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夜明け猫  作者: 刻月
2/3

車中で。

ホテルのエントランスに黒塗りの車が止まる。

運転席から下りてきたのは、灰色のスーツをピシリと着こなした眼鏡の男だった。

数人のホテルスタッフ意外は誰もいないロビーを黒いスーツを着た男が自分の上着を掛けた何かを抱えて歩いてくる。

黒いスーツの男の歩みに合わせてロビーの中にいるホテルスタッフが頭を下げる。

エントランスの自動ドアが開き、目の前で止まった黒いスーツの男に眼鏡の男は恭しく頭を下げた。

後部座席のドアを開け、黒いスーツの男が乗り込むのを確認すると、眼鏡の男は運転席に乗り込む。

「本家でいいんですか?若。」

「ああ。」

短い会話の後、車は静かに発進した。

・・・・・・

「それは?」

眼鏡の男は運転しながらミラー越しにチラリと自分の主君が抱えるものを目で示す。

「俺のもんだ。」

「誘拐してきたんじゃないでしょうね?」

抱えられてものの形でそれが人間だということはわかっている。

しかも大きさ的にまだ小さい。

そして、どうやらそれが主君にとって大切なものだということも、主君の態度を見ればわかる。

「こいつから来たんだ。」

「こいつからって…まさか例の暗殺者ですか?!」

眼鏡の男は驚きの声を上げる。

主君から「暗殺者が来た」と電話があり、慌てて迎えに来たのがこの男である。

「うるせぇ。こいつが起きんだろ。」

黒いスーツの男は後ろから運転席を蹴った。

「桐月会の若頭ともあろうお方が…。普段の冷静な判断はどうされたんです?」

この街の夜、ひいては裏を締める桐月会。

その若頭がこの黒いスーツの男

桐月 十夜。

「迅。」

十夜は眼鏡の男の名を呼ぶ。

桐月会若頭補佐

森継 迅

それが眼鏡の男の肩書きだった。

ミラー越しにジッと迅を見る十夜。

「………はぁ。」

先に折れたのは迅だった。

「頭への説明はご自分でやってくださいよ。」

「ああ。」

二人の会話がしばし途切れる。

「…仕方ねぇだろ。惚れちまったんだから。」

十夜は膝に乗せた少女を上着の上から優しく撫でた。

「若のそんなお優しい顔、初めて見ました…。」

ミラー越しにそれを見た迅は目を見張る。

沈黙の中、十夜は少女を撫で続ける。

「若。」

迅が真剣さを滲ませる声で十夜を呼んだ。

「その子が若に飛びかかったら容赦なく殺しますからね。」

「大丈夫だ。飼いならす。」

「どこからくるんですか、その自信は。」

不敵な笑みを浮かべる主君に迅は呆れ顔を見せる。

「俺が欲しいものを手に入れられなかったことがあったか?」

「そのせいで振り回されてばかりですが。」

迅の嫌味に十夜は鼻笑って返した。

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