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第二章 七話 これは浮気ですか?(後編)

……真理ちゃんをもうちょっとちゃんと出せたらこれ書かなくてもよかったなーと今更思ってみる


奏が途中で空気なのは出て行ったからです。

一刀SIDE


「雛里ちゃん?」


コンコン


がちゃがちゃ


「……」


直ぐに雛里ちゃんのこと追いかけたが、雛里ちゃんは自分の寝室に入って、中から鍵をかけて閉じこもってしまった。

無理やり入ろうとするとできないこともないが、まだ雛里ちゃんがどうしてあんな行動をしたのかも不確かなまま、激昂な状態の雛里ちゃんをせめるのは良くない。

しかし、一体どうして雛里ちゃんは逃げ出したんだろ?

そして最後のあれって何?浮気者?誰と?真理ちゃんと?あそこには僕と雛里ちゃん以外には真理ちゃんしかいなかったわけだし。

いや、でも真理ちゃんとはそういう関係でもなければ、雛里ちゃんは真理ちゃんのことを知ったばかりだ。


「…いや、だからか?」


確かに真理ちゃんとは豫州の時の密会とかもあるし、もし雛里ちゃんがそういったことを知ったとしたらそう思ってくるのも自然かもしれない。

いや、でも真理ちゃんがあの間塾に居なかったことって、倉ちゃん以外には誰も気づかなかったぞ?倉ちゃんがそんなことを敢えて雛里ちゃんに言うはずもない。


「じゃあ、何だよ……一体何が原因で……」





「はわわ、北郷さん?」

「あ」


僕が後を向いたら、


「どうしてここに居るんですか?」

「孔明……」


孔明が僕の後に居た。

そういえば、ここは雛里ちゃんの部屋であると同時に、孔明の部屋でもある。

二人一室制だった塾は、学園を閉じてからもそのまま動いて、今孔明と雛里ちゃんが一部屋、倉と奏が一部屋、あとは真理ちゃんと百合さんが一部屋となっている。

途中で奏が孔明たちの部屋に乱入することもあったが、結局は百合さんに制裁されたのでおとなしく倉と一緖に寝る(もちろん倉だっておとなしくその部屋で寝ることもないが)


「何か用でもあるんですか?」

「いや、そうじゃなく……雛里ちゃんだが…」

「?」


孔明は僕の言葉と様子に何か察したのか私が退いた門を開こうとしてみる。

もちろん未だに門を閉ざされている。


「雛里ちゃん?」

「………」


中は静かだ。

泣く声とかも聞こえない。


「……雛里ちゃんに何かしたんですか?」

「…良く分からない」

「わからないってなんですか?北郷さんが知らないと誰が知ってるというですか?」

「知らないものは知らないんだよ。僕も今混乱してるから」

「っ……!」


孔明は納得いかない顔をするが、僕だって本当にどうなってるのか分からない。

僕は何か雛里ちゃんの気を損ねるようなことをしていたのか……


「朱里お姉さま、北郷さんのこと責めないでください」

「!真理ちゃん」

「え?……!」


そんな時、ふと気づけば真理ちゃんが僕の側に立っていた。

孔明も、真理ちゃんの姿に気づいて驚いた顔をした。


「……私が説明します」


<pf>


真理SIDE


私が北郷さんの後を追いついた時、北郷さんは何もせずに鳳統お姉さんと朱里お姉さまの部屋の手前に立っていました。

何も言わずに、ただそこに立っている姿があまりにも消沈になっていて、私の気まで落ちそうになりました。


で、その時朱里お姉さまが現われました。

朱里お姉さまは確か鳳統お姉さんの一番の友たちですし、北郷さんと鳳統お姉さんの関係に一番関わり易い立場でもありますが、朱里お姉さまが分からないことがあります。

それは、私がこの事件に関わっていることです。

元を言うと、この状態は私の責任の分が大きいです。

でも、私が関わってることを知らない朱里お姉さまは北郷さんのことを責めます。

私はそんなことは見てられません。


「真理ちゃん、どうしてあなたが…」

「朱里お姉さま、このことは北郷さんばかり責めて済むことではありません。私も責任があります」

「……え?どういうこと?」

「真理ちゃん……?」


朱里お姉さまはあっけない顔をして、私の気持ちを知らない北郷さんも私がここまでする理由が分からずに居ます。


「取り敢えず、他の所に行きましょう。今は、鳳統お姉さんのことはそっとして置いたほうが良いです」

「………分かったよ。百合お姉さまの部屋に行こう」

「え、でも百合さんには……」

「はい、その方が良いと思います」


北郷さん、ごめんなさい。北郷さんにとってはこれは北郷さんと鳳統お姉さんの間だけの問題かもしれませんが、私はこの問題を解決するにはお姉さまたちに認めてもらわなければなりません。


