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第一章 六話 お出掛け(前編)

下山して街を回ってみたらいろんなフラグが立ってました。

一刀SIDE


ここに来て一週間が過ぎた。


「回復が早いですから、そのうち全快するでしょう」

「……ありがとうございます」


その間、山で遭難されて出来た負傷はほぼ回復されて、激しい運動とまでは至らずも、少しのストレッチングぐらいはできるぐらいにはなった。

毎日のように鍛錬をしていたのに、ここ最近はまったく体を動けずこの部屋の中にばかりいたから体を動かしたくて疼く。


それと、やらなければいけないことがあった。


「あの、良ければ、街に出てみたいのですが…」

「街に…?構いませんけど、どうして急に……」

「初めてここに来た時は次の朝になると、夢だったら良いなとかも思ってたのですが…そうでないと知った以上はなんとかしてここで生きていく方法を見つけなければなりません。そのために、少しここがどんな場所か自分の目で見まわって、それから具体的な計画を立てるつもりです」

「…そうですか。あなたはあまり慌てたりしないのですね」

「……昔から落ち着いた性格でしたので…ですが、驚くということは状況を飲み込めないということ。いつまでも現実に立ち向かわずに居るわけにはいきません」

「わかりました。そう言えば、明日朝はやく朱里と雛里が街に出て塾に必要なものを買ってくることになっています」

「鳳士元もですか?」

「ええ」

「………そうですか」


ふと鳳士元に真名というものを許されたことを思い出した。

あれ以来、士元、雛里には一度も会っていない。

ここに来たのは好奇心混じりで顔を出してきた生徒たちじゃなければ水鏡先生のみだった。

特にあの薄緑の髪の娘は毎日来ている。すごく気になるんだが、向こうがそのまま行ってしまうのでそれ以上の接続はなし。


鳳士元はボジティブな方向に考えると、多分あれから孔明と仲直りしてこっちに近づかないように話がまとまったのではないかと思っている。

どっちにしろ元の目標は達成できたようでホッとするが……あの日の事故を思い出すと俺って一体なに考えていたんだろうと壁に頭ぶつけたくなる。


「大丈夫ですか?」

「はい?」

「なにやら、固まっていましたので…」

「い、いいえ、何でもありません。それなら…彼女たちが街に出る時に、道案内など頼めるでしょうか。無論、彼女たちに迷惑でなければの話ですが…」

「わかりました。彼女たちももう随分落ち着きましたし、それほど嫌がらないだろうと思います」

「なら、いいのですが……」


が、彼女たちは未来のための勉強をする目的でここに居るのだ。

塾のうらで遭難された訳の分からない別の世界から来た人間と絡まれるためにここに居るわけではない。

そう考えると、一週間会ってないことが、別に俺への否定的な感情を表しているわけではないのかもしれない。

いきなり人の唇に口づけをした変態だとしても……


ガーン!!


「大丈夫ですか!どうして急に壁に頭を……」

「だ、大丈夫です。少し、忘れたいことがあったので…」


気にするな。気にしちゃ駄目だ、俺……普通にやっていけばいい。


普通ってどうすればいいのかわからないけど。


<pf>



「一刀さんも一緖に行くのですか」

「ええ、よろしければ、彼に街の紹介などもしてもらえるかしら。彼もこれからどうすればいいのか不安定な状況で不安になっているみたいですし」

「はぁ……」


一刀さんと……出かけるか…

どうしよう


「……あまり気に食わないみたいですね」

「え?い、いいえ、あの、その……」


言えません。あの日朱里ちゃんに誤解された後、変に意識しちゃって会いにも行けずぎくしゃくしていたのに……今更あったら私のことどう思うことやら……

……か、考えたらまた顔が赤くなっちゃいそうです!


