グレーランドのうわさ
ここはグレーランド。
この世界を構成するオヴァーランドとビロオランドの間に位置する場所だ。
オヴァーランドっていうのは、このグレーランドにいる間に『いいこと』をすればいける、上のほうの国。
ビロオランドっていうのは、『よくないこと』をしたときに放り込まれる下にある国。
もちろん、どっちがいいかって聞かれれば『上』がいい。
なにしろ、『上』にいけば、仕事をしなくともおもしろおかしく暮らせるという噂がある。
『まーだそんな噂を信じてるのですか?』
最後の一軒をめざし、まきあがる雨と風の中、オヴァーランドには晴れの日以外はないらしいぜ、と言ったのへ、ランプの中からばかにした声が返った。
「 だって、噂っていったって、みんなが昔っから言ってるし、そういうの、なんつうんだっけ?都市伝説?火のないところになんとか、とも言うし、おれは本当だと思うけどなあ」
『・・・・いろいろ、言いたいですけど・・・ひとつだけにします。いいですか?ネイブ。上にしろ下にしろ、そこから戻ってきた人はいないんですから、やはりあくまでも、噂なのですよ。 そういうものをやすやすと、』
「わあ!風がひどいなあ~」
説教臭いコーニーの声を断ち切るようにわざとランプを大きくゆらし、ネイブは地図で確認した道をめざし走った。