私が北郷さんを好いていること。


・・・


・・



がちゃ


「キャハ?」

「はわ、カナちゃん?」


百合お姉さまの部屋に行くと、何故か元直お姉さんもありました。


「……三人とも来たのね」


椅子に静かに座っていらっしゃる百合お姉さまはまるで私たちが来ることを知っていたかのように、私たちを迎えました。


「きゃ…は……じゃあ、カナはこの辺で…」

「座りなさい、奏ちゃん」

「…はい」


私たちが来るのを見て席を外そうとする元直お姉さんを、百合お姉さまは遮りました。


「カナちゃんがどうして今ここに居るの?倉ちゃんは?」

「………」

「…カナちゃん?」


いつも快調で、何事にも笑い流す元直お姉さんの顔は今は笑っていません。

もしかして、今回のことに、元直お姉さんも何かしら関わって……?


「雛里ちゃんは今どこに…?」

「…百合さん、どうしてそれを…」

「奏ちゃんが二人が中庭を通りすぎるを見たそうです。それで、雛里ちゃんは今部屋に居ますか?」

「……はい」

「そうですか……北郷さんは何か心当たりが…?」

「………無い…とは言えませんが」

「そうですか……」


百合お姉さんは大体の話は予想つくとばかりの顔で私たちを見ました。


「……っ」


そして、主に私に顔を見ながら、


「そこに座ってください。そして皆今日雛里ちゃんとの出来事をありのままに話してください」


<pf>


一刀SIDE



話の中、大体状況が理解出来た。


雛里ちゃんは真理ちゃんの存在に気づいた。

そして僕が真理ちゃんと長い間、自分も知らないところで一緖に居たということに気づいて僕が自分以外の他の娘に興味を持って僕が浮気をしてると言いながら部屋に閉じこもった。

でも、そもそも雛里ちゃんは真理ちゃんの存在に驚きするはずだが、だからって逃げ出すほど弱い娘ではない。誰か雛里ちゃんを不安になるようなことを言ったのだ。

そしてそれが奏だ。

奏のからかいが過ぎた言葉が、雛里ちゃんに不安を持たせた。そして僕と真理ちゃんを見てそれが薄らながら現実的な話に見えた途端、僕との関係が一瞬崩れたように覚えたのだ。

だから逃げ出した。だから僕の話を聞こうとしないんだ。


「………」


だからと言って、奏を責める気にはならない。

確かに原因になったのは奏の言葉だが、僕も確かに雛里ちゃんがそう思うようなことを言った。

そして、それがあながち雛里ちゃんの勘違いとも言えない。僕があまりにも無防備だったせいかもしれない。

真理ちゃんは雛里ちゃん以上に寂しい娘だった。

真理ちゃんには血のつながりのある姉が二人もいたけどいつも一人だった。

彼女の特殊な性質が彼女をいつも一人にしていた。だから彼女も自分の存在を気にしてくれる僕から離れることを好まなかったし、そんなことを知っていた僕もあまり意識して彼女のことを引き離すという非道いことは出来なかった。

それが、雛里ちゃんにとって自分以外の女の子と仲良くしてるように見えたと言えば、それは勘違いとは言えない。だって見たままそれだからだ。

僕は彼女が思ってるように浮気をしていたのだ。


「あまり軽く考えていました」

「………」

「僕はただ……旅がしたかった。連れて行く人は多いほど良い、雛里ちゃんだけじゃなく倉も一緖に行くし、真理ちゃんも一緖に連れていきたいと思ってそのうち真理ちゃんを雛里ちゃんに紹介しようと思っていました」

