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第一章 十一話 ……と思ったら結局後でまた会う道だった

編集して出来るだけ音とかで表現するのをやめようとしています。

雛里SIDE


「説明してもらおうか」

「………まぁ、そう怒るな。北郷」

「俺は警告したはずだ」

「一刀さん、落ち着いてください。これは……」

「雛里は黙ってろ」

「うっ………」


今、この山賊の巣にて、一刀さんは他の山賊の人たちに囲まれた状態で、裴元紹さんの頸を(しかも木刀で)狙っています。

その原因は、疑うこともなく私のせいです。

どうして、私がここに居るのかは一刀さんが鞄を持って来るために街から居なくなった時に遡ります。


<pf>


「うぅん……うん?」


気がついた時、私は街のある菜館の椅子を並べたところで眠っていました。


「どうして……!!」


その時、私は直ぐにどうして自分が気を失ったか思い出してしまいました。

一刀さんが……山賊に加わると言ったのです。


「どうして……」


どうしてこんなことに……


また一刀さんに行って確認しなければなりません。

行って、話を……


「でも、今の一刀さん、私の話全然聞いてくれない」


だからって、このままだと一刀さんとこの先永遠にあえなくなってしまいます。

それは嫌です。

私は……


もっと一刀さんと一緖に居たいです。

一刀さんはとても不思議な人です。

強いはずなのにとても弱そうな人です。

だけど、自分のためだけに何かができる人じゃないです。

嘘も下手で、実は優しいのに仮に人に厳しく当たろうとします。

それはきっと自分の弱い部分を隠すためです。

だけど、実は一刀さんは優しい人です。


私が願っていた人。

あの流れ星に願った願い。


私は、自分が付いていく人が優しい人でありますようにと、そう願っていました。

それなのに、その流星が塾の手前に落ちてきて、そこに一刀さんが居て……

今に考えると、つまりそういうことなんです。

一刀さんのここに連れてきたのは、私なんです。

一刀さんが居る天の世界から、一刀さんを連れてきたのは私なんです。


だから、私は一刀さんに付いていきます。

例えそこが盗賊の巣の中だとしても……


「……うん」


そう決めてしまったら、もう後することは決まっていました。



<pf>



「お嬢さん……自分が何と言ったのか分かってるのか」

「はい、ちゃんと分かってます」


一刀さんは街に居ませんでした。

私はその間、街の少し手前で一刀さんを待っていた盗賊の大将の人に、私も連れて行くようにお願いしていました。


「俺の群れは山賊だ。生きるためとか、どんな言い訳を付けたって下衆の真似よ。お前のことは水鏡先生の塾の生徒だと聞いているが、先生の名に恥をかかせるつもりか」

「あわわ………」


いきなり先生のことを言ってくるとは思ってませんでした。

でも…先生もたしかに言っていました。自分が思ってるようにすれば良いと。

だから私は……


「私の気は変わりません。一刀さんを連れて行くとすれば私も連れて行かせてもらいます」

「じゃが、本人に厳しく言われているからな…お嬢さんを連れて来たことを知った途端、また俺の頸を狙うことは目に見えている」

「…仮にも賊の大将でもあろう人が、それほどのことを恐れるとは心外です」

「うむ?」

「それとも、私がこのまま塾に帰って、街であったことを水鏡先生に教えることを望んでますか?」

「……!」

「国に仕えている先生の弟子たちは荊州だけでも多く居ます。先生の言葉なら、官軍でここに討伐に来てもらうことも難しくはありません」

「はっ!俺はその官軍というものを何度も見てきた。今の時代に官軍なぞ完全な武装をしている俺たちの敵ではない」

「だけど、そこに先生や私たちの策が加わるとすれば……」

「……」

「水鏡先生がいらっしゃる街を狙ったことは、例えそれが間違いによって起こった事態としても、返り討ちに会う可能性は高いです。でも、私が付いて行けば、その可能性を防ぐこともまた可能でしょう」

