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幕間2

互いの愛を確認する時間


『さよなら、雛里』


ダメ


『さよなら…』


行っちゃ嫌。


『愛してたよ、雛里』


私だけ置いて行かないで!



<pf>


雛里SIDE



「!!」


………ゆめ…か。


「今……いつ…」


外を見ると、まだ日が頂点に達してません。

二刻ぐらいしか寝てなかったみたいです。


「……」


頭の中で何があったか整理してみます。


一刀さんが死んで


「っ……」


一刀さんが死ぬのを見て、それで泣いていたら、左慈という人が現れて一刀さんに鞘を刺して一刀さんを起こしたら、一刀さんの体が火に燃えるように輝いて…そこから……

まったく違う一刀さんが現れてました。


「…一刀さん……なの?」


自身がないです。

その人は本当に一刀さんなのでしょうか。

私のことを愛してるって言ってくれた人なのでしょうか。


「行かなきゃ…」


一刀さん、今なら起きているでしょうか。


体の疲れもなんなく取れてますし、もう休憩は良いです。

早く一刀さんのところに行こうと思います


・・・


・・



一刀さんの部屋まで来ました。

一刀さん、起きているでしょうか……


がちゃ…


「………」


部屋を開けて中を見ると、一刀さんが部屋の窓側に立っていました。


「……」


こっちが入って来るのに気づいていないのか、外を向いてばかりです。


がちゃ


静かに門を閉じて、近づいてみます。


「………」


一刀さん、なんか深く考えているみたいに、窓側に手を付いて悩んでいます。

………


なんでしょうか。

この、無性に驚かしたくなるのは……


「……すー」


大きくわーっって叫んだら驚くでしょうか。


「うw」

「雛里大好きーーーー!!!」


・・・・な?


「ふぅ…これで良しと…うん?雛里ちゃん?」


な……なあああああ!!


「あわわーー!!!/////////」


<pf>


一刀SIDE


塾にもどってきて一日が過ぎた。

結局、昨日雛里はそのまま寝過ごしたらしい。

すごい疲労が溜まっていたのだろう。

まあ、無理もない。

彼女にはあのような修羅場は初めてだったのだ。僕にとっても勿論そうなのだが…

でも、僕は道場を運営しながらの経験があった。強い相手とも何度か手合わせしたこともあるし、師範という立場に立ってからは、いつも完璧な姿があり続けるためにそれまで以上に修練をした。

それが例え本物の刃で、死に至るまでの戦いになろうとも、僕にはそれを耐えることが出来る。


でも、彼女の場合軍師としての勉強はしていたのものの、それはあくまで本の中での戦い。

本当の戦いを知らない。人たちが殺し合って、その中で死んでいった人たちの叫び声を耳にしたことがなかった。

しかも今回のことは親しかった人たちの死。

どれぐらい衝撃になっているものか……


窓の外で景色を見ながら考える。

まるで昨日のあの場所であったことが嘘のように感じる平和な森の景色がある。

あの森は赤く燃えていた。人たちの血を吸った地も、赤く見えていた。

赤は狂気の色。赤は人の情熱を与えるが、度が過ぎた熱情は人を狂わせる。孫策もきっとまたその類だ。

彼女の剣を見れば分かる。孫策は焦っていた。きっとそれは、母の威光に付いて行くことができない自分の不足なところに気づいているからだ。

それで尚、頑張りたいと思う気持ちは結局誰か傷つけるに十分なものになってしまったということだ。

僕は彼女を同情してあげた方がいいかもしれない。

復讐など、何も生まない。分かりきったことだ。


でも……

それでもこのまま彼女たちを許すべきなのか?

そして街人たちは…このまま放っておけば彼らは水鏡先生の手に葬られるだろう。


どうも一人だけでは考えが追いつかない。

自分の思考に自ら納得が行ってない。

雛里ちゃんは何かいい考えを持っているだろうか。


「……」


さっきまで雛里ちゃんが驚いたことを心配していたのに、今度は僕自身がそんな彼女に頼りにしている。

今の僕はとても不安定で、何故か考えを雛里ちゃんに頼ろうとしている。

新しい自分の姿に自分自身も驚く。


がちゃ


「?」


後から門が開ける音がした。

誰だろうか頭を振り向こうとしたが、ふとそこで窓に雛里ちゃんの姿が写った。

入ってきたのは雛里ちゃんだった。

やっと起きたんだね。

雛里ちゃんに聞きたいことがたくさんあるよ。

一人だけでは何もかも決めることが出来ないんだ。


……


あれ、何で近く来ないんだろ。


あ、動いた。

なんかウドウドしてる。

声もかけてこないし…

振り向こうと思ったけど、ちょっと待ってみる。


これはきっとそのまま待っていたら、後から驚かせるに来るに違いない。

今がそんなこと言ってる場合じゃないことは分かっているが、なんだろう。

今の僕は、雛里ちゃんのことを無性にからかってみたくなっちゃう。


「すー」


雛里が僕を驚かせるつもりで大きく息を吸う音が聞こえた途端、僕は、


「雛里大好きーーーーー!!!」

「!!」


と、叫んだ。


そして、振り向いた。


「これで良しと、」


きっと雛里ちゃんびっくりしただろうな。

どんな顔して…


「あ…」

「うん?雛里ちゃん?」


驚いた、驚いた。

顔が赤くなったのがかわいい。


「な……」

「?」


あ、あれ、なんか目がヤバい?

