世界の滅びと身内の救済
2話目です。
一生懸命がんばります
二人でゆったりとした生活からしばらくたった日に異変が起きた。ゆったりといっても私達二人の時間感覚なので一般の時間感覚とは長さが違うだろう
ほとんどのファンタジー動物や魔物や種族を作り終えたときだった。残りは人類種族のみだったのだが私達が生み出すよりも先に彼らは生まれてきてしまった
そのすぐあとに示し会わせたかのように魔族と呼ばれる存在たちが現れ始めた
そして、彼らが現れて何日かたった頃についに魔王が現れた
人類種族が勝手に生まれた事で懸念していたことがここで確信に変わった
小説でよくある神様だったりそれに準ずる存在が介入し始めたのだ
地球でも神様は存在すると言われてはいたが私も彼女も直接目にしたことはない
「どうする、楓。今さらになって神などというものにこの星を荒らされては困るが現に魔王が誕生してしまったようだしな」
楓は私の言葉を聞いて少し残念な感情と怒った感情とを入り混ぜた輝きを見せる
「そうだね。だったら私は徹底的に人類種族と魔族を無視して私たちが生み出したものたちのみに関心を向けることにするよ」
ふむ、楓は今回の事で相当にご立腹だな
そもそも神と名乗るならばこの星の核である楓の存在に気づかないというにも滑稽だ
「神と名乗っても所詮はただの高次元体のエネルギーの集まりか。しかもそれが人々に分かりやすいように人の形をとっているに過ぎないんだからさらに滑稽だな」
私がそう神のことを評価すると楓はものすごい嬉しさの輝きを放った
「そもそも、私を感じれない時点で私よりも力も格もだいぶ下。存在のひと欠片も感じ取れないなんて」
「するとどうする、神が単体もしくは複数に増えた場合に私たちの生み出してきた種族は巻き込まれるかな」
私の言いたいことが伝わったのだろう
楓は大きなため息をついて言う
「それは私も考えたよ。だから加護とは違うけど神からの干渉なんかを一切通じない術式を一人一人に埋め込んだよ。これは魂に記憶させたから神には干渉できないよ」
それならば問題あるまい
しかし一人一人にということは魔物や動物にもか?
そんな疑問は当然とばかりに楓は答える
「魔物や動物にはやってないよ。彼らの存在は必要悪、つまりは人生の中にある苦難の一つに設定したからね。人間に近い種族は平穏すぎるとなまっちゃうからね」
まあ、そうだろうな。生き物は追い詰められると団結や努力をするようになる
その中から英雄なんかが生まれて来るのだろうと予想できる
「もし、勇者と魔王の物語が長く続くようならどうする。こちらからも多少は干渉するか?」
「干渉は極力しないよ。したら私たちにちょっかいかけてくるしね。もし物語が続くなら私たちは観測者や傍観者に徹すればいいよ」
楓はもう人類種族と魔族に興味がないのだろう
私たちが生み出した種族たちも人数自体はそこまで多くないし、人類よりも繁殖力も強くないように設定した。強くないといってもそこまで大幅な違いはない
「じゃあ、しばらくは情勢を静観しよう」
「そうだね。なにかあったらすぐに対応出来るようにしようか」
◇
「これはさすがにやりすぎだな、神様モドキめ」
「他種族との連携がうまくできないからって一度すべてを滅ぼして新しく作り直そうだなんてね、愚か者が」
楓のここまでの怒りは久々に見るな
今、我々の見ている地上の世界はひどいものになっている
神様もどきはやはり数体いたようで神界などと大行な名前をつけた空間に引きこもり会議をしていたようだ
その会議では人類種族と他種族との魔族に関する認識が違いすぎると言うことで一度滅ぼそうと言うことらしい
馬鹿げた話だ
しかし連中はそれを実行したようで目の前の映像には次々と死んでいく種族たちが見える
まあ、私たちを認識できない連中には出し抜かれんよ
事前に竜や龍、それにエルフやドワーフなどの種族たちにはどういう事態になるかを説明がすんでいる
彼らの魂は死したあとこの煉獄に来ることになっている。そのあとに楓の力で肉体を復活させこの煉獄で暮らしてもらうのだ
そのための土地も食料もすべて事前に用意ができている
精々神様もどきの連中には必死こいて新たなエルフやドワーフたちの種族を作ってもらうつもりだ
彼らによって産み出されるということは私たちの管轄外になるので一切手を出すつもりもない
「もうそろそろ全員が煉獄に来るよ。みんな集まったら説明を始めよう、朔夜」
「ああ、そうだな。あとは地上を監視することになりそうだな」
考えの通りならばもどき達は私達とは違う本格的なファンタジー戦記を自分達手動でやりたいのだろ
「しかしあいつらもバカだな。滅ぼした種族たちが本当は自分達でさえも殺すことのできない存在だとは思うまい」
