本家。
リアルの都合により更新にだいぶ間が空いてしまいすみません。
できるだけ間が空かないように更新したいのですが、基本不定期更新となると思います。
ご理解をお願い致します。
大きな木製の門が音をたてて自動的に開く。
黒塗りの車はそのまま門をくぐってすぐに停車した。
広い日本庭園を突っ切るように石畳の道が奥の屋敷まで続いている。
その道の両脇には黒服の厳つい男達が真っ直ぐ一列に並び立っている。
迅が車を下り、後部座席のドアを開ける。
上着で包まれた少女を抱えたまま十夜が下り立つと、黒服達は一斉に頭を下げる。
『お帰りなさいませ、若!』
声量に空気が小刻みに震えるのは迅と十夜には慣れたものだったが、今日の十夜は眉間に皺を寄せる。
十夜に抱えられた少女が一瞬身じろぎをすると十夜の顔がもっと険しくなった。
「うるせぇ。黙れ。」
決して大きくもない十夜の声がそれでも涼やかな夜の空気に響いた。
黒服達は瞬時に口を閉じる。
「車を頼む。」
「はい!」
黒服達の間、石畳の道の中央を堂々と歩き出した十夜の後を運転係に車を預けた迅が続く。
それだけで空気はどこか痛いくらいに張り詰めていた。
「オヤジは?」
玄関の最も近くにいた黒服から「奥の自室にいらっしゃいます。」と聞くと、十夜はさっさと靴を脱ぎ散らかして廊下を進む。
「若!」
迅が咎めるのも気に止めずすぐに角を曲がってその姿は見えなくなる。
結果、迅はため息をつきつつ十夜の靴を揃え、自分も靴を脱ぎ揃えてから十夜の後を追った。
・・・・・・・・・
屋敷の最も奥の部屋の障子を十夜は勢い良く足で開ける。
「オヤジ。」
「足で開けるな。行儀の悪い。」
部屋の奥、座布団にどっしりとあぐらをかいた白髪の男が呆れ顔で十夜を見る。
桐月会 頭 桐月 零斗。
もう還暦近いということも感じさせる風格を持つ男は、十夜の抱える上着を見ると
「…誘拐してきたんじゃないだろうな。」
と十夜の顔へ視線を移した。
「オヤジまでそれ言うのかよ。」
今度は十夜が呆れ顔になり、零斗の向かいに座布団を引き寄せあぐらをかく。
腕の中の少女をそっとあぐらに寝かせるようにおろした。
そして顔の部分だけ上着を捲る。
「こいつ、俺のだから。」
零斗は少女を一度見た後、十夜の目を真っ直ぐに見る。
目だけが合ったまま、部屋に沈黙がおちた。
「…必ず、守り通せよ。」
静かで、それでいては迫力を感じさせる零斗の言葉に十夜は車中同様不敵に笑って見せる。
「もちろん。」
十夜は少女を抱え直すと立ち上がる。
「じゃあな。」
もう用は終わったとばかりに十夜は部屋を出ていく。
一人になった部屋の中で零斗は面白そうに笑った。
「しばらく、騒がしくなりそうだな。」
それを証明するかのように廊下の方から迅の大声が聞こえてきた。
この度、初ブクマいただきました!
ありがとうございますm(_ _)m
嬉しいです!
まだ1ブクマですがこれからもっと増えますように!(感想も!)