公式企画に参加してみた⑥ 特別公式企画「小説家になろう Thanks 20th」
異世界を出禁になりました 〜 何なのアイツ! が合言葉。名もなきミラクルチート持ちの誕生の物語 〜
────異世界を出禁になりました。
スーパーチート能力を得て現実世界では出来ないハーレム三昧、豪遊三昧をする予定だったはずなのに、女神様に拒否られ異世界を出禁になりました。
「チートな能力を得た時点で既に最高なのじゃ。それなのにスーパーをつける意味がわからん」
事実を述べただけなのに、何言ってんのかわからないが……のじゃ女神様は俺を呼び出したのに、わざわざ逆召喚して元の世界に送り返しやがった。
もうね、世の中ただのチートなんかじゃ満たされないんだよ。チートな時点で最高な能力なのだって意味には勿論同意するよ。間違いじゃないよ。
────だけどね女神様、ヒャッハー俺つえぇェェェしたいのに、ダメ人間装ったり、モフモフしたり、パフパフしたりしないとどんな世界であろうとも市民権を得られないわけですよ。
「……いや待て。なんで送り返したはずなのにお前がここにおるのじゃ」
驚きで目を丸くする女神様。たったいま二度目の召喚で俺の事を呼んだよね。自分で呼んでおいて忘れているとか、瞬間記憶障害なのか、見た目よりお年を召しているのだろうか。
そのわりには薄い着物かバスローブかわからない衣服からは、若々しくすべすべの肌と、事案になりそうな薄い双丘が挑発してくる。スーパーチートな俺は記憶障害にならないはずだ。しっかり目に焼き付け記憶の引き出しにしまうとしよう。
「不埒ものめ!」
ヤバい、女神様がキレた。タンスにしまった思い出をどごぞの勇者達のように荒らさないでほしい。それと怒るより、まずは話しを聞いてからにしてほしい。
「いったいお前はなんなのじゃ」
神罰覿面────な雷撃の全てを、スーパーチート能力で交わし切った俺と、ゼェゼェと息を切らす女神様。どうやら二度に渡る召喚で神聖なる力をだいぶ消耗したようだ。
「この悪魔め、二度とこの世界へ来るでないわ!」
ブチキレた女神様は、神らしからぬ暴言と共に俺を送り返した。
なんだろう、この気持ち。二度も呼んでおいて話しにならないのは、女神様の沸点が低すぎるのが原因だよな。いきなり神撃の雷とかぶっ放すし。
これはアレか、縞々な雷娘の嫉妬よろしく俺に惚れたか。さすがスーパーチート。女神様をも籠絡するとは。
「本当になんなのじゃお前は。三度目の召喚じゃから、慎重に細かに丁寧に条件を絞ったはずなのに……」
────三度目の召喚で目の前にあらわれた俺を見て、女神様が遠い目をして現実逃避をしようとした。ここは異世界なのだから、そんな目をしなくとも現実から目は逸れているがな。
「キィィッムカつくぅ〜!」
おっと何故か女神様がぶっ壊れた。俺をボコボコにすべく近寄って来る。ただ神力が足りずスーパーチートな俺の胸をポコポコ叩く。
……なんて可愛らしい姿なのだ。キュン死は与えられたチート能力にはまだ対応設定されていない。萌死を堪えた俺は息を切れぎれに仰向けに倒れる女神様の尊い御姿に、不意打ちを喰らって膝を付く。
「ハァハァ……本当になんなのだ、お前は。拒否っても拒否ってもやって来やがって」
やさぐれて口の悪くなった女神様。それはそれでグッドでグッとなるゴッドと言えよう。
俺はスーパーチートな能力を得るまではただの追っかけだった。勇気を出して推しに告白しようと思っただけなのに、ストーカー呼ばわりされ通報された。そして不幸で不本意な死に方をした、可哀相な人間なのだ。
「いや……普通に気持ち悪いし。可哀相な死に方したのは身の丈に合わない金額を推しに注ぎ込んだからじゃろう?」
やけに現実的に痛い所を突いて来るな、この異世界の女神様。スーパーチート能力を無効化するとか、キュン死を狙うとか、神様の力を前にすると能力は役に立たないわけか。
────あの世に旅立つはずだった俺は、現実世界の神様に願ったのだ。スーパーチート能力を得て、追っかけるより追っかけられるような存在になりたいと。
「君……面倒臭いし図々しいから異世界でどうゾ」
そう言って現実世界の神様は、俺を召喚者の来訪を願う異世界の女神様への生贄にしたのだ。そう……チート能力は既にその時にもらっていたのだ。チートなのに条件付きなのだが。
「君は面倒臭そうだから、二度とこちらの世界に戻って来ないでね」