「………お嬢さん、言葉に刃が立ってるな」

「……」


私も必死なんです。

ここで一刀さんを逃すわけにはいかないのです。

例えそれが先生の名を勝手に借りる蛮行を犯すことになるとしても……


「仕方ねーな。確かにお嬢さんの言う通りだろう。水鏡の名は荊州にて強い。あの方に一度逆らえば、荊州で賊なんてやってられないってものだ」

「…それじゃあ、」

「だが、付いて来たところでどうするつもりだ、お嬢さんは?結局あいつを説得しないことには、また追い出されてしまうだろう」

「そこは私がなんとかします。だから、今はまず、一刀さんにバレないように私をあなたたちのところまで一緖に行かせてください」


<pf>



そうやって一刀さんにバレないように賊の巣がある山まで入ってきたところまではよかったのですが、

山に到着して半刻も経たない中で、一刀さんのことを歓迎する準備で忙しい賊の人たちの中をうろうろしていたらうっかり一刀さんに居ることをバレてしまいました。

それを見て頭に来た一刀さんは……


「これを木刀だと思って甘く考えていると困る」


現状に至ります。


「……」


裴元紹さんを睨んでいた一刀さんはそのそこにあった岩に木刀を向けて、その岩に木刀を突きました。


「ひゃっ!」

「なっ!」


そしたら、木刀はまるで真剣のように岩に入って、一刀さんが木刀を抜けると岩にはぽっかりと穴が空いてました。


「後に街や何もなければ、俺は貴様の軍をあの荒野の上で全滅させることもできた。だけど、街にアレ以上の被害を受けさせたくなかったからこんな手をとったのだ。なのに何だ?どういうつもりあの娘をここに連れてきた!」

「あのお嬢さんの意志なんだよ。俺の脅かされただけさ」

「そんな話があるか」

「本当です、一刀さん」

「!」


一刀さんは驚いて私の方を振り向きました。


「……私が先生の名を売ってあの人を脅迫したんです」

「雛里、何故そこまでして俺の後を……」

「だって一刀さん、いきなり居なくなろうとしてばかりで…私がそんなことで易々諦めると思ってるんですか」

「……くぅっ!」

「いいから、話なら私としてください。他の人に八つ当たりなんてみっともないです」

「………」


でも、まだ一刀さんは剣を裴元紹さんから離してくれません。





「ヤー―!!」


その時、突然一刀さんに迫ってくる影がありました。


「っ!」

「あわっ!」


いきなり裴元紹さんと一刀さんの間に誰かが割り込んできて一刀さんを攻撃しました。

一刀さんは突然のことに驚いて一歩離れました。


「はぁーーっ!」

「っ!この!」


でも、いきなりの攻撃に続いた攻撃に、一刀さんも姿勢を正して反撃します。

顔がちゃんと見えない、少し小柄なその人は端に何の刃物も付いてない、ただの棒を持って一刀さんに当たりました。


ですが、何合かやりあったと思うと、


「はああぁぁっ!!」

「…あ」


相手の人が持っていた棒は一刀さんの木刀に叩かれて真っ二つにされてしまいましたました。

武器を失った空いては慌てて一瞬動きが止まりました。


「はああぁぁっ!」

「っん!」

「やめんか!」


無防備になった後に倒れたあの人に止めを刺そうとした一刀さんに、今度は裴元紹さんの剣がその間を潜って来て一刀さんの剣を止めました。


「っ!」


一刀さんは裴元紹さんの剣に押されて一歩下がりました。


「倉番!」

「<<ビクッ>>!」

「誰が勝手に男たちの遣り合い割り込んで来いを言った!」

「で……でも…あの人…おじさん…いじめた」

「うるさい!勝手なことするんじゃねー!」

「………ごめんなさい」

「……?」


良くみると……


「あわわ…?」

「……?」

「あわわっ!?」

「どうした、雛里」

「…一刀さん、あの人、女の子です」

「何?!」


本当でした。

髪があまりにもむちゃくちゃに乱れていてちゃんと見えませんでしたけど、その間で少し見えるその顔はたしかに女の人の顔でした。

どうしてこんなところに女の人が……?