な、泣くの、泣いちゃうの?


「あわわーーー!!!!!!////////」

「ひ、雛里ちゃん、落ち着いて」

「来るな、変態!」


えー、変態呼ばわり?!


「ひな…」

「あわわー!あわわーー!!」


ヤバい、この雛里ちゃん混乱してる


「な、ななな何勝手なこと言ってるんでしゅか!誰か聞いたらどうするんでしゅか!」


何か噛んでるし。


「誰かって居ても…ここからだと誰にも聞こえないし」

「私が聞こえました!すっごく恥ずかったで!なんですか、真昼間からなんでいきなり好きとか宙に叫ぶのですか?変態ですか?晒し変態ですか?」

「いや、それは違う性癖なんだけど、というか違う」

「一刀さんがこんなに節度ないことするなんて見損ないました!」

「!!」


そこまで言われる?!好きって言っただけなのに。


「ええい、じゃあどの世界を中心で愛を叫べと?!」

「あわわ!何逆切れしてるんですか?怒ってるのこっちなんですよ?」

「いっや、ここは譲れないね。好きな人のこと好きって叫んで何が悪い!」

「悪いです!悪いにもほどがあります。もう少し場所と時間考えてください。ていうかそんな誰にもでも聞こえろってように叫ばれたらすごく恥ずかしいです!」

「誰にでもちゃうし!雛里ちゃん来るの分かってたから叫んだんでしょ」

「あわわ!最初から私をからかうつもりでそんなことをしたんですね。尚悪いです!」




――この口喧嘩が思い以上に長くなったので記録していた管理者によって削除されました。三十分ぐらいこうやって言い争いますが、結果的に記録していた者の言葉を貸しますと、


『リア充爆発しろ』


・・・


・・




<pf>



雛里SIDE


「……もう、いいです」

「やっと僕の愛が通じたんだね」

「この辺にその話もう辞めません!?」


もうむちゃくちゃです、この一刀さん。

なんですか、前のように雰囲気付ける人じゃなくて、すっごく表向きな人になっちゃってます。

路上ででも平然で好きとか言いそうな人です。

怖いです。この一刀さんすごく恐ろしい。

前の一刀さんと違う意味で愛が重すぎて怖いです。


「……でも、」

「?」

「一刀さん…なんですよね」

「……」


一刀は返事をしませんでした。


「……一刀さんじゃないんですか?」

「僕も分からないよ」


そう応える一刀さんの声は少し震えていました。


「雛里ちゃんはどう思う?僕って…一刀なの?」

「………」


この人も…

また自分が何者か分からないんですね。

自分でも変わった自分がどうしてこうなったのかわからないのです。

自分が自分自身であることに疑いを持つこと。

それはきっと、私が感じているこの感情よりも遙かに恐いものに違いありません。


なんと…

なんと言ってあげればいいでしょうか。

自分が何者かさえもはっきりとしないくせに、私のこと大好きとか叫んでいる人に……


「あ!」

「何?」

「………一刀さん」

「うん」

「……私のこと、」

「愛してる」


ガーン!!


「雛里ちゃん!?なんでいきなり窓枠に頭をぶつけるの!?」


なんでそう赤ちゃんみたいな明るい顔で愛してるとか言うんですか、この人は?

そんなところ、全然一刀さんじゃないです。


「ちょっと見せて…」

「あわわ」


一刀さんは私の帽子をとってがぶつけたおでこを心配そうに見ながら言いました。


「あぁ……どれだけ強くぶつけたんだよ」

「………」


顔が…すごく近いです…


「あの、大丈夫でしゅから…ちょっとだけ離れてもらえると…」

「うん?あ、ちょっと待って」


いえ、待ってとかいいですから離れて。


「これちょっと傷残りそうかな」

「あわわ……あわわ…」

「?なんか全体的に顔が赤くなってい………………ぁ」

「あわわーー!!!」



※※※しばらくお待ちください※※※



「せー……せー……離れてくださいって言ったのに……言ったのに//////」

「す……みま……せん」


何か起こったのか聞かないでください。私もよく分かりませんから。

ちょっと一刀さんいつまで床に倒れてるつもりですか?花瓶に当たったぐらいでまた死んだとか言わないでください。

こっちは恥ずかしくてしぬかと思ったんです。


「はぁ……はぁ……」

「あ」

「うん?どうしたの?」


か、一刀さんの頭から血が……


「あ、あわわー!ごめんなさい!は、早く治療を…」

「うん?……ああ、大丈夫だよ」


一刀さんはそう言いながら鏡を見て傷が出来た跡を手を一度拭きました。


「ほらね?」


そして私の方を振り向いた時には傷なんて最初からなかったように綺麗になっていました。


「……どうやって…?」

「分からない。でも、真理ちゃんの話では僕の息から出た光る粉みたいな物に傷を癒せる力を持ってるらしくて…だからちょっと試してみたんだ。もし僕にそんな力があるとすれば、自分に傷を与えた時にも同じ症状が起きるのか。それで自分の手に傷を作ってみたら、反対側の手で一度傷口を拭いただけで傷がなかったように消えてたんだよ」

「……それってつまり…なんですか?」


傷を負っても…それを直ぐに癒せるってことですか?