二度も面倒臭いと念押しをする神様。そんな神にあるまじき発言で、現実世界の神様は俺を出禁にしたのだ。まあ異世界の女神様を見る限り、現実世界の神様のクーデレと言った所か。クールでドライに見えて俺に気があるんだろう。それに二度は駄目だが、三度目なら良いようだからな。
俺の話しを、ようやく落ち着いた状態で聞いた女神様が頭を抱えていた。まさか恋のライバルがすでにいたとは思わなかったのだろうか。だとしたら申し訳ない事をしたな。
だが目指せハーレム、女神様の一柱や二柱くらい俺は受けいれる度量くらいはあるぞ。
「やかましいわ! どうしてくれるのよ。異世界相互協定上、お前は私の召喚に応じた形。私に呼ばれたせいで、元の世界には戻れない」
またキレる女神様。どうやら返品します、よろしくね〜って送り返す事は出来るらしい。しかし元の世界の側が受け取る意思がないと、何度も手を変え条件を変え召喚した所で、優先的に呼び出されるのは俺になるようだ。指名されたようなものだ。
参ったな。追われるようになりたいと思ったが、早くも二つの世界から特別扱いを受けてしまった。
「違うわよ。お前はただ以前の世界を出禁にされただけ。追放だよっ!」
女神様が目茶苦茶興奮していて、エロエモい。服装の乱れは心の乱れって本当だ。
俺に取って元の世界はすでに異世界になってしまったようだ。追放っていうがチート能力は授かっているので、実際はお小遣いたっぷり持たせて旅に出すようなものだと思うが。
元現実世界の神様は面と向かって告白する勇気がないからって、回りくどい事をしたもんだよ。俺よりも、自分の方が面倒臭い神様じゃないか。殻を破って私に会いに来てほしい、そういうことだろう。
「決して違う! だいたいそのチート能力も、現実世界を追い出されても存在を失わないだけチープな能力のはずじゃ」
何を言っているんだろう、この女神様は。元の世界の神様に嫉妬したのかな。たとえ女神様の言う通りだとしても、三度の召喚で俺はすでにスーパーチートからミラクルチートな能力を得ている。
「なんてやつじゃ。妄想の力が強すぎて、最悪な事に魔法との相性が最高になってしまっている」
私にも手に負えない……そう言って女神様は泣き出した。マジか、泣かせるのは俺の本意ではない。だが安心しろ、大丈夫だ、相性が最高とか告白されて放っておくわけないじゃないか。
「違う、その自分勝手な妄想を止めよこの────変人め!」
力を失った状態の女神様がどんなに吠えようと、可愛いものだ。気を引くためにそこまで頑張らくても俺はチョロいんだぞ。
だが、三顧の礼の例えもある。有難みの演出は大事だ。軍師ではないけれども、ミラクルチート能力な俺に側にいてほしいのが本音だろう。
立場ある女神様だから、もともとは下々の民に告白するのは勇気がいる。その勇気ある召喚告白を受けた俺は、女神様もハーレムに加えると約束する。
「ぐっ……おのれ、覚えておれ! 力が回復した暁には絶対にお前をこの世界から出禁にしてやるから!!」
女神様の強烈な告白。そこまで愛されると、流石に俺も照れる。元のクーデレ神様もこの異世界の女神様も、自分の世界を出入り禁止して俺について行きたいようだ。
女神様は口をパクパクさせて、泡を吹いて倒れてしまった。激昂し過ぎて、目を回したのだろう。そんなに激しい気持ちを無理に抑えつけなければならないとは、神様も大変だなと俺は薄い着物を整え、薄い双丘も見なかった事にする。
旅立つ為に身なりを整えるのと、戸締まりは大事だからな。あと火の元のチェックも忘れないようにしよう。恋の炎が燃え上がっても知らないぞ。
女神様にこの世界への出入りを禁止された俺は、新たな世界からの呼び声に応えることになるだろう。
俺のハーレムに加わりたいのなら、遠慮なくいつでも呼んでくれ、異世界の女神様達よ────。
お読みいただきありがとうございました。「小説家になろう」20周年を記念した特別公式企画「小説家になろう Thanks 20th」の四作品目の作品です。
ハーレムとは一人の男の人に対して、複数の女性が好意を向ける状態だとおもます。
では逆ハーレムとは?
一人の男の人の位置が女の人になり、複数の男性に好意を向けられるになるのでしょうか。
男女が入れ替わっただけで、ハーレムはハーレムだと思うのです。
だから逆とつけるのなら好意ではなくて、嫌悪や悪意や害意ではないかと思ったのです。
この名もなき主人公はハーレム大好き勘違い野郎でもありますが、些細な事など、気にしない大器の持ち主かもしれません。
たとえ逆ハーレム状態でも、気持ちを向けられた時点で、彼ならば全てを受け入れてしまうのかも。
勇気を出したのは女神様だったようです。