「こいつは俺の群れの紅一点だ。倉の護りをさせてるから、皆倉番って呼んでる」

「呼んでるとは……名前は?」

「ねー。最初から倉の中で寝ていて、あの時からここに居させてる」

「……」


いえ、紅一点と言いましても、あんなんじゃ女の子かどころか、人間なのかもちょっと疑わしいですよ。

髪も女の人のとは思えないぐらいむちゃくちゃになってますし、服もほぼ形がなく布と一緖です。


「……」

「おい、雛里」


私はその娘に近づいてみました。


「!!」


倒れていたその娘は私が近づくのをみて少し後ずさってましたけど、結局近くまで行くことはできました。


「……髪とか全然整ってないじゃないですか」

「まぁ…こんなところでな。自分で適当に切ったんだろう」

「誰かはさみを持ってきてください」


女の子なのに、これはあんまりです。


「これを使え」

「あ」


はさみを渡してくれたのは一刀さんでした。

ちょっと私が知ってるはさみと形が違ってましたけど、使いやすそうだから別に問題ないでしょう。


「!!な……に?」

「いいからじっとしてて」


刃物を持ってるから驚いたのか、倉番と言った女の子はまた逃げようとしましたけど、肩を抑えてその場に座らせました。

髪が絡んでいて…これは切るしかなさそうです。

ちょっと短くなっちゃいますけど、まずはそれでもちゃんと前が見えるようにして……

女の子らしさとか考えられる髪じゃまずないですから、整えることを最優先にして短く切ります。


少し時間をかけて、何か朱里ちゃんより少し短いような髪型でなんとか整えることができました。


「はい、できたよ」

「………?」


邪魔になる髪を切ると、綺麗な赤色の目が姿を現しました。


「………??」

「あ…」


あの、鏡、こんなところに鏡とか。


「ほら」

「あ」


と思ったら、今度はいってもないのに一刀さんが何かを投げてきました。

開けてみると手のひらの大きさの小さな鏡です。


「ありがとうございます」

「……」


一刀さんは肩を少しすくめました。

私はその鏡を女の子に見せました。


「……!」

「どう?」

「……これ…あたし?」

「うん、どう、ちょっと気に入らないかもしれないけど、先のよりはマシかな。ちょっと髪が伸びるとその時また整えばいいから」

「………」


鏡に映った自分の顔を見た女の子は少しその姿に見惚れたように鏡の中の自分を見つめていました。

そして、顔を俯いて、


「……ありがとう」


と、小さくいいました。


<pf>



一刀SIDE



キャリーケースを持って裴元紹のところに戻って、また馬の上に乗って2時間ぐらいを走って行った。

そしたら、鬱蒼な森に覆われた山があって、その中道らしくもないその道を馬であがっていくと、山賊たちの巣がそこにあった。


「思ったよりも広いな」

「まぁ、俺に付いてきている連中が八百もあるからな…それに馬まで合せると、山一つじゃちょっと足らんぐらいだ」

「にしても、山賊なのに、何故騎馬を持っているんだ。必要ないだろ?」

「馬鹿言え。あいつらは北方でのあの激戦地から一緖に生きて来た仲間だ。それに、山の中でもあいつらの使いどころはある」

「……」


そんな風に、少し疑問に思ったことたちを裴元紹に聞いていたら、後から彼の部下が何人か来た。


「お頭、捕まえてきた奴らはどうしますか」

「空いてる倉に縛っておけ。外から閉じて何人かは番人をしてろ。

「はっ」

「それと、歓迎会の準備をしろ。今日はなかなか骨のある奴が来たんだ」

「……宜しいのですか?」


部下は少し心配が混じった声で問い返した。

こんな山の奥の山賊だ。

毎晩酒を飲みながら遊ぶのが日常ではないのか?

