迷宮脱出、そこから、、、
あの後、私が言ったとおりに騎士団たちが近づいてきたので柊に幻術魔法と隠蔽魔法を重ね掛けして少し離れた位置まで移動した
三体のうち二体のミノタウロスは空間魔法の楓の命名だがアイテムボックスの魔法で収納しておいた
最後の一体に蘇生をかけてまだ生きているように見せかけて、柊の防具をいったん買い取らせてもらうことで合意しそのミノタウロスに収納した死体の肉を少しだけ取り出して防具を取り付けた状態で蘇生した魔物の前に置く
「蘇生させたミノタウロスはしっかりと食べているようだな騎士たちも確認していることだろうな」
私の知覚範囲の中にいる騎士たちがしっかりと柊が付けていた防具を確認しているのを見ている
騎士たちは何かを言い合っているようだ
「おいおいどうすんだよ‼勇者が一人死んじまったぞ‼」
「だが今から奴を仕留めてもどうしようもないぞ」
すると、騎士団の中でもひときわいい鎧を着ている男がなだめるように言う
「安心しろ。死んだ奴は勇者の中で最もステータスの低いものだったはずだ。スキルもそんなにレアなものでもなかった。私たちが全滅するよりはましだったんだ。彼らには彼女が殿を引き受けてくれたと伝えておこう。そうすれば納得はするだろうな。彼女は下に見られていたようだし」
騎士団の男のセリフをそのまま柊に伝えた
「まあ、ステータスが低いのは事実だけれども騎士団すらも腐っていたとはね」
元からカーバイン王国の上層部にはそう言うところがあったらしい
国民にはそんなに関係ないらしく、自分たちの生活を守ってくれる存在だと認識しているらしい
「騎士たちが去ってから行動に移るの?」
「いや、君の意志の確認はすんでいるし騎士たちの基本的な立ち位置もわかったので今から移動しよう」
「でも今移動なんかしたらあいつらに見つかっちゃうよ?」
彼女は私の今から動くという言葉に疑問で返す
私には前回説明したとおりに時間に関する技能も持っている
今この場所から悠々と脱出することなど造作もない
彼女の伝えると口を開けて呆けていて数秒、そのあと大きくため息をつく
「あなたはさっきの戦闘でも思ったけどチートだったんだね」
やはり私はチートと呼ばれる存在らしい
では、移動しようか
「私につかまれ、柊。さっさとここから移動して君の安心して行動できる拠点を見つけようか」
柊が私の腕を掴んだことを確認して時間を止める。そして空間魔法で移動を開始する
「ここから君の第二の人生の本当の始まりだ。楽しみたまえ、柊」
私の言葉に彼女は笑う
「ええ、今度こそ必ず笑って人生を寿命を全うしてやる!」
私たちが消えると時間は再び動き出しミノタウロスはほかの獲物をさまよい求めて下層へ動き出し、騎士たちは上層へと動き出した
◇
私と柊は一面が草原のところに立っている
「ここは一体どこなの?」
彼女の疑問はもっともだ。だから私はわかりやすく簡潔に答える
「ここはカーバイン王国のある大陸と同じ大陸の中にある国の近くのケアノス大草原だ。見事な景色だろう?」
彼女は私の言葉に頷きを返す
「そうね。ここまで草一面の場所は日本にもそうそうなかったものね」
彼女はさらに私に問う
「それで朔夜が元地球人なのは理解したけどそれ以外のことは教えてくれないの?」
「今はまだ、無理」
「そう。分かったわ。じゃあ、教えてくれる時になったらお願いね」
「ああ、そう遠くはないだろうな」
それだけで彼女は満足したのか笑顔を見せる
「それで国っていうのはどういう国なの?」
私は彼女に語る
今から向かう国の名はエルドラント帝国。その国には種族差別はなく、国民は全員が一般的なレベルでの知識を備えている高度な文明を持つ国であること。建国当初は差別も当然のようにあり信仰する神も人類が世界を導くと唱えた神の一柱であるシービスと言う名の神であった
今から三百年ほど前に突然この国は大きく変わり始めたという。当時の王が革新的なモノや事業を始めることで暮らし向きが大きく変化していくことで当初の反発していた貴族の一部や商人なども文句が言えなくなったという
しかし、当時の王はこのことでのしこりや鬱憤を残さぬようにあることを行った
王が頂点なのは変わらないが、その下に各部門の代表者を選出させた。もちろんこれに不正や脅しや賄賂などの一切の行為を禁止した。その代表者が集まりそして議会という枠組みを作った。ここで大事なポイントは議会を一つにせずにまたその下にまたもう一つの議会として部門ごとの議会も作ったことだ
さらに教会は今までの信仰を捨て去り、新たな信仰を起こした。権力を一定の裁量を与え、民の声を上に伝えるようにした。
周りの国とも今は良好であり、侵略することはない
などなどの説明をしながら正門に向かって歩いていた
彼女は私の説明を聞き終えた後、つぶやく
「それって、内政チートでも持った転生者なんじゃないの?」
「流石にわかるか。ごくまれに元地球人がこちらの星に転生してくる。まあ、彼でだいたい三十人目だったはずだ」
彼女はやっぱりとつぶやき黙る
正門についた。衛兵に私の身分を示すものを見せて通らせてもらった。柊のことは連れだといって入国料金を支払っておいた
最初に向かう場所は決まっている。私はよどみなく目的地へと足を向けて進む
「どこに向かってるんですか?」
「この国の王城だよ。王には事情を説明しておきたいからね」
「朔夜はやっぱりこの国の騎士かなんかなの?この国について結構詳しいようだったし」
「いや、違う。私は旅人だといったろう。この国には定期的には来ているからね」
へ~、と彼女は納得する
やがて、城門までたどり着いた
ここでも衛兵に身分証明とあるものを見せる
衛兵はそれを確認し、「ご苦労様です」、と告げて案内の侍女を読んだ
やがてこちらに来た侍女は初めて見る新顔の子のようだった
私たちは侍女に連れられずんずん進む。明らかに玉座の間に出るであろう扉を無視し奥へと進む
柊は少し不安そうだったので、少し安心させるために手を握ってやった
顔を赤らめていたが緊張が解けたようですっきりとした顔つきになった
やがて王の私室の前にきて侍女は止まる
この子は私が見たことないだけで結構あの子に信頼されてる子なんだなと一人思う
「どうぞお入りください、王がお待ちです」
私は扉を開く。その部屋には妙齢のグラマラスな美女が一人立っていた
彼女は私を見て、それから柊を見て懐かしそうに言った
「はじめまして、エルドラント帝国のオフィリア・オーゼン・エルドラントよ。これから楽しく語り合いましょう、日本人の元同郷さん」
柊は驚きのあまり固まった
私はそれを見て微笑んでいた