「でも、なかなかそうする機会がなく、こうした最悪の出会い方になってしまった、というわけですか?」

「……はい」


少なくとも、雛里ちゃんにとってはそうだろう。


「甚だしいと思わないのですか?」

「……っ」

「私はちゃんと覚えています。雛里ちゃんはあなたに初めて告白された時あなたの想いが重すぎるほどだって言いながら泣いていました。なのに今は北郷さんが、今まで存在さえ知らなかった私の妹のことを自分よりも好きだって思ってるんですよ?北郷さんが雛里ちゃんのことを好きだと言ったのがその程度のものだったとすれば私は…」

「朱里ちゃん…言い過ぎです」


僕がなんと言う間もなく、百合さんは孔明を止めた。

でも、伝わることは全部伝わった。


「百合お姉さま」

「あなたが混乱することは良く分かります。でも、この状況は一刀さんだけのせいではありません。色んな状況が重なってできたものです。奏ちゃんが雛里ちゃんに北郷さんを他の娘にとられるかもしれないと言って、北郷さんが更に彼女を不安にさせることを言い、最後に真理ちゃんのことを知る。その中で一つでもなければここまで状況が悪くはならなかったでしょう」

「………雛里ちゃんは私の一番の友だちです」

「…っ」


孔明がそう言った時、黙って俯いていた奏の顔が引きずったが、孔明には今そんなことは見えなかった。


「そして、真理ちゃんは私の妹です。どっちでも一刀さんのせいで心に傷を負うことになれば、私は北郷さんのことを許しません」

「……それは私も同じ意見です。でも朱里ちゃん、あなたも私も、この状況に関わったところで何の得にもならない人たちです。本当に雛里ちゃんのことを思うのなら、北郷さんを責めることよりもすべきことがあるはずです」

「………」


百合さんがそこまで言うと、孔明は口を閉じた。


「……これからどうするつもりですか?」

「………良くわかりません」


頭が真っ白だ。

こういう時なら少しいい考えが浮かんでもいいはずなのに、どうしたら良いか分からない。

このままだと、旅自体できなくなるかもしれないとさえ思えてくる。


「取り敢えず、雛里ちゃんが落ち着くまで待って話を……」

「待っていちゃダメです。今直ぐ行った方がいいです」

「え?」「真理ちゃん?!」


突然真理ちゃんがそう言って僕も孔明もびっくりした。


「これは、お姉さんたちと北郷さんが思うほどやましい問題じゃありません。北郷さんが鳳統お姉さんを好きだということは、誰がどう見ても明らかです。それが信用できないとしたら、本当に悪いのはこの中にいる人じゃなく鳳統お姉さんの方が本当にいけないんです」


そして続いて、真理ちゃんは僕に向かって言った。


「一刀さん、今直ぐ鳳統お姉さんのところに行ってください。門なんてこじあけてもいいですから。そして、北郷さんが好きな人が誰なのか、鳳統お姉さんにはっきりさせてください。もうこんな馬鹿なこと二度と起きないように…」