俺の頭の中の山賊は……なんというか、一番いい形を想像しても水滸誌だ。


「いいだろ!やる時はパーッとやるんだ。早く行け!」

「わかりました」


部下の者はそのまま裴元紹の話を皆に告げるために下がった。


「さて、北郷、ああ、呼ぶのは北郷で構わんな」

「構わん。…言っておくが、お前をお頭と呼ぶつもりはない」

「がっははー!それはまあ、後々やっていくとしようぜ。それよりだ。酒は好きか」

「酒……いや、あまり得意ではないな。好んで飲む方ではない」

「そりゃ損してるな…うーむ。困ったものだ!山賊にもなれば、夜酒を樽で呑んでも明日にはびっしりしてるもんだけどなー」

「………」


正直な話、やりたくないわ、山賊。


「お頭ー、大変ス」


と言っていたら、また他の奴がやってきた。


「何だー、さっさと宴会の準備しろって」

「それが…倉番がまた寝てるんスよ」

「ああ!?……ああ、あの野郎は……」

「どうしやっスか?俺たちでなんとかしやっすか」

「寄せ。あいつが寝てる時に倉を開けたら死人が出る。後で俺が行く。お前らは他のに当たっとけ」

「了解っス」


といって、部下の者はまた去った。


「今の話は…?」

「ああ、うちに倉番はちょっと変わり者でよ…倉の中で大体生活してるんだけど、いきなり誰か開けると大暴れするんだよ。中から酒とかとってももらわんと宴会にならねーってのによ」

「……」


変わった人だな、それは。


「ああ、悪いが、ちっとここに居てくれるか。ついてきて事故るかも知らんからな」

「…分かった」


そう言って、裴元紹はあっちの方へ行った。

その後、俺は特にやることもなくて人があまり通らないところでうろうろしていたんだが……


「あわっ!」

「?」


なんだろう……

何か、ちっこいものが馬の後を通ったような……


その時、俺が見ていた場所の更に後ろ側の茂みからばさばさと音がした。


「あわわー!!」

「!」


雛里!?


「一刀さん!」

「うわっ!」


何故雛里がここに居るのか知る余裕もなく、雛里は俺に抱きついてきた。


「後から、バサって!へ、蛇!!」

「え?」


雛里が出てきた後の茂みがバサバサっと震えていた。

ちょっとしたら下からズルズルと蛇が前に出てくる。


シー――っ


「ひぃいー!!」

「…………帰れ」


シー――ーっ


「帰れ、他の連中に酒の肴にされるぞ」


シーーーっ


「………あぁ…」


いや、なんでこんなところに卵産んだし……

盗賊の巣の手前だぞ?

馬鹿なの?死ぬの?死ぬよ?


「いや、ちょっと、待ってそれより」


今俺に抱きついて震えているこの小動物。


「雛里、どうしてここにいる。ってかどうやってここに居る」

「あわわっ!?え、えっとそれは……あの、その……」


三秒間、


「森の精霊さんが…」

「ねーから」

「あう…」


かわいい言い訳だけど、今俺ちょっとそれ付き合えないから……。


「お前がここに居るということはつまり俺が知らないように付いて来ようと仕組んだわけだ。なら協力した者があるわけだが、ここまで身の安全を確保しながら俺に付いて来れるようにした者は…」


