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第三章 四話 白鮫江賊団編3

呉越同舟・・・というにはなんか違う気もするが、まぁ。。。要は過去は今ひとつ忘れて雛里ちゃんを助けるのが先ですね。

甘寧、字は興覇。

元々江賊だった甘寧は何年前かに突然江賊をやめて荊州の劉表の心腹、黄祖に仕えた

一年前孫堅の軍勢が劉表の要請によって荊州に来た際、劉表の命によって黄祖は重臣たちと離れて進軍中だった孫堅を奇襲、殺した。

最初から荊州に孫堅を巻き込んだ時から、劉表と黄祖が孫堅を殺そうとしていたことを知った甘寧は、以後孫家の没落と共に荊州と揚州、主に長江近くの賊の動きが活発に成ったことを見て、自分が仕えるべき主を間違えていたことに気付き、自分の罪を償うべく長江の江賊の生活に戻った。

孫堅を奇襲時に先頭に立っていた彼女は自分が孫堅を殺したのだと自らの罪を深め、長江にて義賊団を名乗り、江賊が乱舞する長江に跳び込んだ。

荊州の官軍さえも手に追えなかった江賊たちは、彼女の『鈴の音江賊団』によって一つ二つ片付けられ、今にはその数はほぼ一年前と同じ位になっている。

だが甘寧はここで足を止めることなく、長江の全ての江賊を断つべく、一番悪名が高い『白鮫江賊団』を討たんとしたが、中々頭を討つことができず、せいぜい尻尾を切ってるばかりで、荊州の民たちの被害は増えるばかりであった。


そこに、孫堅の娘である孫権の姿を見た。

孫家の一族がバラバラになって、その軍を失い各地に軟禁状態になっているということは甘寧も知っていた。

だけど、どこに居るかも知らない故、会うこともできないだろうと思ったのが、こうして『白鮫江賊団』を追っている中孫権の姿を見つけたのである。

甘寧は孫権に以前の自分の罪を許していただくべく、こうして頭を下げてここまで来た。


………と、いうのが、彼女の江賊団の副頭という、凌操の話であった。

凌操って元々甘寧に殺される役だよね。どうして一緖に江賊やってるの?


「いや、それにしても、いつまであの二人はああやっているつもりだ?」

「知らん、思春は見た目通り頑固な奴だ。許してもらえるか、そうじゃねーとこの場で自分の命を捧げてでも償おうとするだろう」

「そんなにか……」


甘寧と孫権というと、甘寧はさっきの土下座姿勢を初めて凡そ30分ぐらい過ぎてるけど、まったく微動もせず、孫権もそんな甘寧を睨むだけで、何もしていなかった。


「にしても、僕も孫権に向かってあんな顔をしていたのか?」

「あん?」

「自分がやったことが馬鹿馬鹿しくなってくるわ……はあぁー」


孫権の甘寧を睨む顔は、まるで世界でお前さえ居なくなってしまえばこの世に一片の悔いもないと言わんばかりの毒気に満ちた顔であった。

孫権は甘寧が自分の母を殺した(ことに一助した)ことに怒りを隠せないつつあったが、だからと言って甘寧本人が悪いわけでもなければ、彼女は誰かを裁けるような立場でもない。

復讐心に包まれて劉表や甘寧を殺すことを画策していたのならまだしも、突然私のあなたの仇です。どうかお許しください、と言っているのだ。そこに気の赴くまま良し、殺してやると思うほど、人間は邪悪にはなれない。

増してや、あの孫権は姉孫策と違ってまだ戦場にて戦って見たことない、つまり一度も人を殺して見たことがないのだ。殺すことはないだろう。


「だけど、あのままだといつまでも睨んでいるばかりで許してくれそうにもない……最も…」

「………何?」


僕は戻ってきた倉と真理ちゃんのうち、無言のまま甘寧を睨んでいる孫権を睨んでいる倉を見た。


「倉、あれを見て何か思うことはないか?」

「…………」

「僕も最初は孫権を見て苛立つと思っていたが、あいつが甘寧を殺す勢いで見つめているのを見て気を失せたよ。ああしているぐらいならいっそ許してしまった方が人間として正しい。そう思わないか?」

