あれって城?
「とにかく、まあ、わたしのうちまで来なさい。この嵐の中で立ち話は楽しくない」
相手の帽子も上着も、雨を吸い始めている。
先を歩き出す大きな背中をあわてて追い、ネイブはとりあえず礼を言った。
「その、色々、ありがとう。おれ、ノーム種族のネイブ・シンプソンです。納税局の役人で、税金未納者をたずねてまわってるんです」
「わたしはみての通り、ディーク種族のアルル・ラムジイだ。しかし、それでここまで? おかしいね。ヌウクゾーンの者は、税金ではなく、税穀で納めてるはずだろ?」
「そうなんです。だからきっと、書類のミスなんです。 まったく。帰ったら上司に文句言ってやりますよ」
ネイブの怒ったそぶりに微笑んだ相手が、風で動いた帽子をなおし、そのまま指をのばして嵐のむこうを指す。
「あれが、見えるかな? 少し歩くけれど、あの小高い場所にあるのが、わたしの暮らしている場所だよ」
かなり向こうのほうに、オレンジ色の光がいくつか見える。
ずいぶんと高い位置にある家なんだなと思ったとき、次の瞬間はしった稲妻でその建物がみえた。
―― ・・・でけえ・・・
まるで、ミドロイトの王様、ジャックが住んでいるような大きさの建物だった。
「・・・ラムジイさんって、ここの王様?」
「まさか。―― それに、デューク種族はもう、王がまとめるほどの数もいない」
そうなんだ、と返した声は、強い風に消されてしまった。