裴元紹……


「…ブチ殺す」



<pf>



そこから、倉の前にいた裴元紹にとりかかって、

そしたら突然倉の中から誰かが棒を持って仕掛けてきて、

倒したら雛里ちゃんが何か近づいて


「誰かはさみを持ってきてください」


と言ってきて、


もしかしてとしてまたキャリーケース開けてみるとはさみと鏡が入ってあった。


雛里にハサミを渡して後で雛里がそいつの髪を切り始めるのを無言に見ていた。

五分ぐらいしたら大体形が整ってきた。

正体はなんと女の子。

肌はちょっとくらい森の中でもはっきり解るほど白い肌。

白いと言うのは、あまり綺麗というよりは、日を浴びなさ過ぎた、白人種のような白さだった。

あ、これは決して白人種に何だと言っているわけではない。でもちょっとアジア系から見ると痛そうに見えるのは事実。


とか思っていたら今度は雛里が何か欲しそうにキョロキョロとしていたので、ハサミと一緖にあった鏡を渡した。

どうやらあっていたいたようで、雛里はそれを彼女に見せた。


「…娘か?」


そこまでして俺は裴元紹にそう聞いた。


「あ?まさかよ、俺たちがここ来る前からここに居たんだ。元々、ここは他の賊の群れが使っていたそうだったんだが、あいつが入っていた倉だけがちゃんと残っていた。最初は手を出そうとする連中もあったが、見てのとおり中々手ごわい娘さんでよ。その後はずっとこんな風に一緖に過ごしているさ」

「……それはなんというか……」


なんなんだ、その関係は?

謎な娘だな。


「はいっ」

「……あ」


やっと終わったように雛里は倒れているあの娘の手を引っ張って起こした。

背は雛里と同じかちょっと上。

……あ、ごめん帽子まで合わせて計算してた。あの娘の方が上。


「おお、思ったよりずっと別嬪じゃったんかー」

「くっそー、こうだったらもっと積極的にやるもんだったー」


何か後で賊の連中が騒いでるが、今はそれよりもだ。


「さて、裴元紹、説明してもらおうか」

「おい、おい、またそれかよ。もう勘弁してって」

「するもんか。どういうつもりで彼女を連れてきたのかは知らんがな…」

「一刀さん、もういいじゃないですか」


雛里が俺と裴元紹の間を割って入りながら言った。


「雛里、俺はこいつと」

「私は一刀さんと話したいことがあるんです。そのためにここまで来たんです。私がここまで来たのは一刀さんのせいです。だから変にほかの人に八つ当たりしてしてないで私と話してください」

「やつあた…!俺は単にお前が危ないからだな…!」

「危ないなんて一緖です。大体なんですか、無理しないって約束したくせに山賊に入るとか言ってきて…約束は絶対守るんじゃなかったんですか?」

「俺は危なくない。少なくとも誰かさんが忍びこんでくることを想定しなくて済むほどは安全だったよ」

「あわわ!私が心配するのが迷惑だった言いたいんですか?」

「そういう話を言ってるわけじゃないだろ」


俺はただ…!


「あぁ、こりゃめんどくせーことになったな。倉番、なんとかならんか」

「……誰」

「新入りだよ。歓迎会でもやろうと思ったんだけど、何も痴情喧嘩始まっちまった」

「「なっ!!」」


あいつ今なんつった!


「貴様、訂正しろ!」

「そんなんじゃありません!」

「おお、こわい、こわい。で、もう話は済んだのか?」

「「っっ」」


互いの顔を見る。

いや、なんかもう、…バカバカしいわ。


「取り敢えず…この話は後という方向で」

「そ、そうですね。その方がいいですね。人目も多いですし」

「…え?」


気がついてみれば、山賊群れのほぼ全員がこちらを見ていた。

何かニヤニヤしてるし……


「こんのーー!!お前ら全員今の忘れろー!」

「うわぁっ!新入りが壊れたぞ」

「誰か止めろ!」

「くっはっは、こりゃとんでもねー奴が入ってきたもんだな!」


そこからは、あまりおぼえていない。



<pf>



………?


「うん?」

「あ、起きました?」

「ひな……り?」


なんでここに……


「どうなってるんだ?」

「えっとですね。50人ぐらい倒したところで裴元紹さんとそうちゃんがふたりがかりでなんとか一刀さんを抑えて、その後皆さんで勝手に歓迎会始まっちゃいまして…今は、こうです」

「?」


頭を横に逸らすと、地面に倒れてる群れがいた。

何人かはまだ呑んでる。


ってか、何か視界がおかしいのだが…


「でも、一刀さんって思ったよりずっと強かったんですね。裴元紹さんがそう言ってました。あの時あいつが俺の条件を受けてなかったら、皆殺しにされるのは自分たちの方だったかもしれないって」

「………雛里」

「はい」

「どうして…俺を真上から見ているんだ?」


おかしい。

雛里と俺だとこんな目線になるはずがないのに。

しかも真上で……


「あ、今ちょっと膝枕してますから」

「……え?」


ちょっ!