「……真理ちゃん」

「早く!」

「わ、……分かった」


いつもとは違う真理ちゃんの気迫と、あと本当のことを言うと真理ちゃんの言った通り早く雛里ちゃんが居るところに行きたかったので僕は先に百合さんの部屋を立ち去った。


<pf>



真理SIDE


北郷さんが立ち去った後、私は二人のお姉さまたちを見ました。

横にらしくなく顔を俯いている元直お姉さんのこともいましたが、また今度いつこういう機会があるかわかりません。


「朱里お姉さま、私、北郷さんの旅に付いて行こうと思います」

「!」


朱里お姉さまにはこの話を初めて言いました。

百合お姉さまには前に話したことがありましたけど、朱里お姉さまに言うのは百合お姉さまにするよりも勇気が必要でした。

だって朱里お姉さまは既に親友の鳳統お姉さんを行かせることになっているのに、私までも北郷さんについていくとしたら、きっと朱里お姉さまには大きな傷となるでしょう。

でも、私は気づいてしまいました。

今まで私だって、お姉さまたちによって散々傷ついてきたということを。ここで私が私に残された最後の機会を失うとすれば、私は延々と傷ついたまま世を生き続けるでしょう。


それは嫌です。


「お姉さまが北郷さんのことを好きじゃないのは分かります。でも、あの方は私のことを今まで誰よりも解ってくれた人です。お姉さま達よりもです」

「……私が姉として足りなかったと言いたいの?」

「……お姉さまは個人の人として大きすぎたのです。私の存在が他の人たちから全て消されてしまうほどに」


私たちが三姉妹になる時、お姉さまは既に水鏡塾で首席でしたし、まだ塾にはいる前の朱里お姉さまも村で天才と呼ばれていました。

そんな中で産まれた私は、そんな姉たちの級に及ばないという理由だけに人たちから忘れられて、誰一人私のことを気づいてくれませんでした。

これはただ私の特殊な体質のせいではないのです。二人の天才姉たちが、凡才を持っていた妹の存在を社会から消していた。


「それとも…凡才で産まれた私のせいですか?私がお姉さまたちほどの才を持ってなかったのが原因だと言いたいんですか?」

「真理ちゃん……」


朱里お姉さまは悲しい目で私を見つめるばかりです。

何も言えないのです、この人は。あくまで犠牲にされてきたのは私の方ですから。そしてそんな中でも今まで何も言わずに二人を慕って来たのも私です。

だけど、もうそのままだと私は永遠にこの負の連鎖を断つことができません。

いつまでも傷ついて、お姉さまたちに頼って、それでもっと傷つく……

私も人に慕われたいんです。人たちに認められて、愛されてみたいんです。

そのためには、お姉さまたちの懐の中から出ていかなければなりません。


北郷さんとお姉さまたちの違い。

お姉さまたちは私のことを愛してくれます。それは解ってます。でも、もしお姉さまたちが私のお姉さまたちじゃなかったらどうでしょう。

きっと他の人たちみたいに私のことを気づかずに居るはずです。ただ姉という縁がなければ、この天の才をもった人たちが私なんかのために頭を振り向いてくれるでしょうか。そんな余裕なんて、あるはずもありません。

でも、北郷さんは違いました。

あの人は私がいる場所まで降りてきてくれます。

いつも私と同じ視線を見て、私が望む前からも私のことを気づいて、つきあってくれます。

それが嬉しかったのです。

嬉しくて……一生この人に尽くしたって良いって思ったんです。

私の才はただの凡才だけど、だけど、力になりたい。この人なら、こんな私でも、朱里お姉さまや百合お姉さまみたいに大事にしてくれると、そう確信しました。

私にとって、こんな人、こんな主人、もう二度と現われないかもしれません。だって私ほどの才の人は世に溢れているのです。増して存在すら危うい私を気づいて使ってくれる人って、北郷さん以来もう存在しないでしょう。


だから、私は行きます。

例え早いと思われても、まだまだ未熟だと思われたってかまいません。

私はあの人について行きます。

私を大事にしてくれる世界で唯一の人のために。

私が愛することが出来る唯一な人のために……


「真理ちゃん」

「はい、百合お姉さま」


百合お姉さまは前にもう私の話を聞いてくれています。

私が北郷さんに付いて行くことに最初はちょっと違和感を持っていましたが、私の気持ちを解ってくださいました。

でも、朱里お姉さまと同じく、あまりにも唐突過ぎたことには代わりないでしょう。


お姉さまたちは天才としても、私にとって最高の姉とはとても言えない人たちでした。

でも、私もまた平凡な妹よりも劣っていたことには気づいているつもりです。


「これだけはわかっていてください。どこに居ても、あなたは私の妹です。どこの誰もがあなたのことをないがしろにしても、私たちはあなたのことをいつも守りたいと思ってましたし、これからもそう思い続けます」

「!」

「だから、あなたも私たちのことを恨まないで欲しいわ。たとえ良い姉でないとしても、あなたの姉として残っていたい。これから例え私たちがどこかで反目する仲として会うとしても、私はあなたのことを愛する姉で居ます。あなたも、そうであって欲しいわ」