「……でも、孫策がおじさまたち殺した。…あいつはそいつの妹」

「妹だろ、本人ではない。それに、孫策本人だとしてもだ。相手を恨んで、殺したところであの世で裴元紹たちが喜ぶと思うか?」

「……」

「あの人はお前が生きることを望んだんだ。生きるなら幸せに生きるべきだ。自分から率先して人を恨み、負の輪にはいるような考え方をする理由はない」


知ってる。

僕に比べれば倉ちゃんの彼女らに対しての怒りなんて比べ物にもならない。だけど、今は雛里ちゃんを助けるためには悪魔の手でも借りたいぐらいだ。


「……あたしは皆を失ったのに、あの人たちは怠けた顔で天下のあっちこっちで生き延びてる」

「それが気に入らないって?」

「……また、同じことをする」

「そうかも知れない。が、少なくも今目の前の孫権はそんなことをしていない。むしろ困ってる僕たちを助けるって言っているのだ」

「……………」

「倉ちゃん、私も今は北郷さんの言う通りにした方がいいと思う」

「…」


今度は真理ちゃんから、倉を説得しようとした。


「私は例の事件の時にそこにいませんでしたから、あまり知れた口は言えないかもしれませんけど、少なくともさっきの周泰さんと言い、この人たちは孫策さんみたいな考え方をするとは思えません」

「……そうとは限らない」

「え?」

「……あたしたちに友好的なのはただ助けてもらってるから。実際に、あの人も自分の仇に当たるあの江賊のお頭を許せないでいる」

「それは……」


真理ちゃんは港側の孫権の姿を見た。

実際、孫権と甘寧の立場、倉と孫権の立場は良く似たものだと言える。

許す側になれない者には許す価値もない。倉はそう言っているのだ。


「じゃあ、孫権が甘寧を許したら、倉も孫権を許してくれるか?」

「……!」

「どうする?」

「………いい……そんなはずないけど…」

「倉ちゃん…」

「良いんだ、真理ちゃん。何も強制的な和解しなさいと言ってるわけではない。せめて雛里ちゃんを助けるまでだけでイイからさ……」

「……」

「倉、僕もそこに居た。そしてアイツに殺された。でもだからって雛里ちゃんを助けられる道を塞ぐことはできないよ」

「………<<こくり>>」


倉ちゃんは無言で頷いた。

一年はまだまだ彼女たちの怒りを完全に鎮めるには短い時間だったのだ。

僕は…僕はどうなのだろう。

僕は孫策に一度殺された。だけど、僕が別段孫策が僕を殺したことを恨んでいるわけではない。ただ、孫策は人の命を軽んじた。

孫策だけじゃない。この世界の人たちは命をあまりにも軽く思う。

乱世にてつづく戦いが死を慣れたことにしているせいなのかもしれない。

だけど、孫策は孫家と誇りのために人を殺し、そしてそれが間違っていることを知っている上でも誇りのために退かなかった。

僕はそれが気に入らない。


だから、最初に孫権を見た時、彼女が姉のことを憧れると言ったから彼女もまたその一種だと思った。

だけど、よくよく考えてみると、孫権にはまだまだ見所がある。

もし、孫権が孫策と違う道を歩けるような人物であれば、孫策が例え人の上に立つものとしての誇りのせいで命を軽んじるとしても、今の孫権ならまだ間にあうかもしれない。

孫権はまだ人の命の重さ、自分の一族の誇り、2つを共に持っていくことが出来るかもしれない。


「僕が孫権と話をしてみる」

「あの、北郷さん、その前に…」

「うん?」


真理ちゃんは懐から何か丸いものを僕に差し出した。


「これが雛里お姉さんが居た部屋にあったらしいです。周泰さんが見つけてくれました」

「………何だ、これは?」

「分かりません。北郷さんは知ってるかと思って……さっきまではなんか点が光ってましたけど、途中で何か間違ってまた消してしまいました」


円盤形で……何か受信機?

でも、どうしてこんなものが……


「いや、まてよ…だとすると……」


あった、スイッチ…


「!」


ボタンを押すと、機械のスクリーンに2つの点が点滅していた。


「……発信機……」


鞄に発信機が入ってある!?


