矢が落ちてたから・・・
マントをかすめて地面にすごい威力で突き刺さったのは、鋼鉄製の槍です。
一気に青くなったノーム種族の男が動く前に、背後に立った黒ずくめの大きな男が、そのマントの後ろ首をつかみあげました。
無言のまま片手にディルをぶらさげ、刺さった槍を取りにいく間、ツボは静かになりました。
黒い兜に胸当て。下に身につけた裾の長い黒い服。
どう見ても、ディーク種族でした。
しかも、兜をかぶってということは、まだ、戦いの最中だったのかもしれません。
目玉は金色にかがやき、気がたかぶっているのは、一目瞭然でした。
ディルが情けない声で、ひたすら謝り続けます。
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませ」
「―― ほお。悪いとわかっててやったのか?」
ディークが低い声で手にぶらさげた男に聞きました。
「いえいえいえいえいえいえ!偶然です!ぐうぜん!そうです!ぐうぜんなんです!」
「『偶然』で、―― わたしの眼に、矢を当てようと?」
「いや、だから!たまたま、あなたたちの戦を間近で見て、こう、おれも、興奮しちゃったっていうか、もしかしたら、当たるかな~なんて、たまたま、弓矢が落ちてたから・・・」
相手の顔に、すごみのある笑いが浮かぶのに気付いたのでしょう。
ようやく、自分が陥っている状況を飲みこめたディルが、本気で暴れ出しました。
『 おい、そこのディーク 』
今まで気配すら消していたツボから、声があがります。
呼ばれた男は少し驚き、そのツボを認めました。
「 なんだ?・・・もしかして、『呼び出しの壷』に、誰かとじこめられてるのか?」
『 うるせえ。いいか?そのノーム種族の男は、これからこのおれをここから出さなきゃならねえんだ。―― 置いていけ 』
姿も現せないツボの中からの命令に、ディークの男は口はしをあげ、ディルを見ました。
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