「………分かりました。…ありがとうございます、百合お姉さま、朱里お姉さま」

「……真理ちゃん!」


そしたら、朱里お姉さまはそれまで黙ったまま痙直していた体を動かし私を抱きしめました。


「ふええーーーん、行かないでーー!」

「……!」

「私たちとずっと一緖に居よう!ね?お願い!」

「……ごめんなさい、朱里お姉さま」

「……うぅぅ……」

「朱里……」


朱里お姉ちゃんは、暫く私を抱えてそう泣いていました。



<pf>



一刀SIDE


コンコン


「………雛里ちゃん…」


中は未だに静か。門を開けてくれそうな気配もない。

もしかしたら、泣き疲れて寝てしまっているのかもしれない。


「…入るよ」


この時代の中国の家の門に付いては良く分からないが、これが結構脆くて、ちょっと力を入れると鍵が無くても門が開ける。


がくっ

がちゃ


「!」


中に入ると膨らんでいる布団が少し動いた。

どうやら起きていたようだ。


「すまん、勝手に入っちゃった……聞いて欲しいことがある」

「………」


雛里ちゃんは今僕のことをどう思ってるだろうか。

軽蔑してる?僕なんかと旅をする気など失せているだろうか。

どうしても最悪の状態を想定してしまうのは、それほど僕が雛里ちゃんに依存している証拠であるのだろう。

こんな僕が、雛里ちゃん以外の相手と付き合うなんて、自分自身でさえそんなこと考えられない。

なのに、雛里ちゃんは僕が真理ちゃんとそういう関係になってると、そう思ってるのだろうか。

それとも単に自分以外の女の子と必要以上に仲良くしている光景を見て僕を遠く思ってしまったのか。


ぎし


布団に腰をかける。

それでも雛里ちゃんは布団から出て来なかった。


「…………」


なんと話そう。

この体でも、お話はあまり得意げじゃなさそうだからなんと言えばいいのか……こういうことは経験が圧倒的に不足してる。


今一番不安なこと…


「僕のこと嫌いになった?」

「……」


返事がない。


「……そうなんだ」

「………」

「じゃあさ…どうせ嫌われちゃったんだから、どことんまで嫌われるようなことしてもいいよね」


やっぱ言葉でどうこう言う性格じゃない。

布団ごと抱きしめてみる。どこがどこかは分からないけど。


ガバッ


「!あわわ!!(布団の中)」

「そうだな……このまま布団ごと連れて行っちゃおうかな。まだちょっと明るいけど」


そう言ったら更に布団の揺れが激しくなるが、なんとかして出させない。


「雛里ちゃんが僕のこと嫌っていても構わない。僕は雛里ちゃんのことが好きだから。だから、ずっと一緖に居よう。雛里ちゃん(ヤンデレではなくただの病みモード)」

「<<もそもそっ>>か、か、かずとさん!!」

「あれ?良く考えてみたら旅とかどうでもいいね。僕は雛里ちゃんと一緖に居たらどこに居ても旅してる気分だから。よかった、雛里ちゃんが側に居てくれて僕すっごくうれしい(もはや演技じゃなくなってくる)」

「らしてくだヒャい!!!!」

「ああ、暴れる雛里ちゃんもかわいばらっぐっ!」


布団の中で暴れていた雛里ちゃんの脚(多分)が僕の顔に直撃したのはその時だった。

何か変な声がしたが気にしない。


「ぷはーっ!一体何のつもりですか、一刀さん!」

「あ、出てきた」

「………」

「……ねー、雛里ちゃん、僕のこと嫌いになったの?」

「………」


またも返事なし。

これは、もう、完全に機嫌損ねてるよね。


「旅さ、やめる?」

「どうしてそんなこと言うんですか?」

「だって、嫌いな人と一緖に旅なんてしたくないだろ?」

「誰が嫌いになったって言いました?愛してるに決まってます」


……………


…………


………


……


システムに深刻なダメージが発生するリスクがあったためリブートします。

しばしお待ちください。


<pf>


雛里SIDE


まったくもう…いきなりはっちゃけたこと言うのは相変わらずなんですから。

こんな時だって…私さっきまですごく真剣に悩んでたのに一刀さんのせいでもうわけわかりませんよ?

一体この人はどうしてこんな真面目さが足りな……


「一刀さん?」

「………」

「……あ」


あ、ダメ。

この人また花畑まで旅立ってます。

これだから敢えて返事を控えていましたのにまったく世話の焼ける人です。


「……どう悩んだって、一刀さんのこと嫌いになるなんて、できませんでした」


最初は一刀さんが元直ちゃんの言った通りに他の女の子と一緖に居るのを見て、私のこともう嫌になったのかなとも思いましたが、私の心の奥から「そんなはずはない」という確信が湧いてくるんです。