「しゅ、朱里ちゃんは多分駄目だと言うと思いますよ。ほら、朱里ちゃんはあまり一刀さんのこと好きじゃないですし」

「朱里になら既に構わないと言われてます。彼女も北郷さんが自分の立場を理解して、これから自分がどうすればいいのかを考えるべきだと分かってくれて……」

「そ、そうなんですか…」


朱里ちゃんはもう許したんだ……

何か朱里ちゃん、あれ以来私と一刀さんのこと本当にそうなんだって勘違いしちゃったみたいで、あれから朱里ちゃんともあの話には触れていない。

でも、どうしよう。

せっかく真名だって許しておいて、ここで嫌とか言ったら、あまりにも露骨に避けてるようで失礼だし…


「分かりました。明日、一刀さんも連れていきます」

「はい、それじゃあ、北郷さんにもそう伝えておきますから、よろしくおねがいしますね」

「はい」


あわわ…会ってぎくしゃくする姿が目に浮かびます……


・・・


・・



次の朝、街に出るための準備で朝はやく起きました。


「朱里ちゃん、おはよう」

「おはよう、雛里ちゃん。今日街に出るの、楽しみだね」

「う、うん……」


ここの私塾に居ると、街に出ることはそうありません。

他の娘たちは休日とかに街に出かけたりすることもありますが、私はこんなことでもなければ、あまり街に出かけることは好きじゃありません。

好きじゃないというのは、外に出るのが嫌いとかそういうわけではなく、あの、ちょっと怖いです。

知らない人たちがたくさん行ったり来たりする中で…そんなところだと、悪い人たちも現れますし……


「雛里ちゃん、どうしたの?」

「うん?あ、ううん、何でもないよ」

「…大丈夫だよ、雛里ちゃん。私も一緖に行くから。二人で一緖に行くときっと怖くないよ」

「……うん」


私の気持ちを良く分かってくれる朱里ちゃんは、そう私を慰めてくれました。

朱里ちゃんと一緖に行くなら、本当に怖いのもなくなります。

本当に、朱里ちゃんは頼りになる友たちで……


「後、北郷さんも一緖に行くしね」


ガーン!!


「はわわ、雛里ちゃん、大丈夫!急に寝床に頭ぶつけちゃって…」

「う、だ、大丈夫…」


そうでした……一刀さんも一緖に行くのでした。

あまりにも立ち向かいたくなかった記憶だったせいで完全に頭の隅っこに封じていたのですが、朱里ちゃんのせいでまた意識してきました。


<pf>



自分たちの身の支度をして、一刀さんを連れに一刀さんの部屋に行きました。


コンコン


返事がありません。

まだ寝ているのでしょうか、それとも……


がらっ


「……一刀さん?」

「………」


一刀さんは部屋に居ました。

寝床の上に座っていました。


「一刀さん?」

「…………」


でも、何だか返事がありません。

座ってるまま寝てる?


「北郷さん、起きてください」


朱里ちゃんが少し大きい声で一刀さんを呼びましたけど、一刀さんは目を開けません。

部屋の中に入って、一刀さんを揺さぶってみました。


「一刀さん、一刀さん」

「…………うん?」


そしたら、やっと一刀さんが目を覚ましてくれました。


「あ、鳳士元。それに孔明も随分早かったな」

「座ったまま寝ていたのですか?」


朱里ちゃんがそう聞いたら、一刀さんは頭を左右に振りました。


「朝の習慣みたいなものだ。こうして居座って、心の中を空にすることで、精神を統一する鍛錬の一環だ」

「鍛錬って……体を動かずにですか?」

「北郷さんって、武に心得があるのですか?」

「ある程度は身につけているつもりだ。後、鍛錬と言って肉体的な鍛錬だけというわけではない。清い精神を磨くこともまた修練の一つ。お前たちも文を磨くと言って、いつも本ばかり読むことが勉強というわけではあるまい。見聞を広げたり、現に存在する問題を自分たちの知識を持って方法を考えることもまた自分が知っている知識をまとめるいい勉強になる、そうだろう?こういう座禅もまたそんなものだ」

「はぁ……」


一刀さんの説明を聞いていたら、なんとか納得はできましたが…人が呼んでもわからないものでしょうか


「士元は本を読んでる時に誰かが呼んでもわからなかった時とかないのか?」

「あわわ?!なんで私が思ったことがわかったんですか?」

「本当にそうなのか。すごい集中力だな」

「あわわ………」


一瞬、本当に心を読まれたのかと思ってびっくりしました。

あれ?というか、

一刀さん、さっきから私のことずっと士元って呼んでますよね。

私、真名は許したはずなのに……

もしかして、一刀さん、忘れてる?


「あの、一刀さん」

「うん?ああ、そうだったな。そう言えば、今日は街に出かけると言ってたな。ちょっと待ってくれないか、直ぐに準備するから…」

「いいえ、そうじゃなくですね……」

「……?」


いや、待って。

もしかして、単に忘れたわけじゃなく、私があまり長く会いにも来ないで無視していて、怒ってる?