「何なんだ、そりゃ?変な形してるな……」

「……真理ちゃん、僕の鞄を江賊たちが持っていったって?」

「はい」

「……はっ…ははっ!」

「北郷さん?」「…一刀?」


顔を緩め笑う僕を見て、真理ちゃんと倉が心配そうな顔で僕を呼んだ。


「これは発信機と言って、この中央に光ってるのが僕たちの居場所で、離れたところで光ってるのが発信機が付いている場所、つまり僕の鞄を示しているんだ」

「………どういうこと?」

「てわわ、じゃあ、その点の光ってる方向に行くと…」

「雛里ちゃんが攫われた船を見つけることが出来る」

「なんだと!?それは本当か!」

「ああ」


雛里ちゃん、待ってろ。

今にでも助けに行ってあげる。


「船は要るな……凌操、お前たちの船に乗ってもらえないか?」

「あぁ……俺が決めることじゃねーな。大体お頭がああだし…」

「はぁ!?あいつらまだやってんのか?ったく……僕が一分で片付けてくる」

「てわわ…北郷さんいきなり張り切ってます」

「……いつもの一刀だ」


<pf>


蓮華SIDE



お母様が亡くなられる時、私はそこに居なかった。

私と小蓮は建業に残って張昭や百合と一緖に勉強をしていた。

だけど、そんな時突然荊州に行かれた母が奇襲に会って亡くなられたことが分かった。

間もなく、姉さまが建業に戻って来る間もなく、揚州の豪族たちは母様がない隙に豫州の袁術と手を組み、私たちを揚州から追い出した。

姉さまと出会うこともできず、私たちはそのまま袁術軍に捕まれて荊州と豫州の各地にバラバラにされた。

姉さまがその後残った軍勢を連れて袁術の手下に入られた。今でも、お姉さまは時を待っていられるだろう。


母様を殺したのは袁術の策だ。

今までそう思っていた。

だけど、突然この江賊のお頭が自分が母様を殺したなどと言いながら現われ、許しを請っている。

私は彼女を許すことができない。だって、彼女の言う言葉が正しければ、彼女は孫呉の敵だ。


もしお姉さまがここに居られたら、姉さまは迷いもなく彼女を斬ったであろう。

だけど、私にはそれができない。

彼女を憎まないからではない。ただ人を殺したことがないからだ。

人を殺すことへの違和感が、私を未だに戸惑わせていた。

馬鹿馬鹿しいぞ、蓮華。お前もいつかは戦場に立つ時が来るんだ。

その時もお前の敵を目の前にして殺すことが怖いなどと躊躇するつもりなのか。

ここに明命があるとしたら、彼女はきっと私が言う前に彼女を殺していただろう。


「お困りの様子で?」

「!」


隣を振り向くと、あの男がさっきとは違う爽やかな表情をして立っていた。


「許してあげればどうだ?」

「……貴様、こいつが何をしたとわかっているだろ?」

「お前の母を殺した。だからなんだ。お前も殺すというのか?」

「当たり前だ。母様の仇、孫呉の一員として許すわけにはいかない」

「口はいい。で、いつ殺す」

「……っ」


彼の問いに私は何も言うことができなかった。

殺すべきだ。それは分かってる。だけど……


「殺す度胸も無いくせに…自分が所属している集団の仇だと言う理由で許すことも出来ず、だからって自分の手で裁くこともできずにただ睨むだけ。孫文台はお前をそんな風に優柔不断になれと教えたのか」

「!貴様も母を愚弄する気か!」

「お前の母を今愚弄しているのは誰でもないお前自身だ」

「なんですって!?」

「お前の母は戦場で亡くなられた。戦場は人を殺すこともあれば自分が殺されることもあるというものだ。それが戦場だ。戦場で誰が誰かを殺して仇を呼ぶぐらいならこの乱世で誰かの仇じゃない人もあるのか?」

「それは…!」


何だ、この男は…私にこいつを本当に許せというのか?何もしないままに……!


「貴様はこいつのせいで私たちがどんな目にあったか知らないからそんなことを言って…」

「お前の姉は山で畑を耕していた火田民を皆殺しにした」

「!?」


何を言っているの…?


「姉さまがそんなことをするわけ…」

「僕が見たさ。そして、お前を守った彼女は、その孫策に殺された人たちが娘のように育てた娘だ」

「……!!」


そんな……

じゃあ、あの子も私たちのように育て親を殺されたというのか?

