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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
1.結婚できないダンジョンマスターが勇者を倒すまで
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13.ダンジョンという名のアトラクション

「ふむ……封印の割には大したことなかったな」


 ダルトン――調査隊の隊長は、無表情につぶやいた。

 その後ろには五人の隊員。

 調査を終えて疲れたのか、剣に槍、杖……それぞれの獲物を杖代わりに退屈そうに立っていた。

 ちなみに、全員男だ。


 ――なんとかダンジョンを造り終えて迎えた七日目の朝。

 やってきた調査隊と共に、俺たちは封印が解けたダンジョンの中を調査したのだった。

 調査は半日もかからず終わり、


「だが興味深い。一般的なダンジョンとは大分違っている」

「ふふん、どうよ!」


 胸を張って答えるフィーネ。

 なんでお前が偉そうにするんだ……。

 いや、それよりも。

 ちょっとやりすぎたか……?

 俺はダンジョンの入口を見ながら少し後悔していた。

 造り始めると思いのほか楽しく、ついつい作りこんでしまった。

 あまり目立つと俺が造ったことがバレそうで怖い。

 まあ、一般的なダンジョンとやらを知らなかったので仕方ないか……。

 他のダンジョンを見にいく時間もなかったし。


「で、これで調査は終わりなんだろ?」

「ああ、そうだな」


 よし、乗り切った!

 明日は町へ繰り出して出会いを探すぞ!

 結婚できない以上、こんなところに留まる理由もない。

 ……いや、その前に金稼ぎか?

 考えてみればこっちの世界の金は持っていないし、館にあったものはダンジョン造りで全部使ってしまった。

 住むところも館にいる分には困らないが、町へ行くとなると金がいる。

 それに婚活するにも金は必要だろう。

 そのためにはまず……。

 頭の中で今後の計画を立てる俺。

 しかし――


 「度々で悪いが、頼みがある」


 そんなことはお構いなしに、ダルトンは俺にある話を持ち掛けたのだった……。


◇◆◇◆◇


「……なんだこれ?」

「さあ……?」


 剣士だろう、抜き身の剣を持った男の問いかけに、しかし女は疑問で答えた。

 二人の視線の先には台座の上で淡く光を放つ宝珠。


「お宝か……?」


 男は剣を持っていない方の手で宝珠に手を触れる。

 と同時に、宝珠の光が一瞬強くなり――。

 ガラララ……ガシャン!?

 光が消えると同時に、部屋の入口が塞がれる!


「わ、罠……!?」


 女が上げた不安の声、それが消えるよりも早く部屋の床にはいくつもの魔法陣が輝き始めていあた。

 魔法陣は一瞬だけ強く光を放つと黒い煙を残して輝きを消した。

 そしてすぐに煙が晴れると同時に――それは姿を現した。


「ゴブリン!?」

「なんだよこれ!?」


 叫びうろたえる二人。

 そんな二人をゴブリンたちは睨み、唸り声を上げて威嚇する。

 どうやら二人のことを敵と認識したようだった。

 あらわれた五匹のゴブリンのうち、一匹が奇声を上げながら手に持った棍棒で男のほうへと襲い掛かる!


「うおっ!?」

「ライトニングボルト!」


 不意を打たれて固まる男。

 しかし棍棒が男を打ち据えるその瞬間――女の放った稲妻の魔法が襲い掛かってきたゴブリンを打ち倒す!


「べ、別にあんたを助けたわけじゃないんだからね!」

「ああ、ありがとな」

「なっ……!?」

「よし、残りも一気に片付けるぞ!」


 男はそういうと剣を構え、ゴブリンに向かって切りかかったのだった……。


◇◆◇◆◇


「くっそなんだこれ、なんかむかつく!」


 俺はそう声を上げると、床に大の字で転がった。

 なんだよあれ、完全に惚れてるじゃねぇか、ツンデレじゃねぇか!

 嫉妬で俺が転がりまわる間にも、ゴブリンたちは一匹、また一匹と数を減らし、ついに最後の一匹が倒されてしまう。

 と同時に、塞がれていた部屋の入口が再び開かれる。

 男と女は顔を合わせると次の部屋へと歩みを進めたのだった。

 手をつなぎながら……。


「ああもう、なんでこんなの見なきゃならねぇんだよ!」


 俺が叫んで壁を叩くと、そこに映し出されていた映像――先ほどまで男女が居た部屋の――が音もたてずに消える。

 そう、俺が今いるのは館の地下室。

 俺が魔法で作った秘密基地……ではなく、管理室だった。

 ダンジョンの中には小さな宝珠が要所要所に仕込まれており、透視の魔法を使うことでそこからの映像を映し出すことができるようになっていた。


 せっかく造ったダンジョン、潜った人たちがどんな反応をするか見たくてつけた機能だったのだが……。

 まさか初っ端からあんなものを見せつけられるとは。

 無駄に精神が削られた……。


 しかし魔法って便利だよなー。

 壁に再び映像を映し出しながら考える。

 先ほどの罠のように、条件によって発動させることもできるし、呪文の書き方によって色々なアレンジができる。

 そういう意味ではプログラミングに似ている気がする……。

 まあフィーネ曰く、魔法とは現実の構成を呪文で上書きするものらしいので、構成を書くという意味では似たようなものなのかもしれない。


 また、呪文は必ずしも紙に書く必要はなく、他のもの――例えば壁とか、にも刻むことで同じことができる。

 紙がよく使われるのは、単に折りたたんで札という形で持ち運べるからとのこと。

 それを聞いた俺は、部屋に呪文を刻むことでダンジョンの管理をしようと思い立ったのだった。

 ……いやまあ、元々は適当にそれっぽいものを作って終わりにするつもりだったのだが、ついつい面白くて作りこんでしまった。

 そもそもここに長居する気もなかったので、ダンジョンも管理するつもりはなかったし。


 とはいえ最終的に役に立ってるから結果オーライか。

 これも金儲けのため、結婚のためでもあるし……。


「さて、あっちの方はどんな感じかな」


 俺が壁を叩くと、再び映像が切り替わった。

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