「いいえ、何でもないです。準備出来たら呼んでくださいね。私たちは外で待ってますから」

「ああ、分かった」

「朱里ちゃん」

「あ、うん」


がらっ


外に出て一刀さんが支度するのを待ちます。


「雛里ちゃん、先どうしたの?」

「あ、うん……えっと、この前朱里ちゃんと喧嘩してここに来た時、一刀さんに真名を許したんだけど、呼んでくれないなぁって」

「はわわ?雛里ちゃん、北郷さんに真名を許してたの?私今初めて聞いたよ」

「だって……」


そこで真名を許したってまで言っていたら朱里ちゃんの頭の中で私と一刀さんがそういう関係だって完全に納得してしまいそうだったからとにかく不利になる話は言いたくなかったの。


「でも、真名を許されたと言っても、やっぱりちょっと言い難いのかな」

「……良くわからないけど、ほら、男の人に真名を許すのって、あまりないじゃない?こう……夫になる人とか、仕えになる人が男な時でも真名を許したりする時ってそうは…」


……え?


「そ、そうだったの?」

「雛里ちゃん、もしかして知らないで教えてたの?」

「……うん」


あの時は単にお礼として許しただけで……

そうだよね。同性の友たちならまだしも、女の人が男の人に真名を許すことって未来を約束した間か、そうじゃなければ………

待って、

でも、それじゃあ、まるで私が一刀さんに………


「あ、あわわー!」


何でも今になって自分がどれだけ大変なことをしたのか気づいちゃうの、私!?


がらっ


「わるい、待たせた」

「あわわー!」「はわわ!」

「わっ!」


慌ててるところで、突然一刀さんが部屋の門を開けてきたので、私は更に驚いて思わず声をあげてしまいました。


「雛里ちゃん、落ち着いて。そんなに真剣に思う必要ないよ。きっとそういう関係だってあるんだよ。うん」


今朱里ちゃんが言ってるそういう関係ってなんなのか私にkwsk教えて!凄く怖いの、今朱里ちゃんが私と一刀さんをどういう関係に思ってるのか


「よ、良くわからないが、大丈夫か、士元」

「だ、大丈夫ですなんともありません。むしろ元気一杯です」

「ならいいのだが……まぁ、いい」


と、落ち着いたところで一刀さんが着た不思議な服が目に入りました。


「一刀さんの服、何か輝いてますね」

「うん?……ああ、ちょっとそうかもな…この世界の服とは素材が違うから、そう見えるかも知れないな」


遭難で負った傷を癒してる間、ずっと上半身に包帯だけでいた一刀さんは、今は下の白いに合わせた白い上衣を着ていました。

それが今昇り初めて日を反射して、凄くキラキラして見えます。

こうして見ると、何かちょっと神々しく見えます。

なんというか…凄く綺麗です。


「着替えた方がいいだろうか、あまり街で目立つのも良くないし」

「いいえ、そのままで大丈夫です!」


一刀さんの言葉に思わずそう答えてました。


「……雛里ちゃん?」

「……あ、あの、だから、急がないといけませんので、これ以上時間を無駄にしたらいけないかなぁと……」

「…そうか、そうだな。…まぁ、見てあまり目立ちそうだったら上衣は脱いでしまえばいいだろう」


なんとか誤魔化しました。


<pf>



日が昇る頃に出発しましたが、街に着いた時には屋台が商売を初めて、街に人たちが集まる頃になってます。

山の麓にある塾からここまで来るにも、結構な時間がかかります。

帰る時も、急いで帰らなければ、後で夜になって塾に帰る道に迷ってしまうハメになるかもしれませんので、気を付けないといけません。

だけど、


「すっごいー、雛里ちゃん、アレ見て」


朱里ちゃんが指したところは、飾りを扱っている店でした。

朝の日の光に反射して、瑠璃の輝きや宝石の反射光が輝いてすごく目立ってます。


「……あれほどの家もなると、結構金持ちだろうな………にしても、十時半でこれぐらいか……随分と活気のある街のようだな」

「じゅうじはん?」

「うん?」


一刀さんが左手に付けてあった何かを見てそうつぶやいてました。


「北郷さん、それって何ですか?」

「時計だが…?」

「時計?その手首に付けてるのがですか?」


よくみると、一刀さんが「時計」というものは、日時計みたいに日の影を見て時間を分かるものではなく、円盤の中に長さが違う針三つが少しずつ回っています。


「…この時代だと、あるのは日時計かそれとも水を利用した時計とかだな」

「はい」


大体、時計がなくても、日の上り具合を見ると大体の時間は分かりますし、設置された時計でももっと大きな街でなければありません。

それが、時計と手首に付けておくなんて……


「まぁ、時計なんてなければどうっていうことはないが、あったら時間とかに拘って余裕を無くす。あまり身近において良い品物ではないが……俺が生きていた時代では結構重要だったりしたんだ。時間というのは。時間は金なりという諺もあった」