しかも、それをやったのがお姉さまだなんて……

嫌、そんなことあるはずが……

でも、だとすれば、最初に私に対して冷たかったこの男の態度も理解できる。

まるで私が今この女にやっているように……


「解るか?あの娘の目で見たら、お前は甘寧のような立場なんだ。もしあの時、お前が江賊たちに囲まれていた時あの子がお前を見つけなければお前は周泰が来る前に江賊に攫われていたかもしれない。僕の連れのようにな」

「……ぁ」


もし、あの子が私のことを知った上に、江賊に囲まれている私を見逃していたら……


「お前が思っているのが復讐でなければ、甘寧を許してやってくれ。…でなければ、僕たちも僕たちの仲間を助けることができない」

「……その話は、本当なのか?」

「…孫策は彼らが街を襲ってなかったことを知った上でも孫呉の誇りを守るためにと彼らを一掃しようとした。お前が見るにお前の姉は憧れの対象かもしれないが、倉にとって孫策はただの殺し屋で、家族たちの仇だ」

「それでも…私を許してくれたというの?」

「……それはお前次第……お前に人を許すほどの器があるとすれば、人に許されることもまた出来るだろう」

「………」


女、いや、甘寧は今の話を聞いているのか、否か、ただ伏せたまま微動もしなかった。


「……あなた、立ちなさい」

「はっ」


甘寧は私が呼んだ途端その場から立った。


「あなた、母様を殺した罪を晴らすために今まで長江に居たですって?」

「はっ、私の罪の微塵でも償うため、長江を荒らす江賊たちを…」

「そんなに頑張っていたのに、どうして私は江賊に囲まれていたのかしら」

「!!それは…!」

「ここのこの男が居なかったら、私も今頃奴らに囚われていたでしょうね。そしたら、あなたに私を助ける術はあったのかしら…」

「……それは……」

「だから、こうしましょう。あなたは彼の言うことに従って、江賊に囚われた彼の連れ戻しなさい。そうすればあなたのことを許すこと、考えてあげていいわ」

「……」


甘寧は一度彼のことをちらっとみた。

そして、


「分かりました」


ほぼ考えることもなく、彼女は私にそう答えた。


「これでいいわよね?」

「……上出来だ」

「!」


その時私を見る彼の目は、まるで母様がまだ生きていた時、私が本当に良く出来た時にしてくれるような目だった。

男にこの比喩はおかしいかもしれないけど、彼の目は本当に私のことを褒めてくれそうな目をしていた。


「っと、そういえば、ちゃんと名前を言ってなかったな。僕の名前は北郷一刀だ」

「……孫仲謀よ。よろしく頼むわ」

「こちらこそ……『これから』よろしく」


彼が手を伸ばしてきて、私は一瞬迷ったが、特に違和感無しで彼の手を掴んだ。


「…それじゃ、甘寧」

「思春とお呼びください」

「…それが貴女の真名?」

「はっ、これよりあなたに忠誠を誓います」

「……江賊であるあなたが、私にそんなことを言っていいの?」

「私がやっていることはあくまで孫堅さまへの罪を償うためのもの。この仕事が終われば、江賊団を解散させあなた様に仕えたいと思います……無論、私などを受け入れてくれればの話ですが……」

「……そうね…今は、その話はまだ保留にしましょう。私一人だけで決めることではないわ」

「御意に…」

「だけど…」


彼女の真っ直ぐは意志は、私でもちゃんと感じられた。

彼女のこの志が、孫呉への忠誠心へと変わるのであれば、きっと後々大きな力になるだろう。

姉さまが許してくれればいいのだけれど……


「あなたのその意志を見て、私からもあなたに真名を預けましょう」

「!」

「私の真名は蓮華。これからはそう呼んで頂戴」

「……はっ、蓮華さま!この剣に誓って、あなた様を必ず守って見せま……」

「せやーーーっ!!!」


ガチン!


……へっ?



