明日は誕生日
「う、・・それは、遠慮したいけど・・。 まあ、とにかく今年度の《督促状況確認作業》も、残すところあと一軒だ。 この仕事が『お前の最後の仕事になるかもしれない』なんて脅されたから、こんな嵐の中でもまじめに働いちゃってるけどさ、明日はおれの誕生日だぜ? まったく、ひどい上司だよ!ちゃんとできなきゃクビにでもするっていうのか? ―― さあ、早く終えて、雨に濡れてこんなに重くなった書類を、あいつに叩き返して、さっさと帰るぞ!」
埃の積もったテーブルに分厚い書類の束を置く。
白く舞った埃の中で、渡しそびれた督促状に、『住人不在』と書き込み、一番下へとしまいこむ。
「やった!!ついに! つ・い・に! あと一枚だあ!!」
変わって一番上になった督促状をつかんで掲げあげ喜ぶのへ、冷めた声が指摘した。
『―― こんなに時間がかかったのって、ネイブ、君が今日までだらだらとやる気もなくこなしてきたせいじゃないですか?』
この仕事を命じられたのは、ふた月以上前のこと。
だが、男の性格を読んだ上司に、『おまえの誕生日には終わるだろ』なんて言って渡されたのだ。
当たってしまっただけに、八つ当たり気味に腹をたてている。