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不思議なダンジョンの造り方~勇者は敵で、魔王も敵で!?〜  作者: さわらび
2.結婚できないダンジョンマスターが恋に堕ちるまで
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42.血という名の美容液

「疲れたー・・・・・・」


 ドサッと文字通りベットに倒れこみ、呻く俺。

 結局帰りは真夜中――感覚的には夜中の一時とか二時とかだろうか。時計がないからよく分からないが。

 何とかポータルから冒険者ギルドまで戻ってきたものの、当たり前だがそこには誰もおらず・・・・・・リーニャ宛に「手に入れた」というメモを掲示板に貼って帰ってきたのだった。

 あとはゴーレムが担いだ袋から漏れたサメの体液とかも残してきたというか、垂れてしまったが。

 ――真夜中で目撃者がいなかったのは幸いだった。


「しかし、今度ばかしはヤバかったな」


 一回、ちゃんと魔法を学んだ方がいいのかもしれない。

 最初の頃よりも制御はできるようになってきているが、それはどちらかというといかに威力を絞って撃つかという方向である。

 そうではなくて、いかに高い威力で――かつ自爆しないように撃つか、的な?

 けどまあ、リーニャと結婚したら平和な暮らしが待っているわけだし、必要ないか・・・・・・。

 そうそうドラゴンだの勇者だのと戦うこともないだろうし。


「くぁ・・・・・・」


 薄れゆく意識の中でせめてポーチを外そうとするが、それよりも早く腕から力が抜けていき――


「札、補充しないと――」


 呟いたのは現実か、あるいはすでに夢の中か・・・・・・。

 枕に顔をうずめたまま、俺は眠りへと落ちていったのであった。


◇◆◇◆◇ 


「ういー」

「あ、おはようございます!」

「おはよ――っぶ!?」


 おはよう、というには遅い時間だが、ダンジョンのロビーにいくとロッテとフィーネが受付をしていた。

 軽く飯を食べようと思って寄ったのだが――俺の顔を見るなり笑いながら噴き出すフィーネ。

 ロッテは平常を装っているが、笑いを堪えているのか頬がひくひくと動くのを隠せないでいた。


「なによあんた、その顔!」

「顔――って、なんかついてるか?」


 一応拭いはしたが、アイスドラゴンの血がまだついてたかな?

 よく考えたら昨日帰ってきてから顔を洗ってない・・・・・・。

 服で顔を拭うが、しかし特に汚れなどはないようだった。


「ちょっといい?」

「お、おう」


 言うなりフィーネが顔に手を伸ばしてくる。

 フィーネは俺の頬をつまんだり揉んだりしていたが、


「ふっ、何でそんなぷるっぷるなのよ」

「ぷるぷる?」


 腹を抱えながらそれでも頬を揉んでくるその手を払って、今度は自分で頬をつまんでみる。


「うおっ!?」

「でしょ?」


 ぷるぷるというか、もちもちというか・・・・・・。

 例えるなら葛餅を指でつまんだ時の感覚だろうか。

 確かにいつもより顔の調子がいいとは思っていたが、しかし――


「めっちゃ美肌になってるわね」

「そうか?」

「けどまあ、肌が綺麗になっても他のパーツは汚いままだけど」

「何かあったんですか?」

「多分あれだな、アイスドラゴンの血を浴びたから――」

「「アイスドラゴンの血!?」」


 ハモって距離を詰めてくるロッテとフィーネ。

 その勢いに思わず手にした水筒を背中に隠してしまう――が、時すでに遅し。


「ちょっと、あたしにも寄こしなさいよ!」

「それはご主人様がボクのために手に入れてくれたものなんですよ!」


 そんなことはない。断じて。

 そんな否定の言葉を挟む暇もなく


「大体、フィーネさんは使ったところでそんなに変わらないと思いますよ」

「どういう意味よ!?」

「騒がしいわねー。ご飯?」


 待機部屋から流れ出る酒臭い空気。

 この騒ぎで起きたのか、酒瓶を手にしたままの千歳まで会話に乱入してくる。

 やばい、さっさと水筒をリーニャに渡さなければ・・・・・・。

 盛り上がる喧騒を背後に、俺はこっそりとダンジョンの入口へ歩みを進める。

 ――しかし、


「トシアキ?」

「リーニャ!」

「・・・・・・お取込み中?」

「いや、まあ・・・・・・」


 伝言を見てダンジョンまで来てくれたのだろう、ちょうど階段を下りてきたリーニャと鉢合わせる。

 後ろで取っ組み合いをしている二人――それを煽る酔っ払いもこちらにに気づいたのか、にわかに静かになってこちらに視線を向けていた。


「紹介するよ。その、俺の彼女の――」

「リーニャ・・・・・・いや、久しぶりね。リーディヤ・スペシフツェフ」

「会いたかったわ、千歳」


 人生で言ってみたい言葉ベスト3に入る台詞を遮り、リーニャを睨みながら呻くように千歳。

 反面、リーニャは向日葵のような笑顔でそれに答える。

 そしてその間に挟まれた俺はやり場のなくなった言葉を持て余しつつ、ただただ気まずい雰囲気の中立ち尽くすのだった・・・・・・。


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