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有効な書類
黄ばんだその紙が、風もない部屋の中で、ふわりとなびいて宙に浮く。
「親父がじいさんと仲が悪い?当然だろ。いいか?あの、くそったれディル・シンプソンがおまえに何をしたのか、よく見るんだ」
低い声が、ネイブの顔のまん前に流れてきた紙のことを指しているとわかるが、見たくなかった。
見たくは無いのに、目はしっかりと紙面をながめる。
ホーリーの楽しそうな声が響く。
「さあ、どうだ?まず、おれのことが書かれてる。―― どんな欄にだ?」
はじめに見たときにはなかったその文字が、目の前に浮かぶ紙に、じわり、と、にじむように浮き上がってきた。
「どんな、って・・・あ、」
『主人』という欄が、ホーリーの名前の前につくられた。
「 いちおう役所に勤めてるんだからわかってるだろうが、その契約書には『ジャック』の紋章が刷られてる。公に認められてる書類だ。 いいか?それは、《キラ種族》であるおれと、《ノーム種族》であるディルとの、『公式な取り引き契約書』だ。 住所も合ってる。おれの名前も確認したから、だいじょうぶだ。 その書類は、このグレーランドにおいて、しっかりと効力を発揮する!さあ、――― お待ちかねの契約条件だ!」




