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君と手をつなぐ、その理由。  作者: 高井木口
君が手袋をする、その理由。
2/4

一日の始まり

「おっはよーございまーす!」

 

 開口一番元気な挨拶!

 これで最高の一日をスタートさせるのだ!

 私は向日葵明日香。凛童学園高校の一年生だ。

 この高校に入学してから四ヶ月ほど立ったけど、クラスメイトのみんなも良い人だし、憧れの高校生活が送れている。

 何より──。


「櫂人くん、おはよう!」

「おはよう向日葵さん。相変わらず元気だね……。」

「そりゃあね!私から元気を取ったらただのはかな〜い女の子になっちゃうもん!」

「あはは。そんなことないよ。」

 

 この男の子は鏑木櫂人くん。

 一切着崩しをしてない制服に綺麗なセンターパート。優しい声。

 ん〜!私の好きな人、今日もカッコいい!

 そしてそんな櫂人くんと私は隣の席どうし!神様ありがとう!

 ……だけどそんな櫂人くんはちょっと不思議な人でもある。

 

「ねぇ、まだ手袋してるよ。」

「ホントだ。もう夏でしょ?暑くないのかな?」

 

 そう。クラスのみんなも言う通り、櫂人くんは入学してからずっと手袋をつけている。

 体育の時も、お弁当の時も、学校にいる間はずっと手袋を外さない。

 それどころか、どれだけ暑くても決して半袖になろうとしない。

 一度心配で聞いたことがあるけど「大丈夫」と言って流されてしまった。

 

「知ってる?鏑木くんが手袋つけてる理由。」

「え?なになに?」

 

 ふと、クラスの端の方からそんな会話が聞けてきた。

 何か事情を知ってるのかも知れないと、私は耳を澄ます。

 

「中学の時に喧嘩し過ぎて手が傷だらけだから、それを隠すためって噂があるの。」

「え?なにそれ怖!」

「他にも、邪竜が封印されてるとか。」

「厨二病じゃん。」

「あとは単なるキャラ付けとか。」

「それが一番ありそう。」

「あと一番やばいのが……もう両手ないんじゃないの説。」

「え、なにそれ!?幽霊ってこと?」

「違くて、なんだけ……あれ。手の模型みたいなやつ。」

「あーはいはい。言いたいことはわかるわ。

「そうそう、あれなんじゃないかって話。」

 

 ……聞いて損した。

 厨二病とかキャラ付けはともかく、櫂人くんが喧嘩なんかするわけないじゃん!

 あんなに優しいのに!

 

「……。」

「櫂人くんどしたの?体調悪い?」

「え?あ、いや。大丈夫。」

 

 大丈夫って言う割には明後日の方向見てたけど……。

 ──キーンコーンカーンコーン。


「はーい。みんな席に着いてー。」

 

 チャイムと同時に担任の加藤先生が教室に入ってきた。

 相変わらず美人だな〜。

 

「ねぇねぇ。やっぱり加藤先生って美人だよね?」

「うんまぁ、顔は整ってるよね。」

「私もあーゆう大人になりたいなぁ〜!」

「向日葵さんはそのままでいいよ。」

「え?そうかなぁ〜!」

 

 それって、ありのままの私を受け入れてくれる……ってコト!?

 

「はーいそこ。こそこそ話さないの。」

「す、すみません……!」

「えっと欠席者は……あれ?東堂くんと故里さんは?」

 

 言われてみれば、クラスにはまだ二人の姿が見えない。

 すると、次の瞬間に教室の扉が勢いよく開き、息切れした二人が立っていた。

 

「お、遅れましたぁ……ゼェ…ゼェ。」

「だ、大丈夫?すごい息切れしてるけど……。」

「だ、大丈夫っす。ちょっと登校中にお婆さんに道聞かれちゃって。案内してたら遅れて……。」

「そうだったのね。とりあえず席に座って。まだホームルーム中だから。」

 

 先生にそう促されると、二人は自分の席に座り込んだ。

 よほどの距離を走ってきたのか、まだ息を整えるのに苦労してるみたい。

 

「それでは連絡事項の確認です。もうすぐ二回目の定期テストがあるから、みんな気を抜かないようにね。それでは、ホームルームは以上です。それぞれ休み時間に入っていいわよ。」

 

 先生の号令を合図に、クラスのみんながそれぞれ動き始める。

 それに合わせて、私と櫂人くんも二人の机に集まった。

 

「その様子だと相当な距離走ったみたいだね。」

「まぁな。聞いてくれよ。あそこの十字路から駅までだぜ?学校と真反対まで案内したぞ。」

「ひえ〜。そりゃ大変そ〜。」

「他人事みたいに言わないでよ。ひまっちは冷たいな〜。」

 

 男の子の方は東堂薫くん。櫂人くんの幼馴染で帰宅部エース。見た目はいわゆるチャラ男っぽいけど、結構友達思い。

 女の子の方は故里紅葉。私の幼馴染だ。一つに緩く結った長めの赤髪がトレードマーク。

 この二人は高校に入ってから数ヶ月で付き合い始めた学園公認カップル。元々ネッ友だったのが、偶然高校が同じだったんだって。

 

「相変わらず仲良いね!二人とも!」

「まぁな。良くなかったら一緒に登校なんかしねーよ。」

「それはそう。ってか、お婆さんに話しかけられたのうちなんだから、薫は先に行っててもよかったんだけど?」

「それで別れた後なんかあったら嫌だろ。それだったらいっそのことついて行った方が安心できるし。」

「相変わらずお熱いねぇ……おじさん参っちゃうよ。」

「同い年だろうが。」

 

 こんな感じで、高校ではいつも四人で過ごしてる。

 こういうのも青春って感じで感慨深いよねぇ……。

 

「あ、まーたひまっちが自分の世界入ってる。」

「げ、バレた。あ、そうそう!今日の放課後、カフェ行かない?新作のパンケーキ出たんだって!」

「あー俺らはパスで頼むわ。」

「今日は薫の家で映画見ることになってるんだー。」

「ジャンルは?」

「ホラー。」

「また夜中泣いて電話かけてくんなよ?」

「今度のはギャグホラーだからヨユーだし!」

「ってことでわりーな。また今度行こうぜ。」

「そっかぁ。櫂人くんは?」

「僕は部活。」

 

 櫂人くんはこの中で唯一の部活組。だから予定が合わないことも多かったりする。

 

「んー。じゃあ今日は私もやめとこうかな!代わりにさ、櫂人くんの部活終わるまで待ってていい?」

「え?僕普通に最終下校くらいまでいると思うけど……。」

「ダイジョブダイジョブ!図書室とかで時間潰しとくから。」

「まぁ、向日葵さんがそれで良いなら……。」

「決まり!」

 

 やった!これで今日は櫂人くんと一緒に帰れる!

 私はその楽しみを糧に、今日一日の授業を頑張ることにした。

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