35/56
ずれる蓋
「手をかける?・・・この中身に?わたしが?」
「だって、そういうことでしょう? この地下室に、そのホーリーなんとかっていう人がいる。そんで、着いた先にはこの通り、黒い棺が。って、またあけようとして!」
「いや、わたしは、」
「死者が眠るのを邪魔しちゃいけないって知らないのか? ちゃんとしっかり蓋をしないと、起きるかもしれないんだぞ!あんたがやっちゃったその人を、この中に・・・また開けた・・もお、いい加減にしろよ?」
さっき、きれいに閉じた蓋が、またしても動いている。
「ネイブ。わたしは、触っていないだろ?」
「・・・さわって・・?」
言われてみれば、自分がしゃべっている間、男は両手を中途半端にあげたまま、動きもしなかった。
「・・・・・」ずれた蓋を、ゆっくりとじる。
数秒で、それが、ずずず、と勝手に動いた。
「あ、・・あ、あ、」
「だから、わたしではない。ようやく、起きたんだろう」
ずずずずず ずず
段々とずれてゆく蓋に、ネイブのじいさんの言葉がよみがえる。
『 棺の蓋はきっちり蓋をして、絶対に動かすな。 守らんと、中身が、起きる 』