「私の生み出した種族達は全員が原種、つまりは種族の始まりだからね。先祖帰りという意味の言葉の先祖に当たる者達に当たるわけだよ」
楓の愛情こもった魂と肉体の生成によって彼らは相当な強さを得ていた
それでも今の私の二割ほどになってしまうが
「楓の存在に気ずくことのできない彼らの生み出す種族は相当なスペックダウンの種族になっちゃうだろうね」
「なにか起これば私が干渉しようと思う」
「正直、私は反対だけど朔夜以外がいくとどうなるかわからないからしぶしぶだからね」
ああ、わかっているよ
私はあんなもどきどもには手加減も同情もする気はないからね。もちろん油断もない
□
目の前には多種多様な種族がいる
彼ら彼女らの顔は一様に警戒や疑問に満ちている
「君らの疑問や警戒はもっともだが、まずは私たちの話を聞いてくれないかな。聞き終わってから質問に答えよう」
不安そうだが各種族の長がまとめてくれたのか少しのざわめきがすぐに収まった
一番最初に口を開いたのはやはり龍・竜族であった
「そこの御仁。我らも事前の警告で存在は認知しておるが、本当に星の核というような存在がおるのか疑問が残る」
「まあ君たちにとっては見たこともないものを信じろと言われては疑いたくなるのも理解ができる」
私が彼に共感している間に楓が移動してきたのだろう
彼の顔が次第に青ざめていった
楓の存在や力の大きさを感じ取ったのだろう
「その球体が星の核ですか?」
エルフの長である女の戦士が私に問いかける
「そうだ。彼女はまだ覚醒して数万年程度なので肉体はまだ用意できないのだ。なので球体の姿をとっている。ちなみに君たち全員を生み出したのは彼女だ」
私の最後の言葉に沈黙が回りに走る
数分たってやはり龍・竜族が今一度私と楓に問いかける
「彼女?女性なのか?しかし、彼女が我らを生み出したと?それが本当ならば彼女は我らの母ではないか」
「そうだよ。私は星の核。名前は楓。君たちに母親になります。隣の彼は私の夫で朔夜といいます」
先程よりの大きなざわめきが起こる
自分達が死んだことに疑問があったのにそこが吹っ飛んでいる。それほどにこの話題の衝撃が大きいのだろう
「母親だからね。私は君たちの魂に術式を施し死したあとにこの煉獄に来るようにせっていしました」
彼女がようやく疑問に答えるように彼らに伝えた
「では我々がこのように死したあとにも関わらず肉体があり生きているのはあなた方のお陰なのですか」
「そこまで恩義を感じることじゃないよ」
私がそういうが皆が皆が急に膝をついたと思ったら頭を下げた
「我らに再びの生を与えてくれたお二方に感謝を。して、これから我らはどうすれば?」
そこから私はこの煉獄に土地や山を用意してあることやそれぞれの生息地域に別れてすむことを告げる
「君たちが生活に慣れる間の食料も用意してあるから安心してくれ」
「これで説明は終わり。じゃあ、みんなそれぞれ好きな場所に向かって移動しましょう」
楓はそう言うとどこでもドアのようなゲートの魔法を使いそれぞれの種族を誘導した
「このゲートは常時この場所に繋がってるからね。いつでも会いに来てね。もちろん困ったときに相談に来てもいいからね」
彼ら彼女は笑顔でゲートをくぐっていく
しばらくしたら私が各ゲートを渡り、各種族を訪問しに行くことにしよう
○
それから五十年単位の周期で私は地上のすべてを探索する行動を取るようになっていった
そこで見たものはあまり気分のいいものではなかった
大方の予想道理の展開だ
エルフ族には世界樹を与え、私達は生み出さなかった龍人族が存在し、ドワーフの武器・防具が高く売れ、魔物がさらに凶暴化・増殖し、さらに豊富な種族を追加し、ついに戦争が始まった
戦争はそこかしこで起こった
まあ、ほぼ九割が人類種族同士の利権や土地の奪い合いで始まっていた
地方の街や人数の少ない小さな町があおりを受けて次第に口減らしや奴隷狩りなどが横行し始め次第に滅びていった
そして、その歴史の中にちょくちょく魔王と勇者の物語が間には入り一時は団結してもまたすぐに戦争が始まりいくつかの国が再び滅び、興していった
予想道理の展開とはいえ胸くそ悪い
魔法などがある分余計に地球の戦争よりも規模が大きく、凄惨なものになった
「こうなると、もう二万年ぐらいあとになれば異世界から勇者の召喚なんてものを地上の人間どもに提供するだろうな」
くだらないが、またもや予想が的中するだろうな
まあ、その時はその時で対応すればいいだろう
「やはり、彼らは神様モドキだな。私利私欲か目的は知らんがあまりにもずさんすぎるな」
私が地上にいることさえ認識できないとは
異世界人は私たちの管轄ではないがおそらく地球から召喚されるだろうと予測する
その時の状況によっては手助けしてやろうか
「時間はまだある、そのときに備えようか」
私は覚えたての転移魔法で煉獄に戻った