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ネイブの言いぶん
「 だって!一人で500軒だぜ? おまえはランプの中で楽だろうがなあ、おれは、重たい督促状を500人分持ち歩きながら、地図片手に一日中、この広いグレーランドを歩き回ってんだぜ? やる気なんて持ち合わせられるかよ。 そのうえ、さがしもとめる相手はほとんど逃げた後。 たとえ、いたとしても、強面の男とか、無視をきめこむ女とかで、渡した督促状なんて目の前で破られて投げ捨てられるだけ・・・。 ひどいときには、こっちが殴られたりするんだぞ!」
『ベッドに引き込まれたときもありましたよねえ?』
「・・・あれは、まあ。ああいう得をすることも、たまにあるってだけで、税金を払ってもらえないことに、かわりはない」
帽子を被りなおし、書類をきれいに束ねなおすとコートの中に抱えなおして外に出る。
『―― あの女の滞納分、きみが払ったんですか?』
「さあ、コーニー、最後の一軒だ!気合入れていくぞお!」
ごまかすように『しゃべる』ランプを掲げ、ネイブ・シンプソンは嵐の中を突き進んだ。