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澄し虚空の守護兵士  作者: シャルン
7/10

届かない、光

暗い夜道を少女を抱えひたすら走った、


(とにかく今は、学校に向かわないと!この子も見てもらわないといけないし、もしあれがオグルに憑りつかれた人なら、結界が反応して、中までは入ってこられない!)


ただそれだけを信じ、私は走った、さっき見たばかりの町の光景がその時の私にはまったく違って見えた。

不意に顔を上げると、学校のちょうど中心にある中央管理塔がみえた、心臓部とも呼ばれる高い塔が何者も寄せ付けないかのように、薄暗い光を放っていた。


(よし!学校までもう少し!この路地を抜ければ...!)


細かい路地をいくつも曲がり、大通りにつながる最後の道を曲がった、



「...えっ??」



その時、私の頭の中が一瞬真っ白になった。

そこにあったのは、見たこともない壁、見たこともない街並みだけであった、


「ちょっと、どうなってるの!何、この壁っ!こんなの、こんなところに...!」


暗闇から、見えない足音が少しずつ近づいてくる、


(まさか...この空間....、ロストワールド!?)




人間に害を及ぼすオグルには一つの基準として、五段階の危険度が定められている。

全体の約70%が危険度の低い1~3であるが、稀に危険度4のオグルが確認される場合もある、そういった4以上の上位種のみが見せることのできるとされる一つの幻術がある。


それが仮想空間「ロストワールド」


特定の相手を自らの空間に誘い込み、誰にも悟られることのなく人間を襲い、消すことのできる、言い換えれば自分専用のフィールドのようなものだ。

この空間の最も厄介なのは、空間外からの侵入はもちろん、目撃者がいない限り、レーダーや捜索を行っても、見つけることのできない事だ、

つまりその空間から抜け出す方法はただ一つ、



「空間を作った張本人を倒す、もしくは、、、」


(私たちがやられるか...!)


            ・

            ・

            ・

            ・


「少しだけ待ってて、必ず助けるから」


少女をゆっくり寝かし、私は一人で足音の方へ進む、

一歩一歩が押しつぶされるように重い、全身が前に進むのを拒んでいるかのように


それでも進まないと、ここで終わらせないと、なんてバカみたいな正義感が身体を突き動かしてくる。

少しづつ、奴の形が暗闇の中から露になる。


(来る……!)


震える手を抑え、デバイスを展開する、


『周囲にオグルの反応を確認、個体数1、危険度4、ロストワールドによる戦闘ではセクター本人が危険にさらされる恐れがあります。現在ガーディアンとの共鳴反応無し、直ちに所有ガーディアンとの共鳴を……』


「あぁ~もう!わかってるわよ!そんなこと!」


学校に入学してすぐにヘッドセット型デバイスが支給されるものの、正式なGSとして認定、登録されなければ自らのガーディアンを所有することができない、

それに共鳴を制御できない私の場合、それ以前の問題になる…、


「……アァァ……ァアァ……ァ……」


低い呻き声をあげながらオグルはじわじわその距離を詰める、

デバイスを展開したところで外見の情報は分かってもそれまで、

ガーディアンがいない限り何の意味も持たない。


(いきなりロストワールドにつれてこられて初めて見るオグルが危険度4…!? もう意味わかんなすぎるよぉ~

でも、とりあえず何とかしないと、こんなところで殺られるわけにはいかないし…!)


思考回路がどんどんおかしくなっていく、落ち着きたくても体の震えが止まらない、


「……あ、あぁ、」


「あんたがぁ、う、うちのせいとをぉ、おそってると、通り魔ね! あ、あんたみたいなロリコンオグルに私を倒せるとでも思ってるわけ? バ、バッカじゃないの!ノロマなあんたには私を倒そうなんて百年早いわよっ!」


(何いってんの私~~~!!)


「…………、」


(あ、あれ? 襲ってこな…い?)


「………ォレハァ………、……………ネェ……,」


「??えっ?」


「!!オレハァァァ~ロリコンジャァネェエエエ~!!!」


突如オグルの背中から刀ほどの長さがあるナイフが数本出現し、ものすごい勢いで襲いかかってきた


「えっ?えぇぇぇぇ~!!!」


「怒るとこそこ!?」と、突っ込みを入れたかったが、そんな暇はもちろん無い、とにかく相手の間合いに入らないよう、必死に逃げた


相手のナイフは無茶苦茶に暴れ、次々家屋や標識を切り刻んでいく、


(こんな逃げててもらちが明かない!何とかしないと!)


必死に考えるが何も出てこない、頭をフルで回転させひたすら考えた、、



「ガツッ!」


「きゃっ!!」


靴先が小さな段差に引っ掛かり、気づけば私は大胆にこけていた


立ち上がろうとしたが、もう足が動かない、

ふと見上げると目の前にオグルが立っていた。


(あぁ、もうちょっとおばあちゃんといたかったな、

心配してるだろうなぁ、おばあちゃん、

立派なGSになって活躍したかったなぁ、ハハハハ、)


黒いオグルから伸びたナイフが雫めがけて降り下ろされた。




辺りはずっと静寂だった。

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