「なっ!」

「あ、……うーん」


ちょっと後頭部が痛いけど、なんとか無理やり起きる。


「なんで俺が雛里の膝に…」

「え、でも、地面だと固いですし……そのほうがいいかと思って…」

「………」

「あ」


やばっ、俺今熱上がってる。


「どこ行くんですか?」

「裴元紹のところだ。明日雛里が帰れるように準備しろって行ってくる」

「私はここに残ります」

「……」


行く足を止めて後を向く。

雛里の顔は真剣になっていた。


「なんで……」

「私は……決めました」

「何を……」

「一刀さんと一緖に居たいです。一刀さんがここに居るというのなら、私もここに居ます」

「………」


皆最初はそう言ってた。

でも、結局皆居なくなるんだ。

父も、母さんも、祖父さんも、


「なんで」

「何がですか?」

「俺が、鳳雛と呼ばれる鳳士元が付いて行くに値すると」

「……逆に、こっちが聞きたいです。どうして、私が付いて行っちゃだめなんですか?天の御使い様」

「………」

「………」


沈黙。


こんなこと、今までなかった。

俺の存在に興味を持って近づいてくる人たちが今までいなかったわけではない。

だけど、そのうち皆居なくなった。

俺が無視したら、或いは、冷たく接すれば皆居なくなった。

そしてそれ以上俺の存在に割り込んでくることなんてなかった。

及川ぐらいだろ。何をやっても俺の側から消えなかったのは……


だけど、雛里にはそういうことができない。

無視することもできないし、冷たくすることも限界がある。

無視しようとすればするほど意識してくるし、冷たくしようとするとあっちからもっと激しく出てくる。

こんなの…今までなかった。

なんでこんな時に……

何でよりによって雛里が……

こんなにも俺に近づいてくるんだろう。


これが、

これが運命だと言ったんですか、水鏡先生?


俺がまた傷つく運命だって……


「…起きた?」

「っ!」

「あ、倉ちゃん」

「……こんにちは……鳳統ちゃん」


突然後から出てきた、さっきの女の子はほぼ動かない口で雛里に時間に合わない挨拶をした。


「うーん、こんな時間だと…もうお休みの時間だけどね」

「……お休み……は…挨拶じゃない」

「そ、そうだね…何か、おかしいね」

「……変」

「雛里、何だ。そのそうちゃんって」

「え、あ、何か、皆さん、倉番くらばんって呼んでるみたいで…だったら名前でそうでいいかなと思いまして……本人も名前はないっていってましたので…」

「そう…?…倉って書いてそう……?」


何か思い出せそうで……出せない…

ああ、後頭部が痛い。


「ね」

「うん?」


静かな声で、倉が俺の手を掴まった。


「…こっち」

「え、おい、ちょっと」

「一刀さん」


あいつが引っ張るまま、俺は連れて行かれた。

体は小柄なのになんで力なんだ。


<pf>



そうが連れてきたのは倉の中だった。

暗くて何も見えないのだが…


「こっ、ち…」

「おい、ちょっと待て。暗くて何も見えないぞ」

「…………」


だけど、倉は何も言わずに中に入っていった。


「あの、これ使ってください」

「あ、ああ、ありがとう」


雛里ちゃんが後からランタンを渡してくれた。

わざわざキャリーケースから持ってきてくれたようだ。


ガチッ


「!」


灯りを付けた途端、倉はすごいスピードでこっちに走ってきた。


「うわっ!」

「火……だめ…危ない」


何か、すごく怒ってる。

中になんかあるんだろうか。

火薬とか…それとも爆発するようなものでも?


