表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雪原の蛍

作者: 口羽龍

 八郎は北海道の道東に住む小学校6年生。実家のある雨別うべつまでの道のりを歩いている。この辺りは田園地帯が広がっているが、冬の時期は雪原が広がっている。この辺りには民家が全くない。この辺りには昔、別の集落があったそうだが、その痕跡は全くない。八郎はここに集落があった事を全く知らない。


「早く帰ろう」


 八郎は白い息を吐いた。今週に入って、冬型の気圧配置になり、とても寒い日々が続いている。早く家に帰って、暖を取りたい。そして、温かいシチューを食べたいな。


「寒いな・・・」


 八郎は凍えていた。カイロを腹と靴下に付けている。そして、手袋やニット帽を装備している。それでもとても寒い。北海道の冬は厳しい。だけど、それを乗り越えると、春がやって来る。春が来るのを待とう。


 八郎は前を向いた。雨別はまだ見えない。まだまだ遠いようだ。だけど、歩かなければ。


 と、八郎はあるものを見つけた。キラキラと光るものが飛んでいる。一体何だろう。蛍と思われるが、蛍は夏の生き物だ。どうして飛んでいるんだろうか?


「あれっ・・・。何だろう」


 八郎はそれが気になった。何だろう。八郎が辺りを見渡すと、いくつものキラキラと輝く光が見える。まるでここは集落のように見える。だが、ここには集落なんてない。何だろう。


 しばらく見ていると、そこには集落が見えた。これはいつの時代だろう。木造の小さな家がいくつもある。そして、多くの人が行きかっている。八郎は感じていた。自分は幻を見ているんだ。これはいつの時代だろう。ここは何という集落だろうか?


「えっ、ここは集落?」


 八郎は首をかしげた。ここに集落って、あったっけ?


「こんな所に集落あったかな?」


 八郎は集落を見渡している。多くの人がいる。どれだけの人がいるんだろう。とても賑わっているな。自分もこんな時代に生まれたかったな。そして、ここに住みたかったな。


「多くの人がいるな・・・。こんなにも人がいるって・・・」


 だが、しばらく見ていると、徐々に人が減っていく。そして、家々が消えていく。八郎はそれを見ていて、寂しくなった。


「あれっ、減ってく・・・」


 そして、光は消えていった。そして、元の雪原へと戻っていった。八郎は呆然となった。今さっきの幻は、いったい何だったんだろうか?


「なくなった・・・。何だったんだろう・・・」


 八郎はまた寒くなった。早く帰ろう。早く帰らないと、風邪を引くかもしれない。


「まぁいいか。帰ろう」


 八郎は再び雪原の中の一本道を歩いていた。とても静かな、寂しい道だ。車は全く通らない。


 数十分歩いて、八郎は実家に戻ってきた。実家は最近建てられた2階建ての家で、八郎の他に、両親と祖父母が暮らしている。


「ただいまー」


 八郎は家に入った。すると、祖母がやって来た。祖母はエプロンを付けている。


「おかえりー」


 祖母は何かを見ている。八郎は思った。何を見ているんだろうか? 何か気になる事柄だろうか?


「何見てるの?」

「これ?幸別さちべつっていう集落」


 祖母はその写真を見た。その写真は白黒で、そこには木造の家々の写真がある。それを見て、八郎は驚いた。今さっき見た集落の幻にそっくりだ。この幸別という集落は、いったいどこにあったんだろうか? あの雪原にあったとすると、あの幻は幸別の幻だったんだろうか?


「えっ!?」

「どうしたの?」


 祖母は驚いた。八郎は幸別という集落の話を聞いた事がないのに、どうして反応するんだろうか?


「いや、帰り道でそれらしき集落の幻を見て」

「本当?」


 祖母は驚いた。小学校から雨別という集落に行く間にあった集落で、今はただの田園地帯になった。まさか、その幻だろうか?


「うん。この辺りだけど」


 八郎は玄関にある地図で、幻を見た位置を指さした。


「ここに本当に幸別という集落があったんだよ」

「そうだったんだ」


 やはり、ここにあったのか。とすると、あれは集落の幻だったに違いない。でも、どうしてそんなのを見たんだろうか? ここに集落あったという記憶を、忘れないでほしいという願いを込めてだろうか?


「ここは昔、多くの人が暮らしたんだけど、もう誰もいなくなってしまったのよ」


 祖母は寂しそうだ。幸別は雨別よりも賑わっていた。なのに、今では消えてしまった。とても寂しいな。


「そうなんだ。残念だね」

「うん」


 祖母は思った。八郎が見た幻は、幸別の幻だったんだな。ここに幸別という集落があった記憶、忘れないでいてほしいな。


「いったい、あの幻は何だったんだろう」

「さぁね・・・。はぁ・・・、この集落、どうなってしまうんだろうね」


 祖母は思った。この雨別は子供が八郎1人だけだ。八郎がこの集落を出て行ってしまうと、雨別はどうなってしまうんだろうか? だんだん住民が減っていって、家々が消えていって、幸別のように何もなくなってしまうんだろうか? そうならないためには、どうすればいいんだろうか? 答えが見つからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