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食うなよ
ぺちぺちと頬を叩く音。
いや、叩かれてるのは自分だ、とぼんやりした中で自覚したら、今度は唇に冷たい感触。
キス、されてるなと、思いながら、入ってきた舌をそのまま出迎える。
―― ああ、ひさしぶり
ちょっと冷たくて細い舌だけど、ごぶさただったこういうキスは、気持ちいい。
「―― 食うなよ」
「っっ!?」
突然の男の低い声に、一気に覚醒。
押しのけた体がネイブを罵り、次にアルルに文句をつけた。
「食おうなんて思ってないわよ。こんな若いのなんか」
ソファに起き上がったネイブを見下ろし、さきほどまで『味見』をしていた女は、長くうねった黒髪を手で払い笑う。
身体の線を強調する黒いドレスが、肌の白さを際立たせている。
「あ、あの、お、おれネイブです!あなたは?」
からかいを含んだ笑みをのせる女の顔は、ネイブの好みで、そのぽってりした艶のある唇とキスしていたのかと思うと、アルルと女の会話なんか耳に入らない。