「これは火じゃない。灯りにしかならないんだ。ほら」

「…?」


ランタンを見せると、倉はキョトンとした顔でそれをじっと見つめた。

そして、光に向かって手を伸ばすが、熱さもなく、ただ光だけを発するランタンの光を防いで、倉の壁の方に手の模様の影を作るだけだった。


「…………」

「問題ないよな」

「………<<コクッ>>」


倉は頷いてまた中に入っていった。

俺と雛里もランタンの光に依存して倉の後を追う。






「……」

「!!これは……!」

「剣……おじさんが…見つけた……反ヶ月ぐらい前……に」


倉が中で俺に見せた物は……


鳳雛だった。


鳳雛と言うのは、雛里の道号のことではない

日本刀氷龍と、鞘の鳳雛。

祖父さんの遺品として、北郷流師範の証。


「一刀さん、その剣、知ってるんですか?」

「鳳雛……俺の刀だ」

「え」

「……あなたの?」

「ああ……こういうとちょっと変かもしれないが、俺は反ヶ月ぐらい前にこの世界に落ちてきた。この剣も反ヶ月前に見つけたって言ったな?」

「……おじさんが、そう言った。…錆びてて使えないから、倉に置くって……」

「錆びてるわけじゃない」

「……でも…抜けない……あたしも…やって…みた」

「誰でも抜けるような剣じゃないんだ。これは……そんな風にできた刀」


呪われた刀。そして、それを抑えるために嵌められている鞘鳳雛。

祖父さんの遺言、この刀を鞘から抜けるようになってみせること。

俺はまだ、祖父さんの遺言を果たしてはいない。


「雛里、ちょっとこれを…」

「あ、はい」


俺は雛里にランタンを渡して、鳳雛を両手に握った。

そして、刀の柄を掴んで……


「!」


すんなり……抜け……た?






・・・


・・




雛里の脳内日記


今日は本当にいろんなことが起きちゃいました。


塾から出ようとする一刀さんを追って行ったら、街が賊に襲われていて、その賊たちを退治したらまた新しいのが来ようとしてました。


でも、一刀さんが動揺してる人たちをなんとか落ち着かせて、一人で山賊のお頭の人で協商して、街を襲うことはなかったです。


だけど、代わりに一刀さんが山賊の一員になるはめになって、あまりにも驚いて気絶してしまいました。


起きた後、こうしていてはいけないと思ってこっそり一刀さんの後を追いました。


結局一刀さんにバレて大騒ぎになりましたけど、最終的に倒れた一刀さんに膝枕できてよかったと思います。


倉ちゃんはちょっと話すのが苦手のようですけど、実はいい娘です。


飲み過ぎて倉からもっと酒を持ってこようとする人たちを倉に近づけないようにして、近づこうとするとぶっ飛ばします。


私と同じぐらい(?)の年のはずなのに、あんなに強いなんてすごいって思いました。


明日は一刀さんがどうして私のことを避けようとするのか、絶対に問いつめたいと思います。


実は、ちょっと心配にもなります。


本当は一刀さんは私のことは嫌いなのに、私があまりしつこく張り付こうとするのではないかって。


ああ、でも、もし本当にそんなのだったらどうしよう。


一刀さんは優しいから、きっとそういうことだと私の前では言ってくれないのに…


だけど、これほど積極的にしないと一刀さんはきっとまた私を帰らせようとする。


あ、でも、そしたら本当に私のこと嫌いになるんじゃないかな。しつこい女の子って思われたらどうしよう。


いや、そんなこと考えていても、一刀さんは離れていくばかりだし、やっぱり問い詰めた方が……


でも、でも、あまり一刀さんを困らせるとまたあの時みたいに演技混じって私を追い払おうとするかもしれないし。


え、じゃあ、また…き、キスされちゃうんじゃない?


あわわ、どうしよう!


(ここから解読不能)





という話がありました。

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