どこから出るんでしょうか。この勝手な妄想は。

こんな自分勝手が女の子を、いつまでも愛してくれるそんな都合良い人なんて、居るはずないと思ってでも、一刀さんだけは……一刀さんなら大丈夫だって本気で思ってる自分が居ます。

そして、


「私が好きって言うだけでもこうなってしまうんですから、疑いの欠片もできません」

「……うん?何?」

「聞こえませんでした?もう一度言ってあげます?」

「…言って欲しいですけど、勘弁して欲しいです」


どっちですか、もう……


ああ、もう知りません。実際あれが浮気だったのかそれとも私の見間違いだったのか(そもそも朱里ちゃんの妹ってそんな人ありましたっけ)もうどうでも良いです。

私はこの人好きです。

一刀さんの言う通り、ぶっちゃけ一刀さんが私のこと好きじゃなくなるとしても私はこの人好きですので、死んでも一緖に居ます。


「一刀さん」

「うん?」

「私のこと好きですか?」

「愛してる<<きっぱり>>」

「一段階下げてもいいです(^////^ #)」

「照れながら枕投げようとしないでください……はい、好きです」

「…良いです。じゃあ、許してあげます」

「!<<歓喜に満ち溢れる顔>>」


あわわわ、やめてください、その顔。私を殺すつもりですか?


「ひなrへぶっ」


取り敢えず枕で顔を伏せときましょう。


「で、詳しい話聞かせて頂きますけど、あの娘は誰だったんですか?」

「うん、真理ちゃん?」

「はい、その…朱里ちゃんの妹って言う……私は見たことありませんよ?」

「そうなんだよね……ちょっと人の目に気づかれにくいんだ。ずっとここに居たらしいよ」

「……ほんとですか?」


私だってこの塾に結構長くいたのに、見たことありませんでした。


「で、実はあの娘も僕たちの旅に連れていきたいと思って」

「『で』って言われてもわかりません」


行くと言ったの一ヶ月も残ってないのに突発過ぎます。

そもそも今まで存在すら知らなかった人と一緖に旅に行くなんて普通……


「旅ってそんなものだろ?初めて会う人もあったりするし……今回はちょっと特殊だけど、まぁ、あんまりそこは重要じゃない」

「あわわ、そこ重要じゃないんですか?どこが重要なんですか?」

「……あのね、これからもこんなことあるかもしれないと思うからはっきり言うね」

「……?はい」

「僕はこの世で雛里ちゃんしか女の子に見えない。だからこれからも雛里ちゃんがさっき思ったようにことは起こることはない」

「………///////」


この人ちょっと殴っていいですか?


「<<パン>>うぶっ!ちょっ、何で僕枕で叩かれるの?」

「うるさいです!一刀さんが恥ずかしいこと言いまくるのが悪いんです!」

「理不尽な!」

「一刀さんが破廉恥なんです!」

「堅物!」

「一刀さんは色男です!」

「なっ!」


もう、この一刀さんとはこんなやりとりが丁度いいなと思ってきます。



<pf>



真理SIDE


「僕はこの世で雛里ちゃんしか女の子に見えない。だからこれからも雛里ちゃんがさっき思ったようにことは起こることはない」


ギュぅ


胸がいかれるような気分になります。

外から入らずお二人のやりとりを聞いていると、どうしてもあの夜の私の行動を後悔してしまうのです。

あの夜、私も鳳統お姉さんたちみたいにあの暗い森の中に飲み込まれていたら、私にも機会があったかもしれません。

あんなに愛されることが、出来たかもしれません……

で、多分、これからもこの思いは報われることはないでしょう。

それでもいいんです。私はあの二人の仲を割ることまでしたくはありません。


それに、私が北郷さんのことを好きと思う気持ちは、恐らく鳳統お姉さんが思うそれよりも遙かに低い時点のそれです。

私なんて、今まで人に気づかれることだけでも喜んでいた娘です。

北郷さんは私に優しくしてくれましたから、そんなことだけでも、私にとっては十分すぎるほどの感情に伝わってくるのです。

……あまりこう思うと、自分のことが不憫に思ってきちゃいますけど……でも、それが事実なんです。

私は、あの二人の愛のように、高次元の愛を知りません。

少なくとも、今は………

いつか今の鳳統お姉さんほど、一刀さんのことを好きと言える時が来れば……


「その時は、こんな風に助けてあげたりしませんからね……」


・・・


・・




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