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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
1.結婚できないダンジョンマスターが勇者を倒すまで
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18.探索という名の蹂躙

 ドゴァ!!

 音を立ててゴブリンが壁に激突する。

 ゴブリンはずるずると壁から地面にずり落ちていくと、そのまま動かなくなった。


「ふう、こんなもんか」


 俺は組んでいた手をほどき、軽くため息をつく。

 と同時に、ゴーレムも戦闘態勢を解いて腕を下した。


「言っとくけど、凄いのはあんたじゃなくて札を作ったわたしなんだからね!」


 ゴブリンの死体から耳を回収しつつフィーネ。

 部屋には他にも7、8体のゴブリンが倒れていた。


「しっかし、他のダンジョンってこんなんなんだな」


 つぶやいてあたりを見渡す。

 全体的に石造りの部屋に通路。

 あたりに生えた苔や草が、その長い年月を物語っていた。

 ――ここはサロスダンジョン。

 町から半日ほどの山の中にあった。

 まあ、実際は途中からゴーレムに乗ったので一時間ほどでついたが。

 おかげでいまだにお尻が痛い。


「そうねー、お宝も全然ないし、なんだかなーって感じだけど」

「まあ散々探索されつくしてるだろうしな」


 見つけた記事によると、発見されたのは十年以上も前。

 昔は話題になり多くの冒険者が押し掛けたらしい。

 階層も深く、五十階層以上の深さがあるとか。

 もっとも今では訪れる冒険者も少なく、ゴブリンなどのモンスターが住処としているだけだった。

 もちろんお宝も全て持ち去られており、たまに宝箱を見つけてもすでに空になっていた。


「つーまーんーなーいー」

「ほれ、さぼってないで働く働く」

「だってお宝全然ないじゃない」

「お宝よりまず目先の金だ」


 俺はそう言うと、さらなる獲物を求めて次の部屋へと歩いていく。


◇◆◇◆◇


 ゴーレムの体に木でできた槍が襲い掛かる!

 しかし――槍は岩でできたその体にかすかな傷をつけただけで、折れ砕けていった。


「なんだかな、宝がなくて罠だけ生きてるっていうのもな」

「むなしいわねー」


 先を歩くゴーレムが罠をことごとく踏んでは潰していく。

 俺たちはその後をゆっくりと歩いていた。


「まーもっと奥に行けばお宝もあるんだろうけどな」

「そうね……」


 俺たちがいるのはまだ3階層。

 現れるモンスターもゴブリンや洞窟コウモリ、ダンジョンワーム――巨大ダンゴムシみたいなやつくらいで、ゴーレムが振るう一撃で次々と駆逐されていた。

 まあそれはそれで金になるからいいのだが、こうも楽に進める状態が続くと飽きてくる。

 ちなみに戦闘は全て俺――というかゴーレム任せで、フィーネはひたすら収集に回っていた。

 ……これだったらロッテを連れてきても大丈夫そうだな。


「つかここに来た目的、忘れてないだろうな?」

「忘れてないわよ、お宝でしょ?」

「いや違うだろ」


 ダンジョンに来たのには二つの目的があった。

 一つは他のダンジョンについて知ること。

 ダンジョンの構造、罠、出現するモンスター。

 他のダンジョンで使えそうなところはうちのダンジョンに取り込んでいきたい。

 そしてもう一つの目的――それを果たすには、もっと奥に行く必要がありそうだった。


 そんなことを考えながら歩いていると、下へと下る階段が見えてくる。

 やや大きな部屋に、下へと続く大きな階段。

 しかし、そこには今までとは違うものがあった……。


「……なんだこりゃ」

「注意書き?」


 そう、下へと下る階段……その横に、大きな文字でこう書かれていた。

 『許可なきものの立ち入りを禁ズ。

  フィルフォード王国 聖遺物管理部』

 よく見ると、下の階へと続く空間にうっすらと青い膜のようなものが見えた。

 試しにゴーレムを進ませてみる。

 階段を降りようとするゴーレム。

 しかし、何か柔らかいものに阻まれて進むことはできなかった。


「んー……どうしたもんかな」

「壊しちゃえば?」


 悩む俺に、軽い口調で言うフィーネ。

 確かに俺が全力で魔法を放てば大抵のものは破壊できるだろうとは思う、多分。

 ただその場合、色々面倒なことになりそうだった。

 そもそも力加減がわからない。

 下手に全力で撃ったらダンジョンが崩壊して生き埋め――なんていうことも考えられる。

 また俺が壊したということがバレたら、場合によっては死刑も免れないだろう。

 ――包帯で隠している右手の紋章を触りながら考える。

 つい忘れがちになるけど、俺って魔族寄りの人間なんだよな。

 あんまり目立たないようにしないと……。

 焦る必要はないし、ゆっくり進めればいい。


「ま、今日のところはこれで帰るか」

「えー、お宝は?」

「どんだけお宝好きなんだよ……。ほら、もう結構いい時間だし、ロッテも待ってるだろ?」

「……そうね」


 それに最低限の目的は達成したし、もう一つの目的はまた来たときでいい。

 まずは奥に進む許可を貰うこと、あるいは他のダンジョンの探索。

 そのためには装備やまともな味方を揃えないと……。

 やることはたくさんある。

 金はない。

 結婚もできない。


 けどまあ、結婚のためにはやるしかない。

 それに、冒険から始まる恋だってあるかもしれないし。

 ……まずは金をどうにかしないとな……。

 そんなことを考えながら、俺は今まで来た道を引き返し始めた……。

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