それって……もう人の領域を越えてますね。


「一刀さん…」

「分かってる。ちょっと恐いよね。これって人の常識遙かに越えてる……。でも雛里ちゃん、こう考えてみて。流星と共に落ちた人があるのに…自分の傷をすごく早くスピードで癒せる能力を持っていたところで……それほどおかしくないんじゃないかな」

「…………一刀さんって…本当に『人』なんですか?」

「…さぁね…分からないよ……雛里ちゃんはどう思う?」


私?

私は………



『姿も性格違えど、彼は紛れもなく北郷一刀。あなたを愛している男です。最初は混乱するかもしれませんか、彼がこれからどれだけ姿を変えようと、こればかりは変わりません。彼はあなたを愛しています。……これからは、あなたたち次第です』



「……一刀さん」

「うん?」

「……私のこと…好きですか?」

「………言ったでしょ?愛してるって」


……

じゃ…

それじゃ、ですね。


「構いません」

「……え?」

「一刀さんがどんな人でも…人じゃなくても別にどうでも良いです……私を愛してるって言ってくれる人なら…」

「………」

「……そして、」



「私が愛してる人……です」



<pf>



一刀SIDE



『私が愛してる人……』


             『私が愛してる人……』


                              『私が愛してる人……』


                                              『私が愛してる人……』



<pf>


雛里SIDE


「……一刀さん?」


………


「一刀さん」


コンコン


ゆさゆさ


「……一刀さん?」

「…………」


ああ、ダメです。

もう完全に死んでます。

惜しい人を失ってしまいました。


じゃなく!


「一刀さん、しっかりしてくだしゃい!」

「はっ!な、何?何!?」

「どうしたんですか?いきなりぼうっとして」

「……雛里に愛してると言われた途端意識と吹っ飛んだところから覚えてないや」


それは多分どの辺の記憶も失っていないのですね。


「…もう一度言って?」

「…一刀さんがまた止まったら困るので言いません」

「えー」

「いわないったらいわないんです」

「ケチ」

「………」


………いいえ、待ってください。

これってもしかするといい機会かもしれません。

今まで一刀さんに散々やられたものがあるので……

一刀さんのせいで散々心配して、泣いて……なのにこの清々しい顔で人のこと愛してるとか末永く叫びそうなこの人は…私が初めて愛してると一言言っただけで脳思考が停止するってわけじゃないですか。


「良いです。じゃあ、言ってあげます」

「……なんだろ、なんか雛里ちゃんの顔が被ってる帽子にすごく似合っちゃってるんだけど…」

「一度言って思考停止する程度の人に、何度も好きって言ったらどうなるのでしょうか」

「……え?」

「ずっとずっと言ったら…頭がもう二度と動かないまで言ってあげましょうか」

「なにそれこわい。ちょっとこっち来ないで」

「どうしてですか?言って欲しくないんですか?」

「も、もう良いかなーって。あまりたくさん言われると不味いし」

「不味いって言われるの嫌いですか?」

「そんなはずはないですけど……」

「じゃあ、言ってあげますよ?」

「っ」


私が迫ると、一刀さんは後ずさって、やがて後に寝床があることに気付かずにそのまま後に倒れました。

私はそんな一刀さんの上に乗って私の顔を一刀さんに近づけました。


「言っちゃいますよ?」

「……どうにでもなれ」


一刀さんはもう諦めちゃってます。

最後まで足掻いてもらわないとあまり面白くないですけど、一刀さんが悶える姿もみたいので、私は自分の口を一刀さんの耳に近づけました。


「……愛してます」

「っ!」

「ずっとずっと好きでした」

「……」

「一刀さんが私のこと愛してるほど、私も愛してます」


……大好きです。


がちゃ



「…あわ?」

「……はわわー!」

「…キャハ?」

「てわわ」


ふと前を見ると、門に朱里ちゃんと元直ちゃんが立っていました。

そして、私は今一刀さんの上に乗ってます。





「はわわー!えーと、しょの、あの……お邪魔しゅましゅた!」

「……キャハ、続けてくださいなのですよ」

「……」


ガチャッ


・・・


「あわわー!!!朱里ちゃん!違うの!そういうんじゃないのー!」


また私、暴走して誤解されちゃったー!


「一刀さん、朱里ちゃんたちになんか言って……」

「………」

「泡吹いて倒れてる場合じゃないですってばー!!」


ふえーん、私のばかー



・・・


・・





一刀と倉の設定を一番上に置いておきます。

これから時々更新していきますので、その時は一番上の設定のところも見てください

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