<pf>


明命SIDE


「はぁ……結局あのおじさんからは大した情報を得ることができませんでした」


どうやら彼は江賊たちとは旅館でのみ会っていたらしく、他に彼らに対して持っている情報はまったくありませんでした。

このままではまったく当てがありません。


「いえ、まだ希望はあります」


私が見つけたあのからくり。あれが何か鍵になってくれるかもしれません。

そう思った私は急いで港に戻ってきました。


「あ、周泰さん!」


戻ってきたら諸葛均さんが遠くから私のことを気づいて呼んでくれました。


「諸葛均さん、申し訳ありません。大した情報は得られませんでした」

「そんなことないです!周泰さんのおかげです!」

「…はい?」

「あのカラクリがあると、雛里お姉さんの居る場所が解るらしいです。逃げた江賊団の船の居場所をを追う事ができます」

「本当ですか!?<<パァッ>>」


よかったです!じゃあ、私は役に立ち……


「……<<ギロリ>>」

「あ」


うっ、何かまだ倉さんの目付きがきついので黙った方が良さそうです。


「…倉ちゃん」

「………ありがとう」

「はい、すみまs……へっ?」

「……ありがとう」


・・・


!!


「はい!ありがとうございます!」


やりましたよ、蓮華さま!

やっと倉さんが心を開けてくれました……って…蓮華さまはこの話まだ知らないはずですけど……


「誰だ、この小娘は…」

「!!」


な、なんですか、このこっついおじさんは?!


「二人とも離れてください!」

「あ、大丈夫です。この人は鈴の音江賊団の……」

「江賊団!?」


危ない人です!


ガチン!


「うおっと、危ない」


瞬時に剣を抜いて振るいましたが、相手の男は難なくそれを捌ききりました。


「!こんな早く私の攻撃に対応するなんて、何者ですか!」

「俺か?俺は鈴の音江賊団の副頭、名は凌操、昔は毒蛾で通っていたな」

「……蓮華さまをどうしたのですか」

「…あそこに居る姫さまのことか?」

「!」


その時男の指したところで、見知らぬ女が蓮華さまと例の殿方の前で剣を抜いている姿を見ました。


「蓮華さま!」

「てわわ!周泰さん、だから違いますってばー!」


後ろで諸葛均さんが叫ぶ声が聞こえず、私は直ぐに港に走りだして、蓮華さまの前に立ちました。


「!!」

「せやーっ!」


ガチン!


一度私の攻撃を捌いた相手は、そのまま後ろに下がりました。


「……何奴だ」

「蓮華さまには指一本触れさせません!」

「……明命」

「蓮華さま!急いで逃げ……」

「明命!」


ピクッ!


「は、はい!」

「そこに正座なさい」

「はい!?」

「いいから正座なさい!」

「…周泰、そこに直れ」

「えっ?ええっ!?」


殿方の方まで、一体私が何をシたっていうのですか!?私はただ、危険そうな蓮華さまをお助けしようと……


「「正座!!」」

「も、もうしわけありません!」

「………はぁ…」



<pf>


一刀SIDE


『私は空気の読めないダメ護衛武将です』


「シクシク……」

「…なぁ、孫権、ちょっとやりすぎじゃないのか?」

「いえ、さっき私から離れて勝手に動いた件も含めて、今日と言う今日は許してあげないわ」


突然現れて甘寧とうまく行っている話を絶った周泰は、罰として跪いたまま両手を挙げている。

まるで子供も叱り様子だ。

後、おまけにうまく消せない墨で両腕に上の文章を書かされて、額にもダメ明命とか書かされた。

……罰というか何かの嫌がらせだ。


「大体あなたは護衛武将として自覚が足りないのよ。いつも居つの間にか消えているし、私が困ってる時にはぴったり側に居なくて私がどれだけ大変だか分かってるの?今日だっていきなり私の隣から居なくなったじゃない!」


……どうやら以前からたまったものがあるらしい、そっとしておこう。


「あ、あれは…!他の蓮華さまの身に危険なものがないか先に行って偵察をしようとしたのが……」

「どうせ途中で猫を見つけてじゃれあってきたのでしょ!?」

「はうあっ!?」


図星かよ!

