの動きを止め、魔法で止めを刺していく。

 そして最後の一匹が氷漬けにされて砕け散った。


「おっさん、大丈夫か!?」

「見てわかんだろ!」


 必死で走り回るヒーラーに、同じく走りながら剣士が問いかける。

 目立った外傷はなく、ただその姿は汗にまみれていた。


「後は俺たちに任せろ!」

「ああ、俺もすぐに行く」


 その言葉と同時に、剣士は踵を返すと巨人に向かって走っていく。

 巨人の下からすくい上げるような一撃を転びそうになりながらも何とかかわし――

 ザシュッ!

 剣の一撃をその巨大な足に叩き込む!


「いけるぞ、この調子だ!」


 小さいながらも確かな一撃。

 それに調子づいたのか、他の冒険者たちも巨人の攻撃をかわしながら着実にその肉を削っていく!

 さらに――


「ライトニングランス!」

「アイスボルト!」


 放たれた雷が、氷が巨人の体を穿つ!

 苦悶の叫びを上げる巨人。

 巨人はその巨体をよろめかせ――そのまま勢いよくその腕を伸ばすと、魔法使いをその手で掴んだ!


「きゃっ!?」

「くそっ!」


 掴まれた魔法使いを救うべく剣士が巨人の足元へと駆け寄るが、そこを棍棒で一撃され勢いよく吹っ飛んでいく。

 彼は地面に叩きつけられると、そのまま地面に赤い染みを作って動かなくなった。


「くっ、ライトニングボルト!」


 魔法使いが魔法を放つが、しかし現れた小さな雷は巨人に当たるよりも早く霧散した。

 巨人がその握る手に力を込めると、何かが砕ける音が部屋に鈍く響いていく。

 ――そして、巨人は動かなくなった魔法使いをゴミでも捨てるかのように投げ捨てた。


「なんだよ、なんなんだよこれ……」


 冒険者の震える呟きがこぼれて消える。

 そこからは早かった。

 人数を減らし、恐怖に染まった冒険者たちが対抗できるはずもなく。

 一人、また一人と棍棒に砕かれ、あるいは踏みつぶされその命の灯を消していく。

 そして――


「こんなことなら、素直に謝っとくんだったな……」


 体力が尽きたのか、あるいは怪我でもしたのか、しゃがみこんで動かないヒーラーが呟く。

 その手には妻か娘か、fromマリアと掘られたペンダントが握られていた。

 それを遮るように影が彼の体を覆い――……。


 次の瞬間、冒険者たちは全滅した……。



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