「そうなんですか」

「でも、その言い方なら、北郷さんはどうしてその時計を持ってきたのですか?ここで時間なんて別に気にすることもないですのに」

「色々理由はある。まずは、塾から街までどれぐらいかかるか時間を計ってみたかった。後は……」


ぐぅ~~

ぐぅ~~

ぐぅ~~


「「……」」


誰のお腹の虫だったか聞くこともなく、

三人のお腹が同時に成っていました。

朝食を取って街に来ると、もう昼過ぎになって時間が曖昧なので、朝食抜きで山を降りてきたのですが、流石にこの時間にもなるとお腹が減ります。


「もし、こういう状況になった場合誰でも自分はお腹が減ってないと意地を張った場合黙殺するためでもある」

「「あ……」」

「街から遠いところから定期的な買い物となると忙しいということは分かるし、朝御飯を食べる金を貯めて自分たちが欲しい物を買いたい気持ちも十分理解できるが、まだ成長中の娘たちが空腹を我慢してる姿を水鏡先生が見られたらなんと言うことやら……」

「な、何かたべに行きましょうか」

「そ、そうだね」


朱里ちゃんが一刀さんの言葉を絶ってそう提案したら、私も急いで同意しました。

何か、一刀さんと一緖に話してると自分の心をまんまと見られてる気がしてなりません。



<pf>



「北郷さん」

「?」

「どうして私たちが朝食を抜いて買い物のために金をつくろうとしたって分かったんですか?」

「………」


朱里ちゃんが注文したものが出るのを待ってる時に一刀さんに聞きました。


「二人がここまで来る時にとった行動からの推測だ」

「どういうことですか?」

「まず、二人は山を降りてくる時に水を多めに飲んでいた。塾から出発する前にも二人の口に水を飲んだ跡があった。そして山を降りてくるところでも必要以上に水の瓶を持っていた。それはつまり、二人が朝食を取らずに山を降りるためにお腹に水でも入れておこうと思っていたのだ」

「あ」


たしかに、私たちは一刀さんの部屋に行く前に水をたくさん飲んで、また山を降りる時にもいつもより水を沢山汲んで、先に空腹感を抑えようとしていました。


「でも、それだけなら俺も単に時間を急いでいたと考えて終わりだっただろう。でも、二人は街に着いた一番最初に目が行った場所が、女の人たちのために飾りを売っている店だった。それを見て確信した」

「それだけで、私たちがそんなことをするだろうと分かったっていうのですか?」

「六割ぐらいだな。それだけなら、黙っていることもできないわけではなかったが……」

「……?」


一刀さんは突然そこで口を閉じて視線を逸らしました。


「……俺は私塾のところから水一滴も口にしてないんだがな」

「「……あ」」

「…残りの四割はそれだ」


………


「ごめんなさい」

「私たちの考えだけで、一刀さんのことは全然…」

「いや、俺は昨日急に申し出た身だ。二人の計画を狂わせてしまって悪いとは思っているし、代わりのものは用意してある」

「へ?」


一刀さんが突然何を言っているのかって良く分かりませんでした。


「はわわ!」

「え、どうしたの、朱里ちゃん?」

「…やはり、孔明の方が察しが早いね」

「あわわ?」


何ですか?

どうして二人とも私だけ置いて行っちゃうんですか?


「大丈夫なんですか、北郷さんは」

「結構。元からそのつもりで来ている」

「ですが……そんなものを売ってしまったら大変なことになるんじゃあ」

「ただの時計一つだ。それに、この時代で真似できる技術でもない」

「……あわわ?」


一刀さん、もしかして…


「一刀さん、まさか、その時計、売っちゃうんですか?」

「ああ、先どうして時計を持ってきたのかって言ってたな。三つ目の理由は、これを売るためだ。金が必要になりそうだからな」


・・・


・・




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