猫にホイホイ釣られて主を一人にする護衛武将ってオイ……


「あなたに猫を嫌いになれというわけではないわ。でも程というものがあるでしょ?あなたは私より猫の方が大事なの?」

「そんなことはありません!私の一番の任務は蓮華さまをお守りすることです!」

「その口振りをしながら、蓮華さまを何度も危険に合わせてきたというのか」

「うっ……」


甘寧までもが加勢した。

さすがに周泰もやりすぎの感はあるが、そろそろ助けてあげてもいい頃だと思う。


「そのぐらいにしておけばどうだ、孫権」

「一刀……」

「……」

「結果的には孫権も大丈夫だったわけだし、それに周泰がなければコレを見つけることもできなかったんだ」

「何なの、それは?」

「これは携帯用のレーダだ。ここに光ってる点が見えるだろ?この点がある方向へ行くと、あの江賊団があるところに辿りつくことが出来る」

「何!?」


甘寧が驚いたような顔で僕を見た。


「そんなことが本当に出来るの?」

「ああ、雛里ちゃん…連れの娘が誘拐された旅館の部屋で周泰が見つけてくれたものだ」

「……そう…」


蓮華はそれを聞いて少し厳しい目で周泰を見て……


「私が知らないところで頑張ってくれたから今回はコレぐらいにしてあげましょう」

「は、はい!」

「ただし、その墨は取れるまでそうしていなさい『はぅぅ……はい』」


容赦ないな……まぁ、このぐらいで良いか。


「じゃあ、それがあったら直ぐに白鮫江賊団の後を追えるの?」

「ああ、だから、今直ぐにでも甘寧の船で奴らを追って欲しい」

「分かった…直ぐに準備をしよう」

「周泰、よかったら彼処に居る三人に話を伝えてくれ」

「はい!……あ」


元気よく立ち上がって行こうとする周泰だったが、ふと自分の腕と顔に書かされたものに気づいて、一瞬猫のような顔で孫権の方を見つめたが…


「行ってきなさい」

「…はい」


孫権は厳しかった。



<pf>



「…一刀?」

「うん?」

「先の話……私も倉あの子に謝っておいた方がいいのかしら」

「……孫権の気の向くままにしたらいい…あいつも鬼じゃないし、孫権が甘寧を許したら自分も許すという約束をしてあるからな」

「そんなことしたの?」

「そうでもしなければ納得しそうになかったからな」

「だけど…家族を失ったのは彼女でしょ?あまり強制的にそんなことを言ったら……」

「大丈夫だ。あの娘もただきっかけ必要なだけだ。心からは復讐しようなんてことも思ってないし、相手が厚かましく出ない限りは許してあげるつもりはあるだろう」

「……そうかしら」

「そう心の中で不安にしてないで、後で直接ぶつかって見るといいさ」


許した側から許されてもらう側になった孫権の顔は明らかに不安な表情が残っていたが、彼女は心配しているよりはうまくいくだろうと思う。

誰も復讐なんてもの良いことだと思っていない。増して何もできないくせに延々と相手を恨み続けるなど、消耗的でなんの意味もないことだ。

それがわかっているなら、後は自分が本当に望んでいることがなんなのか気づけば簡単だ。


人は自分の傷を忘れるために誰かを恨むのだ。

本当にその恨む相手に復讐したところで、すっきりするどころか新たな不安だけが残るまでだ。

裴元紹たちは彼女に生きて欲しかった。そして生きていくなら幸せに生きる方が断然良い。

過去の傷を振り向かずに、敵を許すことが、まず倉の心をすっきりさせる第一歩になるだろうと、僕はそう思う。


「……クスッ」

「はう!笑わないでくださいー!」

「小娘、何だそのカッコは……ククク」

「笑わないでくださいでってばー!」

「ふふっ」


向こうから周泰の泣き声混じった声孫権はクスクスと笑った。


「あ」

「どうした?」

「…久々に笑えた気がするわ」

「そうなのか?」

「ええ……母様が死んだ以来、初めてかも……」

「よかったな。後で周泰に感謝しないとな」

「そうね……そういえば…」

「うん?」

「あなたの連れの娘は…私のこと恨んでないかしら」

「…どうかな……」


雛里ちゃんの場合……あまりそんな恨みするとか考えられないけど……良く分からない。


「大丈夫だろう、多分。あの子もちゃんと説明したら解ってくれる」

「どんな娘なの?」

「……そうだな…天女って感じ?」

「何それ」


ああ、早く会いたいな、雛里ちゃん。

もう何時間も見てないから…(※江賊が消えて今に至るまでたかが三時間ぐらい過ぎてます)


・・・


・・






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